足がむくんだり、足の表面の血管がボコボコとこぶ状に浮き出たりといった症状がある場合、下肢静脈瘤が疑われます。下肢静脈瘤自体はすぐに生死に直結する病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすこともあります。
本記事では、成田富里徳洲会病院の院長である荻野 秀光先生に、下肢静脈瘤の治療法についてお話を伺いました。
下肢静脈瘤の治療は、初期段階であれば弾性ストッキングを着用して、足の外部からの圧迫を加えることで逆流を防ぎます。これで症状が改善するケースが多くあります。
弾性ストッキングの着用で症状が改善しない場合、“硬化療法”といった血管に直接薬剤を投与して静脈瘤を潰す方法や、“下肢静脈瘤レーザー(ラジオ波)焼灼術”と呼ばれる外科的治療を検討します。
下肢静脈瘤の治療において弾性ストッキングを履くケースというのは、下記の2パターンになります。
基本的には、日中に医療用の弾性ストッキングを着用していただきます。人間は、寝ているとき以外は足が心臓よりも下にあるので、静脈には常に負荷がかかっていますから、その間は履いておくというのが理想です。しかし、この弾性ストッキングだけでは下肢静脈瘤は改善しません。履いている間はよいのですが、根本である逆流が改善されるわけではないため、対症療法になります。
弾性ストッキングは分厚く圧迫の強いものになるので、暑い時期は蒸れてしまいますし、圧迫するという性質上、決して履き心地がよいものではないために履き続けることが難しいという面があります。
また、高齢の患者さんだと、ストッキング自体が固いために、自身で履くことができず介助が必要になる、または着用を断念してしまうということもあります。
これらの懸念点を払拭するために、当院にはストッキングの専門家がいます。患者さんのどこに静脈瘤があるのかを把握し、その箇所に合わせてハイソックスタイプや太ももまであるタイプの弾性ストッキングがいいのかなどを判断します。圧迫の圧の段階も何段階かあるので、症状によって足に合ったストッキングを選びます。さらに履き方の指導をしますので、正しいストッキングの履き方を習得することができ、正確な圧迫療法を行うことができます。
下肢静脈瘤における硬化療法は、薬剤を血管の中に注入して血管を固めてしまう治療法になります。手術をするほどの大きな静脈瘤ではないものの、ボコボコと血管が浮き出ているなどの視覚的な症状が気になる場合に選択されることがあります。
薬剤によって静脈瘤のある血管は潰れますが、その血管に沿って色素沈着というシミが残るケースがあります。また、薬剤が血管の外に漏れると、そこで炎症を起こし、あとが残ってしまうケースもあります。ですから、視覚的な症状の改善に必ずしもつながらないため、当院では積極的には行っていません。
この治療法は、血管の内側にラジオ波という高周波が出る細い管を挿入します。その熱が血管を焼灼(焼き潰すこと)して、血管をなくしてしまうという手術になります。多少の内出血が起こる場合もありますが、低侵襲で体への負担は軽いので術後は歩行が可能ですし、当院では基本的に日帰り手術になります。
超音波検査で血管の逆流や程度と場所がどういう状態かという点を把握し、手術が有効な治療になると判断すれば手術をすすめています。大伏在静脈の逆流が顕著である場合、当院ではレーザー(ラジオ波)焼灼術が第一選択になります。
ほかにもストリッピング術、高位結紮術という術式も存在しますが、そもそも下肢静脈瘤の手術の目的は静脈瘤の原因になっている血管の逆流をなくすこと、止めることになります。その手段が何であるかというのが術式の違いになっています。
ストリッピング術は、逆流している大伏在静脈
あるいは小伏在静脈といった血管を引き抜いてしまい、逆流を止めます。ただし、このストリッピング術は比較的傷も多くなりますし、患者さんへの侵襲、負担も多い治療になります。
高位結紮術については、逆流している大元を糸で縛ってしまうという方法です。ただし、高位結紮術に関しては大元を縛っても脇道の枝のような血管から逆流が起きることがあるので、高位結紮術が単独で行われることはあまりありません。
これらに追加して、瘤切除といってボコボコとしたこぶの部分を取る方法があり、患者さんの症状や程度によって組み合わせて行うことになります。下肢静脈瘤レーザー(ラジオ波)焼灼術も、瘤切除と組み合わせて行うこともあります。
静脈というのは非常に複雑な走行をしていますので、下肢静脈瘤が発生した血管を治療したとしても、一定期間が経過した後にそれ以外の血管に下肢静脈瘤が再発する可能性はあります。また、下肢静脈瘤が職業や生活習慣の影響を多分に受けるという点においても、再発のしやすさが挙げられます。
逆流の可能性がある場所を大きな傷で時間をかけて根こそぎ治療して再発を極力避ける治療方針もありますが、当院ではレーザー(ラジオ波)焼灼術を第一選択として1回の治療はなるべく負担を軽く、小さな傷になるように配慮して短時間で行い、もし再発したらそのときに追加治療をするというスタンスをとっています。
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成田富里徳洲会病院 院長
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