2017年7月13日(木)~15日(土)に、福岡マリンメッセおよび福岡国際会議場にて、第25回日本乳癌学会学術総会が開催されます。九州全域及び沖縄県が一体となって学術総会を盛り上げていきたいという思いから、福岡での開催としました。4,000人規模のメイン会場となる福岡マリンメッセ、サブ会場である国際会議場で、それぞれシンポジウムやポスター発表、講演などが実施され、乳癌に関する様々な意見交換や情報共有がなされる予定です。
今回、大会長を務められる熊本大学乳腺外科教授の岩瀬弘敬先生は、参加者全員がくまなく情報を取得できるよう、スマートフォンを活用した画期的なシステムの構築に向けて、これまで準備を進めてこられました。また、10月29日には患者さんや一般者を対象にした市民公開講座を開く予定です。岩瀬弘敬先生に、今回の学術総会および市民公開講座の概要と特色、そして参加の際のポイントについてお話しいただきました。
第25回日本乳癌学会学術総会のサブタイトルである「新たなる一歩 -ライフサイエンス研究の進歩-」には、乳癌という疾患をより広い観点からとらえ、治療や研究を進めていきたいという思いが込められています。
ライフサイエンスの定義は、「生命現象を解明するために、従来の生物学、医学、化学、物理学などの枠をとりはらい、生命をあらゆる角度から総合的にとらえていこうとする学問分野で、癌(がん)・脳・老化・発生・遺伝・免疫・環境科学・情報科学などが関連研究として考えられる。」とされています。(第25回乳癌学会学術総会 会長挨拶より)
乳がんを正しく診断し、一人ひとりの患者さんに最適な治療へとつなげていくためには、従来行われてきた形態学的・病理組織学的な観点のみならず、分子生物学、発生学、免疫学などを基盤とした生物学的な観点から診断をつけることが重要です。また、画像診断では放射線医学の要素が必要になりますが、これについても物理学的な要素のみならず、生物学的な概念を持つことが求められます。
さらに乳がんの治療では、これまで用いられていた手術療法、化学療法、内分泌療法、分子標的療法という分類で行われるのみならず、腫瘍学や内分泌学、腫瘍免疫学などの様々な分野が複雑に絡み合った集学的治療が欠かせません。
このように、乳がんの診断や治療は、まさに日々ライフサイエンス研究へと進歩しているのです。
本学会では、乳がんの診療における新たな一歩を、乳がん診療のスペシャリストである方々にご発表いただきます。参加者の皆様もぜひ、その目で乳がんの領域における進歩をご覧ください。
福岡マリンメッセは約4,000名が平面で着席できる規模を有しており、学会のメイン会場として使用するに十分な広さで、我々は参加者全員に乳がんに関する最新の情報を共有できるよう、プログラムや設備に様々な工夫を施しています。
たとえば、皆で情報を共有するという目的を第一に考え、福岡マリンメッセのメイン会場ではシンポジウムやポスター展示を主に行うことにしています。サブ会場となる国際会議場では、サブ会場としてのシンポジウムや厳選口演などが行われ、さらに、ランチョンセミナーやイブニングセミナーなどが行われます。しかしながらセミナーのたびにメイン会場にいる4,000名が少し離れた国際会議場に一斉に移動すると、大きな混乱をきたすことが予想されます。
そこで、国際会議場で開かれるセミナーがメイン会場にいる参加者にも常に届くよう、マリンメッセに9面の大スクリーンを用意します。そして、国際会議場で発表されたセミナーのスライドを各スクリーンに投影し、音声はWi-Fiを経由して、イヤホンを通じて各参加者の耳に入るようにしました。アプリケーションをダウンロードすることで、メイン会場でのシンポジウムのスライドや音声が会場のどこにいても端末上ではっきりとご覧いただけるようになります。
参加者の方々は、学会場のどこにいてもシンポジウムの内容を自身のお手元で聴講することができるのです。
今回の学術総会のもうひとつの特徴は、端末にダウンロードしたアプリケーションを利用して投票(ボーティング)が行える点です。今回のプログラムには「ER陽性HER2陰性乳癌の治療法」として、ケーススタディを用いたパネルディスカッションが行われます。この際、複数の選択肢の中からボーティングを行い、自身が選んだ選択肢が、パネリストや会場の参加者のなかでどのように位置するのか確かめていただくことも、興味深いことかと思っています。
これまで述べてきたように、確実に講演をお聞きいただくために、本学会へのご参加をご検討くださっている方には、スマートフォン(またはタブレット)とイヤホンの持参をお願いしています。
会場でもレシーバーを用意しますが、数に限りがあり対応できない恐れがあります。できる限り皆さんお持ちいただき、しっかりと当日の講演をご自身の目や耳でとらえていただきたいと考えています。ぜひご協力をお願いします。
厳選された演題は前項でご説明したような仕組みのもとで全会場に共有される一方、それ以外の演題については、ポスター発表が中心となります。ポスター発表の場合は研究データが一日中閲覧できる状態になっているため、データ発表が一瞬で終わってしまう口頭での発表に比べて、長く多くの方に情報を発信できるという利点があります。参加者の方々の情報発信は主にこのポスター発表となります。
イブニングセミナー(第1日目・第2日目の17:10~18:10開催予定)の後には、ポスター会場(福岡マリンメッセ)にて討議の時間を設けており、そこでワインとチーズ、九州地方(特に熊本、博多)の名物料理を楽しみながら、約90分間のディスカッションをしていただくことができます。
口演でのシンポジウムよりも、ポスター発表のほうがより深く議論を交わすことができるのではないかと推察しています。
私は、学術総会においては、参加者が一堂に会することのできる会場で、情報を共有することが必要であると考えています。しかしながら、日程やプログラムの関係からひとつの会場だけでは開催が困難です。そこで、会場のどこにいても、別の会場で行われているセミナーや講演が聞けるように、情報を共有するシステムを作ろうとしました。演題数約2,100、総参加者6,000人の規模が予測される本総会においては、メイン会場・サブ会場双方の内容を楽しめる画期的なイベントになると思っています。
2017年6月中旬の現在、約3,000人の事前登録があり、7割が医師・2割5分が看護師・その他の医療従事者や一般の方の登録もみられます。
また、第25回日本乳癌学会学術総会が行われる2017年7月13日~15日にかけては、丁度、博多祇園山笠が開催される時期と重なります。14日の夜から朝にかけては、「追い山」というクライマックスを飾る演題が開かれますから、素晴らしい光景がみられるでしょう。学会にいらっしゃる際には、この山笠も楽しみにして来ていただきたいと考えます。
さて、第25回日本乳癌学会学術総会に伴い、2017年10月29日には第25回日本乳癌学会記念市民公開講座が、熊本県内にて開かれます。元来、市民公開講座は学術総会の直前に行われることが多いのですが、7月は気温が高く患者さんや参加者の方々にとって負担が大きくなると判断し、秋季開催を決定しました。
市民公開講座の前には、”Breast cancer Festival in Kumamoto”として2部構成のイベントが開催されます。
第1部は午前9:30より熊本北警察所横の白川公園でスタートする予定です。芝生の生い茂る公園内を歩き、設置されているブースのクイズに答える形で乳がんについて学んでいきます。クイズに正解すると、熊本県オリジナルデザインの「くまモンピンクリボン」のピンクバッヂがプレゼントされます。
また、公園に屋外ステージを設け、フラダンス、ドクターズバンドなどのショーを開催して、参加者全員が一体となりコミュニケーションを深めていきます。
12:00からは一般の方を交え、ホテル日航熊本に移動して、乳がん経験者の方を交えた座談会を開催します。家族・友人などの人間関係やお金、仕事のことなどをお話しいただき、乳がんについて意見交換を行います。フェスティバルの最後には、乳がん経験者の方々全員による合唱に参加していただこうと考えています。
14:00からは本格的に市民公開講座が開かれ、同会場にて熊本大学医学部附属病院の医師や医療従事者による講演が行われます。私自身も司会を務める予定です。
「正しく知ろう 乳がんのこと」と題した本講演においては、最新の乳がんの診断や治療に関する情報、抗がん剤は怖くないこと、正しい治療を選択することの重要性などを一般の方々に向けて発信し、市民からの質問にもお答えします。こうした講座により、市民の方々の乳がんへの理解を深めることが目的です。
主催の私たち自身も、本講座を楽しみながら行いたいと考えています。様々なイベントやお楽しみをご用意してお待ちしていますので、乳がん患者の方、そしてそのご家族の方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
※市民公開講座は予約制です。参加希望者は、熊本大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科医局(096-373-5521)または日本コンベンションサービス株式会社にお問い合わせください。
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