概要
乳房は乳汁を分泌する乳腺と、その周りを覆う脂肪組織などで成り立っており、胸の筋肉(大胸筋)によって支えられています。乳腺は小葉という組織に枝分かれし、ここで乳汁がつくられます。つくられた乳汁は乳管を通って乳頭へ運ばれます。
乳管内乳頭腫とは、乳汁の通り道である乳管に発生する乳頭状の良性腫瘍です。
乳管内乳頭腫は30~50歳代の方に多く発症するといわれており、乳頭近くにできた乳管内乳頭腫の場合は乳頭分泌を自覚します。孤立性(1つ)あるいは多発性(複数個)に発生することがあり、孤立性の場合は、通常乳頭近くにできるために、乳頭からの分泌物に伴って見つかることがあります。分泌物は通常の乳汁とは異なり、黄色や茶褐色、血液のような色をしていることが特徴です。また、その量は下着に付く程度の量である場合もあれば、乳汁のように大量に分泌する場合もあります。乳管内乳頭腫が腫瘤(こぶのように固まったもの)として触ることができるものもあります。腫瘤は2~3mmほどの大きさが一般的ですが、中には2~3cmほどの大きさになるものもあります。さらに、分泌物が乳管内に貯留すると腫瘤が大きくなったように感じることもあります。
症状
乳頭近くでできた乳管内乳頭腫の場合は、乳頭から黄色や茶褐色、血液のような色の分泌物がみられます。分泌物は少量の場合もあれば乳汁のように大量の場合もあります。外から触ると腫瘤のように感じられることもあります。また、超音波検査の普及により、たまたま発見されることが増えてきています。
検査・診断
乳管内乳頭腫は非浸潤性乳管がんと呼ばれる悪性腫瘍と病態が似ているため、正確に診断をつけることが重要です。
乳頭から分泌物がある場合、まずは問診が行われます。その分泌物が片側、あるいは両側にみられるのかどうかや、一つの乳管からでているか、複数の乳管からでているかどうか、分泌物がどのくらいの期間出ているか、どんな色かなどを確認します。
また、プロラクチン(乳汁産生作用のあるホルモン)の濃度を上昇させる病気にかかったことがあるか、甲状腺の病気にかかっていないか、どのような薬を服用していたかなどについて確認することもあります。
乳腺に関連する病気を診断する方法として超音波検査や乳房X線検査などがありますが、これらの検査から乳管内乳頭腫であると確定診断をつけることはできません。画像上腫瘤を形成する場合は、細胞を採取する検査(細胞診)を施行します。分泌物を採取してがん細胞がないかなどを顕微鏡で詳しく調べる細胞診を行うこともありますが、確実な診断をつけられないこともあります。
診断が難しい場合には、MRI検査や乳管造影検査を行います。非浸潤性乳管癌を疑う場合は、腫瘤を切除してがん細胞の有無を調べる病理検査が必要になることもあります。
治療
乳管内乳頭腫と診断された場合、原則として経過観察が行われます。ただし、悪性の非浸潤性乳管がんとの鑑別(区別すること)が難しいことや、将来的に乳がんを発症するリスクがあることから、定期的な乳がん検診を受ける必要があります。
乳管内乳頭腫と診断されたからといって、予防的な乳房切除は必要ありません。
ただし、乳管内乳頭腫と診断されても乳頭からの分泌が継続し、日常生活に支障をきたしている場合は、乳管腺葉区域切除という方法で、腫瘤を摘出する場合があります。
予防
乳管内乳頭腫を予防できる確実な方法はありません。しかし、非浸潤性乳管がんの可能性や将来的に乳がんを発症するリスクがあるため、定期的な受診が必要となります。
乳頭から分泌物がある、腫瘤を触知するなどの症状がある場合には早めに医師に相談しましょう。
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