概要
乳腺線維腺腫とは、10歳代後半〜20歳代の女性に見られる乳房のしこりのことを指します。乳がんとは異なり、良性のしこりです。
乳房は、母乳を産生する乳腺、母乳を乳首へと運ぶ乳管や、周囲の線維や脂肪などによって構成されており、乳腺線維腺腫は乳腺から発生します。
乳腺線維腺腫と一言にいっても、しこりの生じかたはさまざまであり、いくつものタイプに分類されています。
原因
乳腺線維腺腫は、女性ホルモンと関連して発症することが指摘されています。そのため、女性ホルモンの分泌が盛んな思春期以降の女性にみられることが多いです。
また、妊娠期間中にも女性ホルモンの分泌が多くなるため、乳腺線維腺腫のしこりが大きくなる傾向にあります。逆に閉経後にはホルモンの分泌が少なくなるため、これに呼応する形でしこりが小さくなる傾向があります。
症状
乳腺線維腺腫では、乳房に存在するしこりとして認識されます。同じく乳房にしこりとして出現する乳がんは悪性腫瘍ですが、乳腺線維腺腫は良性のものです。
乳腺線維腺腫のしこりは乳がんのしこりと比べると柔らかく、弾力性を伴うことが多いです。しこりの表面は平滑であるため、触ったときにごつごつしたような感じもありません。
また、周囲の組織に対して浸潤(広がること)をするようなタイプのしこりでもないため、触ることで容易に動かすことが可能です。また、痛みを伴うことも基本的にはありません。
乳腺線維腺腫は片方の乳房だけにみられることもあれば、両側にみられることもあります。数も一個のことがあれば、数個出現することもあります。
乳腺線維腺腫は若年層の女性にみられることが多く、乳がんとの鑑別(見分けること)も重要です。ただし、実際に触っただけでははっきりと区別するのは難しいこともあります。
検査・診断
乳房のしこりが指摘された場合には、問診と触診が行われます。しこりが乳腺線維腺腫であるか乳がんであるかを判断するために、マンモグラフィーと呼ばれるレントゲン検査が行われます。また、超音波検査を行い、しこりの性状を確認することもあります。
触診と画像検査を通して、ある程度、乳腺線維腺腫であるか確認することが可能です。病状が疑わしい場合には、しこりの部分に針を刺し組織を採取して、その組織を顕微鏡で観察する病理検査が行われます。また、しこりを丸ごと採取して病理検査を行うこともあります。
治療
乳房に生じたしこりが乳腺線維腺腫であることが確定した場合、基本的には積極的な治療を行わず、慎重な経過観察を行います。
まれではありますが、乳腺線維腺腫が非常に大きくなり審美性に問題を引き起こすことや、経時的に増大傾向にあるケースもあります。このような場合には、手術的に切除することが検討されます。ただし、切除をした後も、新しい乳腺線維腺腫によるしこりが生じる可能性はあります。
乳腺線維腺腫は非常にありふれたしこりですが、乳がんとの鑑別は重要です。そのため、しこりに気付いた際には医療機関を受診して診断を受けることが大切です。
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