概要
光化学オキシダントはアルデヒドやオゾン、ペルオキシアシルナイトレート(PAN:peroxyacetyl nitrate)などの総称で、工場や自動車から排出される窒素酸化物と炭化水素が太陽の紫外線によって光化学反応を起こすことで生成されます。これら光化学オキシダントが大気中に蓄積し、白くモヤがかかったような状態を“光化学スモッグ”といいます。
光化学スモッグにばく露することで現れる皮膚の赤みや目の異物感、喉の痛みなどさまざまな症状を光化学スモッグ障害といいます。
軽症の場合は目の洗浄やうがいなどによって改善が期待できることもありますが、中等症〜重症の場合には医療機関での治療が必要なケースもあります。予防法として、光化学スモッグ注意報が発令された際は速やかに屋内へ避難するなどの対応を取ることが挙げられます。
原因
光化学スモッグ障害は、光化学スモッグのばく露によって発症します。
工場や自動車から排出される窒素酸化物と炭化水素は、強い紫外線によって光化学反応を起こします。この反応により、オゾンや二酸化窒素などの二次汚染物質である光化学オキシダントが生成されます。この光化学オキシダントが大気中に蓄積することで、光化学スモッグが発生します。
光化学スモッグは大気の状態が安定していて風が弱く、正午前後に強い日射が2時間以上続く気温の高い環境で発生しやすく、しばしば夏季の正午前後に発生します。例年4〜10月頃に発生が確認されますが、太平洋高気圧に覆われる7〜8月は特に紫外線が強く気温も高めで安定した天気が続くため、光化学スモッグが発生しやすくなります。
症状
光化学スモッグ障害では、気道粘膜や皮膚が障害され、目の異物感や痛み、涙が出るほか、皮膚の赤み、喉の痛みや咳などの症状がみられます。重症の場合には、頭痛や発熱、めまい、嘔吐、手足のしびれ、呼吸困難などをきたすこともあります。
検査・診断
光化学スモッグ障害に関しては、症状の発生場所で光化学オキシダント濃度の測定が実施されていないことや診断基準が確立されていないことなどから、多くの場合は診断することが難しい面があるとされています(2023年9月時点)。
治療
光化学スモッグ障害の治療では、症状に対する対症療法が中心に行われます。
軽症の場合には自宅で目の洗浄やうがいを行うことで症状の改善が期待できますが、中等症〜重症の場合には、時に酸素吸入などの処置が必要なケースもあります。
光化学スモッグによって皮膚や気道粘膜の諸症状が出現していると考えられる場合には、速やかに屋内に入り、窓を閉めて涼しい部屋で安静にする必要があります。
目の症状に対しては、流水で目を洗浄し、症状が改善しない場合には眼科を受診しましょう。喉の症状に対しては、水道水でうがいをし、症状が改善しない場合や息苦しさなどを感じる場合には、同様に医療機関を受診し、適切な処置を受ける必要があります。
予防
光化学スモッグ注意報が発令されたら、不要不急の外出を控えて屋内に入りましょう。また、屋内でも窓を閉めるなど、外気が侵入しないよう対策を取りましょう。
特に乳幼児や高齢者、気管支喘息の既往がある場合などは光化学スモッグによる影響を受けやすいとされるため、注意が必要です。
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