概要
憩室とは、腸管の壁の一部が袋状に突出してできたものです。憩室はあらゆる消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸など)でみられます。このうち十二指腸にできた憩室を、十二指腸憩室といいます。
腸管壁全てが突出するものを真性憩室、筋層部分を欠くものを仮性憩室といいます。十二指腸憩室は、加齢とともに後天的に形成される仮性憩室がほとんどで、年齢を重ねるに従い頻度が高く、大きくなります。
基本的には無症状で経過するため、大きな心配はいりません。
原因
十二指腸憩室は、十二指腸下行脚で胆汁と膵液の出口であるファーター乳頭の近くに生じることが多いとされます。これには、膵臓の発生学的な背景が関与しているといわれています。
膵臓は、お腹側と背中側に分かれて発生し、両者が癒合することで完成します。癒合部分は圧力に対して弱いと考えられており、加齢に伴いさらに弱くなったり、いきみなどにより腸管内圧が増加したりすることによって、憩室が形成されるといわれています。
症状
基本的には無症状で経過します。なぜなら、十二指腸憩室は1~3cm程度と比較的大きいため、食事の内容物が憩室内に停留しにくいからです。また大腸などに比べて腸内細菌の数も多くないため、感染を起こすことも多くはありません。
注意が必要な症状
しかし、まれに通過障害や憩室炎、憩室出血などを起こすことがあり、この場合は治療が必要となります。 特にファーター乳頭のすぐ近くに憩室が存在する場合は、憩室により胆汁や膵液の流出が阻害されることで起こるLemmel(レンメル)症候群を引き起こす場合があり注意が必要です。ただし、レンメル症候群の頻度は決して高くはありません。
検査・診断
十二指腸憩室の大半は無症状のため、検診や他の目的で受けた上部消化管造影・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の際に、偶然みつかることが多くなっています。
憩室炎や穿孔、胆管炎や膵炎を合併している場合は、血液検査やCT検査などが行われます。また憩室出血に対しては、止血処置を兼ねて内視鏡検査が試みられます。
治療
経過観察
無症状の場合、基本的には治療の必要はありません。ほとんどの症例で経過観察となります。
治療を要する場合
憩室炎を合併した場合は、まずは絶食や抗生物質の使用などの保存的治療が行われます。病状の悪化がみられたときには、手術の適応となります。また穿孔が生じた場合も手術の適応となります。
憩室出血がみられた場合、まず内視鏡を使ったクリップ止血術が行われます。内視鏡治療での止血が難しい場合は、血管内治療や手術も検討されます。
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