概要
卵巣のう胞とは、卵巣内やその表面に、内部に液体成分を含む構造物が生じた状態を指します。ほとんどの場合、月経周期と関連して発生するものです。
しかし、実際に卵巣のう胞があることで症状を自覚することは少なく、知らぬ間に治癒していることも少なくありません。そのため、別の理由で診察を受けた際に偶然、卵巣のう胞を指摘されることもあります。
原因
多くの場合、月経周期に関連して発生します。月経では、一定の周期で成熟卵子が卵巣から放出され、受精の機会を伺いますが、この卵子が成熟する過程において、卵巣のう胞が形成されることがあります。
月経周期に関連して形成される卵巣のう胞は、月経周期毎もしくは数回の月経周期を経ることで自然に退縮していきます。
一方、月経周期とは無関係に卵巣内に液体成分が形成されることもあります。たとえば、内部に髪の毛や皮膚などの成分が含まれるデルモイドシスト、子宮内膜症が卵巣に発生したチョコレートのう胞などを例に挙げることができます。
症状
無症状で経過することが多いですが、痛みやお腹の膨満感などを自覚することもあります。一定の大きさになると、卵巣が捻転(ねじれてしまうこと)を起こしてしまうことがあります。
この場合には、突然の強い腹痛、吐き気、嘔吐などが生じます。捻転を起こすことで卵巣への血液供給が障害を受けるため、卵巣機能が低下することも考えられます。
そのほか、卵巣のう胞が破裂してしまい、内部の液体成分がのう胞外へと出ることもあります。その結果、腹痛や出血による貧血などが生じる可能性があります。
検査・診断
卵巣のう胞には、多くの原因が存在します。時に悪性腫瘍の一部として発生していることもあるため、そうした可能性も考慮しながら、原因を特定するための検査が検討されます。
具体的には、以下のような検査が挙げられます。
- 妊娠検査
- 骨盤部の超音波検査
- CT・MRI検査などの画像検査
- 血液検査(腫瘍マーカーを検討します)
- 内視鏡検査
など
治療
卵巣のう胞は、大きさや数、その原因などに応じて治療方針が決定されます。症状を引き起こさず、悪性化の所見がない場合には、特別な治療介入をせずに慎重に経過観察をすることもあります。
一方、ホルモンを用いた治療介入や、手術的な摘出術が選択されることもあります。手術をする際には、のう胞を有する卵巣の一部切除なのか、あるいは全体を切除するのかなどが検討されます。
卵巣のう胞が悪性のものである場合には、より積極的な治療介入が行われます。手術をおこなう場合にも、卵巣に限局せず女性器をさらに広範に切除することもあります。また、化学療法や放射線療法が検討されることもあります。
多くの女性が経験する卵巣のう胞ですが、放置していいものと、治療を行うべきものがあります。自覚症状が現れないことも少なくないですが、病院で指摘された際には、どのような治療が必要か、しっかりと相談することが大切です。
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