概要
尿は左右の腎臓で作られ、腎盂で集められ、尿管を通って膀胱に流れます。この尿の通り道(尿路)に、生まれながらにして形・位置・数の異常がある状態を、尿路奇形といいます。
尿管異所開口とは、尿路奇形の一種であり、尿管が本来の尿管口とは異なる部位に開口している状態です。多くの場合は重複腎盂尿管(腎盂、尿管が先天的に2つある状態)に合併し、通常本来の尿管口の位置より足側の、膀胱の出口近く(膀胱頚部)、あるいは膀胱の外(尿道や、女児であれば膣、男児であれば精嚢・精管や前立腺など)に開口します。
男児より女児に約6倍多く、膀胱の外に開口する場合、多くは同じ側の腎臓の低形成(正常に作られず機能していない状態)を伴います。
原因
母体の中で、胎児の尿路がつくられるときに起こる異常が原因です。
左右1本ずつ尿管芽という尿管の元ができ、これが伸びることで尿管が作られますが、はじめに尿管芽が起こる段階で位置の異常が生じ、尿管異所開口になると考えられています。
症状
女児において膀胱の外(膣やその周囲)に尿管が開口すると、そこから持続的に尿が漏れる状態(尿管性尿失禁)となります。
また、女児、男児ともに、尿路の感染症をくりかえす原因となります。尿管口での通過が悪く尿がスムーズに流れない状態、もしくは、膀胱内に開口しておりそこから尿管に尿が逆流する状態などにより、尿管や腎盂の異常な拡張(水腎症)をきたすことが多くあります。
検査・診断
尿管性尿失禁が疑われる女児においては、注意深い陰部の視診が有用です。超音波検査は簡便かつ有用な検査であり、拡張した尿管を認めることが診断の契機となることがあります。
経静脈性腎盂造影(静脈から注射された造影剤が尿として流れ出ることで腎盂・尿管を写し出す検査)も有用ですが、尿管異所開口をきたしている側の腎臓が機能していないと、そちらが十分に写らないことがあります。尿路の全体像を把握する目的で、CT(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)やMRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)も行われます。異常な側の腎臓が機能していない場合にも有用な検査です。
尿管異所開口の診断確定には、膀胱尿道を観察する内視鏡検査、疑わしい穴から細い管(カテーテル)を挿入して尿管であることを確認する造影検査(逆行性腎盂造影)も有用です。尿管が膀胱内に開口しており、そこから尿管に尿の逆流がある場合には、排尿時膀胱尿道造影(膀胱の中に造影剤を注入した後に排尿して尿の流れを調べる検査)で診断することができます。
治療
上述したような持続的な尿漏れをなくすこと、くりかえす尿路の感染症の原因を断つこと、あるいは、尿管異所開口をきたしている側の腎臓が機能している場合にはその機能低下を予防することが、治療の目的となります。以上に当てはまらない場合(腎臓機能が廃絶していて他には症状がない場合など)には、治療をせずに様子をみることもあります。
治療の方法は、腎臓機能の有無によって異なります。腎臓が機能していない場合、腎臓尿管を摘出する手術が検討されます。重複尿管がなく1本の尿管が膣に開口している女児では、多くがこれに該当します。
完全型の重複腎盂尿管の場合、そちらの腎臓で異常な尿管口につながっている部分(通常上側半分)の摘出が行われることがあります。
腎臓がある程度機能している場合、異所開口している尿管を膀胱につなぎ直す手術も検討されます。
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