概要
急性ストレス障害とは、強烈なショック体験や強い精神的ストレスを経験することが心のダメージとなり生じる一過性の精神障害を指します。急性ストレス障害では、ストレスとなった状況がフラッシュバックしたり、また状況を思い出すような状況をあえて避けるようになったりします。過度の不安や不眠などに加えて、頭痛などの肉体症状を呈するようになります。
急性ストレス障害はPTSDと類似した疾患として記載されることの多い疾患ですが、両者には明確に異なる点もあります。すなわち、両者で生じる症状は類似する点が多いものの、急性ストレス障害では解離性症状(ぼーっとしている、感情に乏しいなど)に重点が置かれています。さらに急性ストレス障害は誘因となったストレスイベントから4週間以内に発症し、症状は4週間以内には改善します。一方のPTSDにおける症状は短期間に消失せず、4週間以上続くことになります。
急性ストレス障害は無治療の状態では、その後にPTSDへと続く可能性が危惧されます。そのため、より早期の段階から治療介入を行うことで症状が長引かないようにすることが重要になります。
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原因
急性ストレス障害は、生命の危機に瀕するような状況や性的な暴行など、大きな心理的ストレスを実際に経験することも、もしくはそういった場面に遭遇することなどを通して発症する可能性があります。
原因となりうる具体的なイベントとしては、PTSDのそれと類似しています。原因となりうる出来事としては直接的に自分が経験したもの(例えば交通事故や航空事故などで大きな事故に巻き込まれる、性的暴行を受けるなど)であることもあれば、実際に自分が経験した訳ではなくとも間接的に経験したもの(仲のいい親友や家族に同じようなストレスイベントが起きた場合や事故現場や殺人現場を目撃するなど)であることもあります。
こうした原因となりうるイベントは、誰にとっても大きなストレスをもたらすものではありますが、実際に急性ストレス障害を発症するかどうかには個人差があります。ストレスに曝されるその人自身のパーソナリティも関係しますし、その他、実際にストレスイベントを経験してからの周囲のサポート体制も症状出現に関係します。
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症状
急性ストレス障害の症状は、原因となるイベントが発生してから1ヶ月以内に出現し、2日から1ヶ月以内の経過で一過性に改善します。症状が短期間で消失する点がPTSDとの大きな違いの一つであると言えます。
急性ストレス障害を発症すると、原因となったイベントに関連した状況に置かれることで同じ症状を呈することを指し、悪夢を見たり当時の記憶がフラッシュバックしたりします。また、気分が落ち込んだり、楽しいという気持ちがなくなりますし、幸福感や愛情を感じることも乏しくなります。その他、意識がぼーっとした感じになり、自分が自分であるという意識が乏しくなります。ストレスイベントをあえて思い出さないように努めたり、思い出すような場所、人、物、状況などを避けたりしますし、睡眠障害やちょっとした物音でびくびくしたり、イライラしたりしますなどを認めることになります。
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検査・診断
急性ストレス障害の診断は、ストレスイベントからの時間軸の中で生じる症状を詳細に評価することでなされます。PTSDの診断は、症状を問診することからなされます。実際の診断に際しては、症状とストレスイベントとの関係性を評価しながら、DSM-5などの診断基準に当てはめて急性ストレス障害を診断することになります。
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治療
急性ストレス障害は原因となるストレスイベントが存在します。そのため、発症リスクになりうるストレスイベントに遭遇した際には、急性ストレス障害の発症を予防することを第一に図ります。具体的には、本人が安心感を感じられる環境を整え、周囲のサポート体制をしくことになります。本人のストレス状況に関して、共感を持って理解を示しながら励ますことが重要であり、こうした姿勢は急性ストレス障害を発症した状況に置いても有益であり、さらにはのちのPTSD発症リスクを軽減する観点からも大切です。その他、イベント時の状況や自分の抱える気持ちを表現することで功を制する場合もあります。
急性ストレス障害では不安や睡眠障害などの症状を呈することもあります。時に抗不安薬や睡眠薬などが使用されることもありますが、必ずしも必要と言う訳ではありません。
急性ストレス障害は、基本的には一過性の精神症状として改善することが期待できます。しかし、経過が長引くことでPTSDの発症につながることもあるため、より早期の段階から医療機関を受診し、専門的な医療介入を受けることが重要であると言えます。
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