概要
愛情遮断症候群とは、子どもの成長、発育、発達過程に必要不可欠な愛情を小児期に十分受けることができなかった結果、生じる成長・発達障害のことを指します。養育者(母親や父親)がうつ状態であったり、育児放棄があったりすることを原因として発症する病気です。愛情不足に対して子どもは非常に敏感で、成長および情緒発達が不安定になる結果として、
- 低身長
- かんしゃく
- 夜泣き
- 感情を出さない
などの症状を認めるようになります。精神的に安心できる環境を子どもに提供することが重要であり、養育者に対してのアプローチも求められる病気であるといえます。
原因
愛情遮断症候群は、子どもが養育者(母親や父親)からの愛情を十分に受けられないことを原因として発症します。
両親を含めて周囲の環境から愛情を受けながら成長することは、子どもの成長発達面において必要不可欠な要素です。養育者が子どもに十分な愛情を与えたり、その時々の欲求に対して対応したりすることで、子どもの精神状態は安定します。精神的に安定した状態にある子どもは、活発に遊ぶことができ、栄養豊富な食事を摂取し、充分な睡眠を取ることができます。こうした健康な生活スタイルは、成長や発達の需要に見合った栄養、睡眠、ホルモン(成長ホルモンや甲状腺ホルモン、性ホルモン)が供給されるには必要不可欠なものです。
しかし、愛情遮断症候群は、愛情不足を原因として子どもが精神的に不安定な状況になります。栄養が充分に与えられないことや、夜泣きを繰り返すことから夜間の睡眠が不十分になり、成長ホルモンを含む種々のホルモン分泌が足りなくなることもあります。こうしたことが原因となり、成長・発達障害の症状を見るようになります。
状況としては、母親に極度の育児ノイローゼがあり育児放棄に至っている場合を例に挙げることができます。
そのほか、
なども愛情遮断症候群を引き起こすリスクファクター(危険因子)であることが知られています。養育者自身が子ども時代に十分な愛情を受けて育っていない場合、世代を超えて子育てに影響することもあり、このことを“世代間伝達”と呼びます。
症状
愛情遮断症候群では、身体面からそれと指摘できる症状を見るようになります。栄養を十分に与えられず、成長に必要な各種ホルモンの分泌(代表的には成長ホルモン)が不足する結果、年齢に応じた身長・体重増加を達成することができなくなります。したがって、低身長や体重増加不良を見ることが多いです。脂肪のつき方や筋肉の発達も異常を呈するようになり、赤ちゃんであれば赤ちゃんらしい手足のムチムチとした感じがなくなり、幼児期以降であっても体幹から手足にかけての線が細くなります。
愛情遮断症候群では、子どもの情緒面にも影響が生じることがあります。
すなわち、
- 喜怒哀楽に対しての表情が乏しい
- かんしゃくを起こしやすい
- 養育者に抱っこをせがむことがない・寄っていかない
などの症状を見るようになります。愛情遮断症候群は常時不安を感じるような状況であり、夜間の睡眠の質が低下することもあります。お腹が空いている、歯が生えている、オムツが汚れているなどの原因がないにもかかわらず、頻回の夜泣きを見ることもまれではありません。
また、愛情が足りていない環境に子どもが置かれていることを疑うポイントもあります。
具体的には、
- おむつかぶれがひどい
- 皮膚が汚い
- 汚い服を着ている
などです。
愛情遮断症候群は育児放棄(ネグレクト)を原因として発症する場合もあるため、こうした状態は子どもの置かれている環境を推測するのに重要です。
愛情遮断症候群では運動発達が遅れることもあり、おすわりや自立歩行が遅れることもあります。愛情遮断症候群に陥った家庭や養育環境から子どもを隔離し、ストレスのない愛情深い環境におくことで、特別な栄養がなくても、体重や身長および発達が伸びることが観察されます。その後、その子どもを再度、改善されていない家庭・養育環境に戻すことで、再度身長や体重の停滞がみられることがあり、これを階段状の発育と呼んでいます。
検査・診断
愛情遮断症候群では、それと診断できる検査項目は存在しません。周囲の養育者からの情報を統合することが重要です。また、成長発達の遅れや、適切な養育環境に置かれていないことを確認することも重要になります。乳幼児期に発症することが多い病気であることから、身長と体重、頭囲の成長曲線を書くことも重要です。このことをとおして、身体的な成長が障害されているかどうかが確認できます。
治療
愛情遮断症候群の治療は、対象の子どもに対して適切な愛情、栄養、養育環境を与えることが重要です。養育者自身が病的であることに気付いていない場合や、精神状態が不安定である(育児ノイローゼなど)場合もあるため、子どもと養育者との関係に終始するのではなく、協力が得られそうな親戚や友人なども交えて対応することが必要になります。地域の保健所や子育てサークルなどへの参加も有効です。
症状が強い場合には、“虐待”の一種として一時的に子どもを保護することが必要になることもあります。養育者と一時的でも離れて生活し(入院など)、ストレスが少ない環境で充分な食事を摂取することで成長発達が改善することが期待できます。
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