概要
薬物中毒とは、からだに作用するさまざまな薬の作用が過剰に出てしまうことで体に異常をきたす状態をいいます。
中毒というと、一度にたくさんの薬を摂取してしまうことを連想しがちですが、それだけではなく摂取量が正しくても患者さんの全身状態や一緒に処方される薬との相互作用などによって中毒になることもあります。
さらに、一時的な急性の中毒だけでなく、アルコールや職業上の化学物質に対して長期的に曝露している方では慢性の中毒となることもあります。
原因
薬物中毒の原因には大きく分けて3つの要因があります。
摂取する薬の量
もちろん、多ければ多いほど発揮される作用は強くなりますし、効果が現れるためにはある一定以上の濃度が必要になりますので、「クスリはリスク」といわれるように、よく効く薬には一定の危険があります。したがって、よく効く薬を正しい用量以上に多量に摂取してしまうと、中毒レベルの濃度になり異常をきたすようになってしまいます。
身体のなかで薬を処理、排泄する代謝経路の機能
薬を代謝する主な臓器は肝臓や腎臓ですが、これらの臓器の機能が低下してしまうと治療のための濃度を上回る濃度が維持されるようになり、異常をきたすようになることがあります。
薬の相互作用
薬を代謝する主な臓器である肝臓や腎臓において、複数の薬物は同じ代謝酵素や代謝経路を通って排出されます。その際、代謝経路が同じ薬を複数摂取すると、片方の薬ばかりが代謝されてしまいもう片方の薬は処理されずにいることがあり、このまま薬を日々摂取していると中毒レベルの濃度となってしまうことがあります。
症状
薬物中毒の症状はその薬の作用に依存します。糖尿病のための血糖値を下げる薬の中毒では低血糖になりますし、高血圧のための血圧を下げる薬の中毒では血圧が下がりすぎてしまいます。
その一方で、薬の代謝のためにはたらく肝臓の細胞や腎臓の組織に負担がかかり肝臓の障害や腎臓の障害が起こることもあり、それにともなう全身のだるさや気分不快などの全身の症状が現れることもあります。
検査・診断
薬物中毒の検査は血液検査や尿検査を基本とします。検査項目にその薬の濃度を測定できるものがある場合には、その薬の濃度を測定しながら、それ以外にも肝臓や腎臓の機能を示す項目などの一般的な検査を行って、全身の臓器に異常をきたしていないかどうかを調べます。
特に、拮抗薬のある薬物の中毒に対しては、原因となる薬物を同定することが治療においてとても重要となりますので、迅速で薬物検査キットを用います。
さらに、意識障害がみられる場合には簡易血糖値測定器だけでなく頭部CT検査などを行って、ほかの原因がないかどうか調べます。
治療
薬物中毒の治療は、体のなかで中毒となっている物質を減らすことです。特に急性期では拮抗薬の投与や胃洗浄、下剤の投与、血液透析などを行うことが重要となります。それと同時に、生命に危険を及ぼしうる薬の場合には全身状態を保つための治療が必要となります。
また、麻薬や覚醒剤のように身体依存や精神依存などを生む薬については、治療開始により離脱症状(禁断症状)が現れる場合があり、離脱症状に対する治療も重要となります。
一方で、薬物中毒に陥ってしまった原因や生活習慣についても見直す必要があります。薬を処方する主治医には中毒状態になってしまったことを報告し、今後の処方の仕方や薬の変更などを検討する必要が生じることもあります。まず、中毒になることを予防することがとても重要です。
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