概要
手指関節靭帯損傷とは、指の関節運動を支えている手指関節靭帯に何らかの原因で強い外力が作用してダメージを受ける外傷のことです。私たちの指は緻密な作業が行えるよう、さまざまな筋肉や靭帯、腱が複雑に入り組んだ構造をしています。
親指を除く4本の指には3つの関節があり、一番末端からDIP関節、PIP関節、MP関節と呼びます。(親指にはDIP関節はなく、末端からIP関節、MP関節という構造になっています。)
これらの関節は多くの筋肉と靭帯に支えられており、関節が左右に動揺しないように関節の両側に手指側副靭帯、指が手の甲側に曲がらないように手の平側の手指関節には掌側靭帯がそれぞれ付着しています。
これらの靭帯の中でも、手指側副靭帯は側方からの強い外力によって損傷を来たしやすく、完全に断裂すると指関節の不安定性が見られるのが特徴です。また、掌側靭帯は指の関節が手の甲側に強制的に引き伸ばされることで生じ、多くは靭帯の付着部に剥離骨折が生じます。
原因
手指靭帯の代表的なものには側副靭帯と掌側靭帯が挙げられますが、損傷の原因はそれぞれ異なります。
側副靭帯損傷
骨と骨を両側から支えて関節の安定性を維持する靭帯であり、スポーツや転倒などで指の側方から強い外力が加わることで損傷します。
PIP関節側副靭帯と母指MP関節側副靭帯が受傷しやすいとされていますが、すべての部位の側副靭帯で生じる可能性があります。
掌側靭帯損傷
指が手の甲側に曲がらないように、手の平側から手指関節を支えている靭帯です。事故や転倒、転落などにより手の平側から強い外力が指に加わることで、手指関節が手の甲側に過度に引き伸ばされて損傷します。
非常に強い外力が作用して生じるものであり、掌側靭帯が骨と強固に付着しているため、靭帯が過伸展するとともに骨との付着部で剥離骨折を生じることが多々あります。
症状
症状は靭帯の損傷の程度や剥離骨折の有無によって大きく異なります。
損傷が軽度な場合には受傷部の痛みや腫れ、熱感などが生じます。一方、靭帯の完全な断裂が生じた場合には関節が不安定になり、外力が加わった方向と同じ方向に力を加えると通常では曲がらない角度に関節が曲がるようになります。
また、剥離骨折が併発している場合にはより強い痛みと腫れが生じ、指を伸ばすことができなくなります。
検査・診断
受傷のきっかけや痛み、関節の不安定性などの身体所見から、手指関節靭帯損傷が疑われた場合には、レントゲン(X線)などによる画像検査が行われます。X線検査では靭帯損傷の有無を評価することはできませんが、受傷部の側方から力を加えて関節の安定性を評価する撮影方法が行われることがあります。
また、X線検査では判別できないような微細な骨折の有無を調べるためにCT検査やMRI検査が行われることもあり、治療方針の決定に用いられます。
治療
軽度な損傷であれば、ギプスやシーネなどで固定を行い患部の安静を図ります。痛みが強い場合には消炎鎮痛剤や湿布などで対処療法を行い、固定を外した後に少しずつリハビリを開始します。
一方、靭帯が完全断裂している場合には靭帯をつなぎ合わせる手術が行われ、固定によって整復できないような偏位の著しい剥離骨折を併発している場合には、骨折部を固定するための手術が行われることもあります。
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