概要
放射性リガンド療法は、がん細胞に特異的に結合する物質(リガンド)と、アルファ線またはベータ線を放出する放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)を結合させた薬剤を体内に投与し、がん細胞に放射線を集中的に照射することで治療効果を得る方法です。
注射や内服による全身投与が可能であり、体外から放射線を照射する外部照射法と異なり、原発巣および転移巣に同時に作用する点がすぐれた特徴です。
アルファ線(飛程:約0.05〜0.1mm)やベータ線(飛程:約1〜2mm)という非常に飛程(放射線の影響を受ける距離)の短い放射線を使うことによって、がん組織の周囲にある正常組織への影響を最小限に抑えることができます。
ただし、がん細胞に結合の標的となる“リガンド受容体”が発現していない場合は、治療ができない、もしくは治療効果が低下する可能性があります。治療ができるかどうかは事前にリガンドの状態を調べる特殊なPETなどの検査を行って判断されます。
適応
放射線リガンド療法の適応と使用する薬剤は以下のとおりです。

治療の流れ
放射性リガンド療法の実施には、まず、がん組織へのリガンドの集積が確認される必要があります。PETやシンチグラフィー検査により集積を評価します。
治療を行う際、使用する薬剤によっては、放射線管理区域(RI病室)での入院が必要になる場合があります。
効果とエビデンス
前立腺がんに対する塩化ラジウム(223Ra)を用いた治療の効果としては、海外の921人を対象にした試験で、生存期間の有意な延長が認められました。
神経内分泌腫瘍に対する、ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)を用いた治療の効果としては、国内試験で46.7%の奏効率(がんが縮小・消滅した割合)があり、14例中13例で腫瘍の縮小が確認されました。海外試験では無増悪生存期間(がんが進行・再発せずに安定した状態)の延長も報告されています。
リスク
一般的に、放射性リガンド療法は正常組織への影響が少なく、安全性の高い治療とされていますが、副作用がまったくないわけではありません。
主な副作用としては、骨髄抑制(白血球や血小板の減少)、吐き気、味覚の異常、倦怠感などがあります。
また、使用される薬剤には、治療後も体の外へ放射線が放出されるものがあります。該当する薬剤を使用する場合は、退院後もしばらくは排泄物や汗などの扱いに注意が必要になります。
治療後の経過
治療後は、数か月単位で血液検査や画像検査を行い、治療効果や副作用の有無を確認します。たとえば甲状腺がんでは、甲状腺ホルモンや血球数の測定を行い、CTやMRIで再発や残存病変を評価します。
効果が不十分な場合は、6か月〜1年後に再治療が検討されます。
費用の目安
以下の薬剤はすでに日本国内で保険適用となっており、患者負担は軽減されています。
・ヨウ化ナトリウム(131I)
・イットリウム(90Y)イブリツモマブチウキセタン
・塩化ラジウム(223Ra)
・ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)
・3-ヨードベンジルグアニジン(131I)
費用は医療機関や地域によって異なるため、受診している医療機関に事前に確認してください。
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