ちつけっそん

腟欠損

膣

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概要

腟欠損とは、先天的に腟の形成がうまくなされない病気を指します。腟の形成不良に加えて、子宮も同時に欠損することが多いです。そのため、性交渉を行えない、胎児を育てることができない(妊娠できない)といった状態を引き起こします。完全に腟がなく、子宮も痕跡程度である状態をMayer-Rokitansky-Kuster-Hauser 症候群と呼びます。腟欠損のなかでももっとも頻度が高いものであることが知られており、5000人に1人発症すると報告されています。

腟欠損では卵巣の機能は正常であり、乳房や外陰部の恥毛の発達もみられます。しかし、腟を欠損するため月経の発来がなく、このことを主訴にして受診し、診断されることが多いです。

腟欠損は診断により、心理的にも多大な影響が生じる疾患といえます。そのため、医学的な治療介入に留まることなく、周囲のサポート体制を敷くことがとても重要であると考えられます。

原因

腟や卵管、子宮といった外性器や内性器は、胎児期においてお母さんの体内で形成されます。女性特有の臓器組織である腟、卵管、子宮は、ミュラー管と呼ばれるものから形成されます。女性の場合は基本的には卵巣を有していますが、女性ホルモンや男性ホルモンのバランスが適切に保たれることから、外性器・内性器が男性のように発達するのではなく、ミュラー管が女性特有の性器(すなわち、腟、卵管、子宮)へと発達することになります。腟欠損は、このミュラー管の発達過程において異常が生じることを原因として発症します。

腟欠損では、子宮の形成が同時に障害されることが多いですが、子宮は正常に形成されていることもあります。また、同時に腎臓や筋骨格系、聴覚の異常を併発することもあります。

腟欠損で重要な点は、染色体レベルでは女性の性別である(すなわちXX染色体を有する)という点です。卵巣の発達も基本的には正常であり、腟欠損が診断された後の対応方法を考慮するうえで大切な点であるといえます。

症状

腟欠損は、思春期になるまで病気を診断されることは少ないです。腟を欠損しているということは、生理がうまく起きないことを意味しています。そのため、思春期の時期になっても月経(生理)が発来しない、という症状をもとにして診断されることが多いです。

腟欠損では子宮は正常に形成されていることもありますが、この場合には月経周期と共に子宮からの出血は生じています。しかし、出血の出口である腟が閉鎖しているため血液の逃げ場がありません。そのため、月経周期に一致してお腹の痛みを自覚することもあります。

また、腟欠損では、性交渉がうまくできない、胎児を育てることができない、といった問題も引き起こされます。これらに関連して、本人や周囲の方々が心理的に多大なる影響を受けることもまれではありません。なお、腟欠損では卵巣の発達は正常であるため、女性ホルモンの産生は問題がありません。そのため、乳房の発達や恥毛の発達はみられます。

検査・診断

腟欠損は、外性器の状態を詳細に評価することで診断がなされます。また染色体レベルでの性別(XX染色体、XY染色体など)や男性ホルモン・女性ホルモンを評価するために、血液検査が行われます。

また、腟欠損では子宮や卵管の形成も同時に障害を受けていることがあります。このことを確認するために、エコー検査やMRI(磁気を使い、体の断面を写す検査)といった画像検査が行われます。基本的には卵巣の発達は問題ないため、画像検査では正常な卵巣を同定することができます。なお、腟欠損では腎臓の異常が併発することもあり、画像的に異常を同定できることもあります。

治療

腟欠損では、性交渉をおこなえるようにするため腟の形成を図ります。治療を行うかどうかは、性交渉に対しての理解が十分になされた状況であるかが重要です。卵巣の発達は基本的には正常であるため、ホルモンの補充療法は必要ありません。

膣の欠損状態によってはプロテーゼと呼ばれる器具を用いて保存的に膣の拡大を図ります。一日のうちに定期的に使用し、皮膚の伸張を通して膣の拡大を図る治療法です。保存的な方法で膣の拡大が充分図れない場合には、手術的な治療方法が選択されます。手術方法はさまざまであり、腹腔鏡を用いた侵襲性の低い方法がとられることもあります。こうした治療方法をとることで、通常の性交渉が行えるように対処します。なお、膣の分泌物が十分ではないこともあるため、潤滑剤を使用することもあります。

腟欠損では、子宮が欠損することも多いため妊孕性(にんようせい:妊娠する能力)の問題も出てきます。卵巣の機能は保たれており、代理母などの手段をとることでお子さんをもうけることは医学的には可能です。ただし、2018年の時点で、日本国内で実施することができないのが実情です。