概要
腱滑膜巨細胞腫とは、関節やその周囲に発生する良性の腫瘍です。従来は腱鞘巨細胞腫や色素性絨毛結節性滑膜炎と呼ばれていました。現在では、腱滑膜巨細胞腫に名称が統一され、主に手指の関節で発生する“限局型”と、膝関節や股関節などの大きな関節に発生する“びまん型”に大きく分けられています。特にびまん型は関節内に血がたまったり、周囲の骨へ浸潤したりすることが多く、患者さんの生活の質(QOL)を低下させる病気として知られています。腱滑膜巨細胞腫の男女比は0.55:1で、やや女性に多いといわれています。
腱滑膜巨細胞腫は遺伝子変異により、コロニー刺激因子1(CSF-1)と呼ばれるタンパク質が過剰に産生されることが原因で発症すると考えられています。症状は、限局型では関節にしこり(結節)が生じ、びまん型では主に関節の腫れや痛み、可動域(動かせる範囲)の制限などが挙げられます。診断には主にMRI検査が用いられ、特徴的な信号変化(黒く写る部分)を確認します。標準的な治療は外科的な切除手術ですが、びまん型では40~50%程度で再発することが課題とされてきました。2026年現在、CSF-1を標的とした新しい薬(CSF-1R阻害薬)の開発が進んでいます。
原因
腱滑膜巨細胞腫の発症には、特定の遺伝子変異が関与しているといわれています。この遺伝子変異により、CSF-1が病変部で過剰に産生されるようになります。過剰なCSF-1は、周囲の免疫細胞(CSF-1受容体陽性炎症細胞)を病変部に呼び寄せます。この呼び寄せられたCSF-1受容体陽性炎症細胞が集まることで、腫瘍を形成すると考えられています。
症状
腱滑膜巨細胞腫は、限局型かびまん型かによって症状の特徴が異なります。
限局型
主に手指の小さな関節に腫瘍が発生しやすく、境界がはっきりしたしこりとして触れることができます。痛みを伴うことは少ないといわれていますが、腫瘍が大きくなった場合は腱の動きを阻害し、指が動かしにくくなることがあります。
びまん型
腫瘍が膝関節や股関節、足首などの大きな関節に発生しやすいタイプです。関節内に腫瘍が広がって出血を繰り返すため、関節の腫れや痛みなどが生じます。進行すると、若年であっても関節軟骨が変形して変形性関節症のような状態に至り、腫れや痛みに加えて、関節の動かしにくさや可動域制限が生じるケースがあるとされています。
検査・診断
腱滑膜巨細胞腫の診断においては、主に画像検査と病理検査が行われます。
画像検査
MRI検査やX線検査(レントゲン検査)、CT検査などの画像検査が行われます。特にMRI検査は、腱滑膜巨細胞腫の診断において重要な検査とされています。病変部では腫瘍内部の出血によりヘモジデリン(血液由来の鉄分)が沈着していることが多く、MRI画像上で黒く写る(低信号)領域が認められる点が特徴です。
病理診断(生検)
確定診断のために、組織の一部を採取する生検が行われることもあります。生検では病変部に針を刺して組織を採取します。採取された組織は、顕微鏡で特徴を確認して診断します。
治療
腱滑膜巨細胞腫では、主に手術が行われます。薬物療法の研究も進められていますが、2026年1月時点で日本国内において承認された薬はなく、いずれも保険診療として使用することはできません。
手術
標準的な治療法は、腫瘍が生じた部分を切除する手術です。関節鏡を用いた手術や、関節を切開して直視下で行う手術があります。しかし、特にびまん型では微細な病変を取りきることが難しく、術後の再発率は40~50%程度といわれています。再発した場合は再手術が検討されます。また、関節の変形が著しい場合は、人工関節置換術が選択されることもあります。
薬物療法
症状が重度かつ手術が難しい場合に対して、以下のようなCSF-1R阻害薬の研究や開発が進んでいますが、いずれの薬も2026年1月時点では本邦で使用できません。
ペキシダルチニブ
米国で承認されている薬ですが、重篤な肝機能障害のリスクがあるため、厳格な管理下での使用が必要とされています。本邦でも臨床試験が行われていましたが、2026年1月現在は試験登録が終了しています。
ビムセルチニブ
2025年に欧米で承認されている薬です。欧米を中心に13か国で行われた第III相臨床試験において、重篤な肝機能障害は認められなかったと報告されています。本邦での承認は2026年1月現在、得られていません。
ピミコチニブ
経口投与可能な薬として、アジアと欧米を対象とした第III相臨床試験が行われ、2025年に中国で承認されました。2026年1月現在、本邦では承認されていません。
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