概要
膀胱憩室とは、膀胱の外側に向かって突出した場所(憩室)ができた状態を指します。先天的、後天的両方の原因があります。
必ずしも治療介入が必要な状態ではありませんが、尿路感染症やの発生原因になることもあるため、慎重に治療方針が決定されます。状況によっては手術が行われることもあります。また、感染症を発症した場合には、抗生物質が用いられます。
原因
先天的な膀胱憩室はまれな疾患で、生まれつきの構造的な異常であり、憩室はひとつであることが多いです。おもに尿管(腎臓で産生された尿を膀胱に運ぶ器官)が膀胱に付着する部位の近辺で生じます。
一方、後天的な膀胱憩室は複数の憩室がみられることが多いです。後天的に膀胱憩室を発症する原因としては、前立腺肥大症や神経因性膀胱、尿道狭窄など尿の流れがスムーズにいかなり、膀胱内の圧が上昇し、脆弱化した筋肉(筋層)が圧迫され膀胱の一部が膀胱外にふくれあがる形で発生します。ほか、手術などで膀胱に瘢痕が生じ筋層が薄くなっている状況で圧がかかっても発生することがあります。
症状
膀胱憩室単独では、特別な症状が現れることはなく、以下のような症状の精査中、偶発的に発見されることが多いです。
(1)反復する尿路感染
(2)膀胱結石
(3)悪性腫瘍(膀胱癌)の精査中
(4)尿道の狭窄・通過障害(排尿困難)
(5)膀胱尿管逆流現象((1)と同様尿路感染が反復します)
(6)下腹部痛
まれですが腸管の圧迫を来す場合もあります。
検査・診断
膀胱憩室は、繰り返す尿路感染症や二段排尿などの存在によって疑われます。検査としては、超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査が行われることがあります。
また、排尿時膀胱尿道造影と呼ばれる検査を行うこともあります。この検査は、尿に見立てて膀胱内に造影剤を入れ排尿を促す検査で、膀胱憩室の存在や膀胱尿管逆流を視覚的に確認することが可能です。
膀胱憩室内に結石や腫瘍が形成されることもあるため、膀胱鏡を用いて直接的に観察をすることもあります。
治療
膀胱憩室では、症状や膀胱逆流、腫瘍の存在などを判断して治療方針が決定されます。無治療のまま経過観察が選択されることもありますし、手術的な治療介入が取られることもあります。手術の場合は開腹して憩室自体を切除することも行われていましたが近年は内視鏡で(経尿道的に)憩室の粘膜を焼いて萎縮させたり、憩室の出口を大きく切開して膀胱の一部にしてしまう(部屋をなくしてしまう)術式が行われています。また、感染症を起こしている場合には、抗生物質の使用も必要です。
憩室内に腫瘍がある場合、憩室の壁が薄いため経尿道的な切除では穿孔(穴が空いてしまうこと)のリスクもあります。大きな腫瘍の場合には開腹して腫瘍のある憩室ごと取ってしまうこともあります。
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