概要
薬剤性難聴とは、薬剤を原因として引き起こされる聴覚障害のことを指します。
抗生物質を始めとして、医療機関にて処方を受けることが少なくない薬剤も原因となります。発症すると、耳鳴りや耳の閉塞感などが生じます。
難聴は、日常生活では使用頻度が高くない高音領域から始まるため、薬剤による聴力障害に気付かずに病状が進行することがあります。
内耳の障害のため、聴覚ばかりでなく平衡障害によるめまいや浮動感なども同時に起こる場合があります。
原因
原因となりうる薬剤としては、抗菌剤であるアミノグリコシド系やグリコペプチド系などを例に挙げることができます。
アミノグリコシド系が原因となる場合、ミトコンドリアが有する遺伝子多型(遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差)に応じて副作用の出現頻度が異なることも知られています。
その他、心不全などに対して使用されることがあるループ利尿薬や抗がん剤である白金製剤、解熱鎮痛剤として使用されることもあるアスピリンなどのサリチル酸製剤も薬剤性難聴の原因となりえます。
症状
薬剤使用中に耳鳴りや耳の閉塞感などが生じます。難聴が生じても、アミノグリコシド系抗菌剤や白金製剤では日常生活では使用頻度が高くない高音領域の音が特に聞こえにくくなるため、難聴よりも上記の耳の症状が先行します。ループ利尿剤やサリチル酸製剤では低音領域から高音領域全般に難聴が生じます。
聴力低下を反映する症状として、体温計のアラーム音や電子レンジの音などが聞こえにくくなる、といった状況を例に挙げることができます。
また、聴力の低下に周囲の人が気づくきっかけとして、下記のような状況が考えられます。
- 聞き返しが多い
- テレビの音が大きくなった
- 声をかけても振り向かない
など
検査・診断
薬剤性難聴では、一般的には聴力を評価するための標準純音聴覚検査が行われます。語音聴力検査も併用して、聴力を詳細に評価します。
アミノグリコシド系抗菌剤による薬剤性難聴のリスクを検討するために家族歴にも注意して、近親者で薬剤による難聴者がいる場合には、積極的に検査を受けるようにします。
発症初期には聴力の低下に気がつかないことも少なくないため、定期的に耳鼻科などで聴力の検査を受けておくことが勧められます。
治療
アミノグリコシド系抗菌剤や白金製剤では、一度難聴が生じると薬剤を中止しても回復は難しいため、早期発見、予防が重要です。
薬剤投与前から耳鼻咽喉科を受診して、聴力の厳重な管理が求められます。家族歴にも注意して、近親者で薬剤による難聴者がいる場合は、積極的に遺伝子検査を行ってから薬剤を投与するようにします。
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