概要
解離性障害とは、一言で説明するのは難しく大雑把な表現として、記憶、思考、感情、意識、自己同一性(アイデンティティ)などがうまく働かなくなったり、コントロールできなくなったりする病気です。
自己同一性とは、過去から現在まで自分がどのような人間なのか認識し、自分を“自分”として捉えることであり、私たちは通常、意識しなくても自然にできています。しかし、解離性障害ではこれらの能力が損なわれるため、意識が遠のく、特定の時間の出来事を切り取られたように思い出すことができない、自分の体の一部の感覚が感じられなくなる、自分の体から抜け出して外から自分を見ているように感じる、2つ以上の人格が1人の人間の中に存在する(解離性同一性障害)などさまざまな症状が引き起こされます。このような症状は、健康な人でもつらい体験などをすることで一時的に現れることがありますが、解離性障害とは、日常生活に支障をきたすほどの症状が現れるものを指します。
解離性障害の明確な発症メカニズムは解明されていませんが、幼少期のトラウマ(心的な外傷)や、衝撃的な災害や事故の体験などが発症の引き金になることがあると考えられています。この病気は適切な心理療法や薬物療法を行うことが大切ですが、治療が難しいことも少なくありません。また、周囲の方の理解やサポートも必要であるとされています。
原因
“解離”とは、強いストレスにさらされた際に生じることがある、つらい体験などを意識から切り離して自身の心を守るはたらきです。解離性障害では日常生活に支障をきたすほどの症状が生じますが、その明確な発症メカニズムは解明されていません。災害や事故などの経験や幼少期のトラウマ経験ののちに発症することがあるといわれています。
症状
解離性障害の症状は多岐にわたります。単なる物忘れではなく、ある特定の時間や場所の記憶が抜け落ちる(解離性健忘)、まれに自分が誰で何をしていたかまったく分からなくなるほど記憶が抜け落ちる(全生活史健忘)、そのような状態で日常生活から抜け出すように失踪して新たな生活を始める(解離性遁走(かいりせいとんそう))などの症状がみられます。また、自分自身の体から抜け出して外から自分を眺めているように感じたり現実が生き生きと感じられなくなったりする(離人感・現実感喪失症)、2つ以上の人格が1人の人間の中に存在する(解離性同一性障害)などが代表的な症状として知られています。
検査・診断
解離性障害による症状は統合失調症などほかの精神科の病気による症状と類似しているため、医師によって詳しく症状を確認するほか、画像検査、血液検査などを行い、他の原因となるような身体疾患、薬物の使用がないことを確認して、総合的な判断のうえで診断されます。解離性障害を確実に診断できるような検査はまだありません。また、診断の参考にするために、心理検査などが行われることもあります。
治療
解離性障害は明確な発症メカニズムが解明されていない一方、過去のつらい体験によるトラウマが発症に大きく関わっていると考えられています。症状が特殊であるためか、治療者からですら共感を得られにくい場合があり、症状とともに症状を理解してもらえないという二次的な辛さを感じている場合も少なくありません。そのため、まず正確な診断と症状への理解が大切です。次に原因となっているような状況・環境を調整してストレスを減らすこと、またストレスへの対処方法を学ぶことや、カウンセリングなどの心理療法が行われます。
また、この病気に対する直接的な治療薬はありませんが、付随する不安や抑うつなどの症状に対し、抗不安薬や抗うつ薬などを用いた対症療法が行われることがあります。
予防
解離性障害は突然生じるような災害や事故などの衝撃的な出来事、過去のトラウマなどが発症の引き金となることが知られている一方で原因が不明な場合もあり、確実な予防法はありません。そのため、突発的な事故で強いストレスを受けた後などで解離性障害が疑われる症状が出現したときには、早めに受診して適切な診療を受けることをおすすめします。
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