概要
解離性障害とは、思考や記憶、周囲の環境、行動、身体的なイメージなど本来はひとつのつながりとして実感されるべきものが、それぞれ分断されて経験されるようになる障害です。解離性障害を呈すると、あるときの出来事がごっそりと抜けて思い出せなくなる、予期せぬ場所へ記憶がないまま行ってしまう、などの症状がみられます。日常生活や社会生活にも大きな支障をきたすようになります。
発症には、幼い頃の虐待、強い外傷的ショックなど、心的な傷を残すような出来事が関わっています。そのため、解離性障害においては精神療法や心理療法が行われることがあります。こうした治療を通して症状にうまく対処できるように調整します。
原因
ひとつの原因として、何かしらの心的外傷に曝されることがあります。たとえば、幼少期に身体的虐待や性的虐待を受けていた、愛情をしっかりと受けていなかった、などが原因になることがあります。そのほか、戦争や災害などにおいて突然大きな恐怖を受けることも、解離性障害を発症するひとつの原因になります。
こうした慢性的な恐怖や突然の強い恐怖を感じると、自分の経験として認識するのではなく、あたかも他人がそうした状況に曝されているように感じることでストレスに対応しようとします。ひとつの出来事が生じた際、身体的な感覚、環境、そのときの感情や思考状況などの要素をひとつの経験として感じ取るのが通常の反応です。しかし、解離性障害ではその状況が非常に苦痛であるために、ひとつの感覚として認識せずに自分から分断することで問題に対処するようになります。
このように自分自身を分断させ、あたかも外部から眺めるような形でみる状況は、大人よりも小児において生じやすいです。そのため、幼少期の経験がもとになって解離性障害を発症すると考えられています。
症状
解離性障害は、症状などに基づいて解離性同一障害、解離性健忘、離人感・現実感消失障害などに分類されています。タイプによって症状の出現様式はさまざまですが、心的外傷やストレスに関連した記憶がごっそりと抜け落ちる健忘がみられることがあります。
また、自分自身の感情がまるで自分のものではないように感じられる離人感、体から自分自身が飛び出て離れた場所に自分を感じる体外離脱体験などもあります。そのほか、辛い記憶や感情が突然思い出される、いわゆる「フラッシュバック」を自覚することもあります。離人感や体外離脱体験などは、通常でもときに体験することがある症状ですが、解離性障害を発症すると何度も反復するようになります。
そのほか、記憶がないまま突然まったく知らないところにたどり着く解離性遁走、一人の人のなかにまるで複数の人格(多重人格)があるかのような状態となりお互いが独立して行動する解離性同一性障害などと呼ばれるタイプのものもあります。
こうした解離症状を主体とする解離性障害では、日常生活や社会生活においても支障をきたすようになります。
検査・診断
診断では、解離に関連した症状を詳細に聴取することが重要です。解離性障害における症状は、本人が病識を持っていないこともあります。そのため、より詳細に状況を把握するために、周囲の方から情報を得ることも重要です。
こうして得られた情報をもとに、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DMS-5)などの診断基準に照らし合わせて、診断することになります。
なお、解離性障害の診断の際には、同じような症状をきたす器質的な疾患、薬物の使用などを除外することも重要です。たとえば頭部外傷をきっかけにして症状が出現することもあるため、外傷歴の聴取や頭部CT、MRIなどが検討されることがあります。
治療
解離性障害の発症には、多くの場合、幼少期における心的外傷が深く関連しています。そのため、それに対応するための精神療法や心理療法が治療の中心になります。治療では、自分自身の病状について言葉で表現することで、病気に対する理解を深めることになります。この過程を通して、症状に対する対処方法を身につけます。
なお、治療は長期間継続することが必要であり、患者さんと医療従事者の間に信頼関係が築かれる必要があります。そのため、診療に長けた医療機関のもとで治療を受けることが重要です。
解離性障害を根本的に治すことができる治療薬は存在しませんが、症状緩和を目的として抗うつ薬などの薬物療法が導入されることもあります。
また、解離性障害の治療においては、周囲の方のサポートも重要です。解離症状が生じた際の対処方法を学ぶことや症状の特徴を知ることも、長期的な経過を考えるうえではとても重要なことです。
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