治療
鎖肛の主な治療方法は手術です。手術を行う時期は1期的あるいは2期的の大きく2つに分かれ、病型によって治療方法や治療の時期、治療後の予後などが異なります。
手術の時期
- 1期的……1回の手術で肛門を形成します。多くの場合では新生児期に手術が行われますが、女児では乳児期に行われることもあります。
- 2期的……新生児期に一時的に人工肛門を造設し、数か月の期間を空けて肛門を形成します。
低位型
低位型の場合、1期的手術が選ばれ、新生児期に肛門を形成する手術(経肛門的造肛術)を行うことが一般的です。ただし、女児で腟付近に瘻孔がある場合には、瘻孔を拡張して便の排出路を確保することもあります。また、一時的に人工肛門を造設し、体の成長を待ってから肛門形成手術や腟形成手術(正常な腟の構造にする手術)を実施することもあります。人工肛門とは、腸管の一部をお腹の表面に出して便を排出できるようにする治療法です。一時的な人工肛門は、肛門を形成する手術が完了し、肛門からの排便が可能になった後に閉鎖されます。
中間位型・高位型
中間位型や高位型の場合、直腸の末端が通常の肛門の位置から離れており、肛門や直腸を取り巻く筋肉(恥骨直腸筋などの肛門挙筋や内・外肛門括約筋など)の発達が未熟なことが多いです。そのため、2期的手術が選ばれることが一般的です。治療の第一段階として新生児期に、一時的な人工肛門の造設を行います。この処置により、排便ができるようになり、母乳やミルクからの栄養摂取も可能となります。その後、成長に伴って体重が増え、体が大きくなってから肛門を形成する手術を実施します。
手術方法
- 経肛門的造肛術……肛門の予定部位まで腸を引き下ろす術式。
- 腹会陰式造肛術……お腹側(開腹)と肛門の両方から手術を行う術式。
- 仙骨会陰式造肛術……会陰(尾骨と肛門の間)と肛門から手術を行う術式。
- 腹腔鏡補助下造肛術……腹会陰式造肛術と同様の手術ではあるが、お腹側は腹腔鏡を入れて手術を行う術式。
予後
一般的に、低位型では排便障害が比較的生じにくいといわれていますが、中間位型や高位型では便意(便が肛門まで到達し、便をしたいと思う感覚)を感じられない、もしくは便意がないために、便が肛門まで到達しても気付くことができず、便秘や便失禁(自分の意思とは関係なく便が漏れてしまう状態)といった排便障害が起こることがあります。排便のコントロールができるようになるまでには時間がかかる場合もありますが、医師の指導と家族のサポートの下、適切な排便訓練を行うことで、便を漏らすことなく肛門からの排便が可能になることを目指します。
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