概要
顎関節症とは、口を開け閉めするときに顎関節の音がする、口が開けにくい、あごが痛いなどの症状がみられる病気です。また、これらの症状のほかに頭痛、肩こり、めまい、目の疲れなどの多様な副症状がみられることもあります。
顎関節症は2人に1人が経験するともいわれる非常にありふれた病気です。代表的な症状の1つに顎関節の音がありますが、音だけでほかに症状がない、もしくはあっても一時的であれば特に治療の必要はなく、実際に治療が必要になる人は顎関節症のうち5%程度ともいわれています。顎関節症は日常の無意識の習慣などが原因になっていると考えられており、これらを改善することで症状が自然と軽快することも多いです。
顎関節に何らかの症状がある人の割合に男女差はないものの、医療機関を受診する人は女性が多く、特に若い女性と中年女性が多いとされています。
原因
顎関節症とは顎関節になんらかの症状が現れる状態の総称で、主に以下の4つ状態が含まれます。
- 咀嚼筋痛障害:あごを動かす筋肉に痛みが生じた状態
- 顎関節痛障害:顎関節に痛みが生じた状態
- 顎関節円板障害:顎関節の中の関節円板(顎関節の骨と骨の間にある組織)がずれた状態
- 変形性顎関節症:顎関節を構成する骨が変形した状態
このような状態に至る原因にはさまざまなものがあり、歯のかみ合わせの異常、精神的緊張やストレスによる顎関節への負担、歯ぎしり、食いしばり、頬杖やうつぶせ寝、噛みくせなど日常生活のくせなどがあります。
ただし、これらのうち1つだけが原因になっているわけではなく、発症には複数の原因が絡みあっていると考えられており、まだよく分かっていない部分も多いといわれています。
症状
顎関節症には主に以下の3つの症状があります。
- あごの痛み(顎関節痛、咀嚼筋痛)
- 口が開かない(開口障害)
- あごを動かしたときの音(顎関節雑音)
症状は主に食べ物を噛むときや口を動かすときなどによくみられます。また、あごが外れてしまうこともあります。
どの症状が現れるかは人によって異なり、これらのうち少なくとも1つ以上の症状がみられる場合に顎関節症が疑われます。
ただし、これらの症状は煩わしさはあるものの命に関わったり、日常生活を大きく損ねたりするようなものではありません。
また、これらの代表的な症状のほかにも、頭痛、首、肩・背中などの全身の痛み、めまい、耳鳴り、目の疲れ、鼻づまり、かみ合わせの不調、歯の痛み、飲み込みにくさなど、全身のさまざまな症状を引き起こすこともあります。
検査・診断
顎関節症は、あごの痛み(顎関節痛、咀嚼筋痛)、口が開かない(開口障害)、あごを動かしたときの音(顎関節雑音)のうち少なくとも1つ以上の症状が認められ、ほかの病気が否定される場合に診断されます。
診断は主に問診やあごの動きの検査、あごや周りの筋肉の痛みの検査、X線検査を元に行われ、必要な場合はMRI検査などを行います。
また、何らかの心理的・社会的要因が痛みに関わっていることもあるため、心理テストなどが用いられることもあります。
治療
顎関節症の治療は歯科医による治療とセルフケアがあり、これらを適切に続けることでよくなることがほとんどです。ただし、重症の場合は手術が必要になり、放置するとあごの機能が損なわれてしまうこともあるため、まずは医療機関を受診することが大切です。
歯科医による治療
(1)薬物療法
消炎鎮痛を目的として非ステロイド性抗炎症薬を投与します。
(2)理学療法(物理療法・運動療法)
咀嚼筋のマッサージやホットパックなどを用いて温めます。
そのほか、筋に電気を流して除痛を図ることや、低出力レーザーも効果が期待できます。
筋伸展訓練(ストレッチング)は咀嚼筋を伸展させ、開口を促すことで筋痛や開口制限の緩解を目指します。
(3)アプライアンス療法
スプリントと呼ばれるマウスピースのようなものをあごに入れてかみ合わせを調整し、顎関節が正しい位置に戻るようにします。その後、必要に応じて入れ歯や歯のかぶせ物を装着して、よいかみ合わせを保つこともあります。
*どのような顎関節症状がみられるかで上記の内容を組み合わせて治療を行います。
セルフケア
痛みがある場合はまず安静を心がけ、口を大きく開けたりあごを使いすぎたりしないようにする必要があります。そのほかに、以下の点を心がけることで症状が改善することがあります。
- 硬いものは避け、おかゆ、軟らかい麺類など、かまなくてよい食事を取る
- 顔の筋肉をほぐし、上下の歯が接触しないようにする
- 大きなあくびや長時間の歯科治療など、口を大きく開ける動作は避ける
- うつぶせ寝はしない
- 長時間の同じ姿勢を避ける、猫背やあごを突き出すような姿勢を改善する
- 首をひっぱったり、頬杖をついたりしないようにする
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