概要
食道異物とは、口から飲み込んだものが食道でつかえた状態や、詰まったものそのものを指します。
食道は、飲食物などが胃へ送られる際に通過する細い管で、粘膜の厚みは4mm程度、長さは25~30cmほどです。口から飲み込んだものは通常、食道を通って胃へと到達しますが、食道は入り口、中央部、出口の3箇所が細く狭い構造になっており、それらの部分にものがつかえやすいといわれています。
食道異物はどの年齢でも起こる可能性がありますが、年齢によってつかえるものには異なる傾向がみられます。
原因
食道異物の原因となるものは年齢によって傾向が異なります。
子どもの食道異物
子どもではボタン電池やコイン、おはじきなどの小さなおもちゃなどがよく原因となります。中でもボタン電池を誤飲すると、食道の中で電池の中身が漏れ出し、粘膜が傷ついたり穴が開いたりする(穿孔)などの大きなダメージを負う危険性があるといわれています。また、コインは比較的摘出しやすいものではありますが、同時に複数枚を飲み込んでいるケースもあります。複数枚飲み込んだ可能性がある場合は必ず医師に伝えましょう。
大人の食道異物
食事の際にタイやブリなどの魚の骨を飲み込み、それが粘膜に刺さるケースがあります。
高齢者の食道異物
高齢者では部分入れ歯の誤飲や、薬を誤ってシートごと飲み込むケースがよくみられます。入れ歯も薬のシートも尖っている部分があるため、飲み込むことで食道を傷つける原因となります。
症状
嚥下困難(食べものなどを飲み込みづらくなる)や飲み込む際の痛み、空えづきや嘔吐、胸痛などが挙げられます。異物によって食道が完全に詰まっている場合は、ものを飲み込めなくなるため唾液の分泌が過剰になりますが、唾液を飲み込むこともできない状態が続きます。
また、食道が圧迫されて周囲にある気管や大動脈に異物が刺さると、大量出血につながり命に関わる場合もあります。
検査・診断
食道異物が疑われる際は、まず問診で状況をよく確認します。子どもや高齢者は自分で症状などを説明することが難しいケースもあるため、家族や周囲の人からの情報提供が必要となる場合もあります。
問診の内容などから食道異物が疑われる場合は、画像検査を行います。金属の異物を飲み込んだ場合はX線検査で確認し、ガラスやプラスチックのように金属以外の異物を飲み込んだ際は、CT検査を行います。CT検査では、周辺の臓器と異物との位置関係を立体的に確認できるため、穿孔など重篤な合併症が生じていないかも確認します。
治療
口から入った異物のうち80~90%は自然に外へ排出されるといわれています。しかし残りの10~20%は自然に排出されず、時に命に関わることもあるため、マグネット・カテーテルや内視鏡、手術で取り除きます。
マグネット・カテーテルによる治療
乳幼児が誤飲し、画像検査で金属が確認された場合は、先端に磁石のついたカテーテルを使用して摘出することがあります。
内視鏡治療
内視鏡治療では口から内視鏡(いわゆる胃カメラ)を挿入し、内部を観察しながら異物を取り出します。コインなどであれば麻酔を使用せずに取り出すことも可能です。しかし、誤飲後時間が経過している場合や、つかえている異物が鋭利な場合には、全身麻酔が必要になる場合もあります。
手術治療
つかえている異物が尖っており、内視鏡で無理に取り出そうとすると食道粘膜を傷つける可能性がある場合には手術が検討されます。
手術が検討されるのは、食道異物を含む消化管内異物の中でもおよそ1%程度であるといわれています。
予防
食道異物を予防するには、まず食事に気を付けることが大切です。食べ物や魚の骨などがつまらないよう、よく噛んで、ゆっくり飲み込むことを意識しましょう。飲み込む際に違和感があれば、躊躇せずに吐き出すことも大切です。また、年齢を問わず肉類は小さく切り、魚は骨をしっかり外したうえで食べることを心がけましょう。
子どもや高齢者は特に注意
子どもや高齢者は特に食道異物を引き起こしやすいため、特に注意が必要です。
小さな子どものいる場所では、子どもが口に入れてしまいそうなものは手に触れない場所に片付け、保護者や周囲の人が注意深く見守りましょう。
高齢者は口や喉が乾燥して、ものが引っかかりやすくなるため、薬を飲むときは水や白湯を十分飲むようにしましょう。薬をシートごと飲み込まないよう、シートを1つずつ切り離さず薬を押し出して薬のみを服用するようにするか、薬が多く管理が困難な場合は、かかりつけ医や薬局に一包化*を相談するとよいでしょう。入れ歯の管理にも注意が必要です。
*1回に何種類かの錠剤を服用する場合にそれらを1袋にまとめること。
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