こうあいじーでぃーしょうこうぐん

高IgD症候群

概要

高IgD症候群とは、周期的に繰り返す発熱で特徴付けられる自己炎症性疾患の一つを指します。脂質の一つであるコレステロール代謝に関わる「メバロン酸キナーゼ」と呼ばれる酵素の働きが低下していることが原因であることが判明しています。

メバロン酸キナーゼの働きがどの程度低下しているかに応じて症状は異なり、高IgD症候群はより広い疾患概念である「メバロン酸キナーゼ欠損症」に含まれる疾患名です。 高IgD症候群は難病指定を受けた疾患の一つであり、本邦において10名の患者さんがいらっしゃることが報告されています。

発熱性発作を繰り返す病気であることから、発作時に解熱鎮痛剤やステロイドを使用することが治療の中心として行われることが多いです。

原因

高IgD症候群は、メバロン酸キナーゼと呼ばれる酵素の働きが低下していることが原因として発症します。メバロン酸キナーゼはコレステロール代謝において重要な酵素であり、MVKと呼ばれる遺伝子情報をもとにして作成されます。 体内に広く存在するコレステロールは、食事中に含まれる三大栄養素(糖質、タンパク質、脂質)をもとにして合成されます。

三大栄養素はそれぞれの処理を受けた後に「アセチル-CoA」と呼ばれる物質に変化し、コレステロール合成に使用されます。コレステロール合成はいくつもの酵素反応が関与した経路であり、途中「メバロン酸」から「5-ホスホメバロン酸」に変換されるステップがあります。この反応に関わる酵素のことをメバロン酸キナーゼと呼びます。

メバロン酸キナーゼなどの酵素が協調して働き合成されたコレステロールは、その後ステロイドや胆汁酸などへと変換されます。 メバロン酸キナーゼの産生に重要であるMVK遺伝子に異常が生じると、メバロン酸が蓄積していきます。メバロン酸キナーゼの機能がどの程度まで低下しているかはまちまちであり、臨床症状の重症度とも相関します。

症状が軽い場合を「高IgD血症」、より重症のものを「メバロン酸尿症」とそれぞれ呼び、包括的に「メバロン酸キナーゼ欠損症」と呼ばれます。 高IgD症候群は、「常染色体劣性遺伝」といった遺伝形式をとります。

ひとの細胞の中にMVK遺伝子は2つ存在していますが、父親と母親からそれぞれ1つずつ受け継いでいます。1つのMVK遺伝子に異常が存在する場合、残りの1つが正常な酵素機能を代償することができるため病気を発症することはありません(ただし病気の保因者にはなります)。

一方、両親ともが1つずつ異常なMVK遺伝子を有する場合、理論的に25%の確率でお子さんが異常なMVK遺伝子を2つ有することになり、結果として病気を発症することになります。そして、50%の確率でお子さんが病気の保因者になります。

症状

高IgD症候群は、乳児期の頃から始まる周期的な発熱発作が特徴的です。一回の発熱は5日前後持続することが多く、一度解熱をしても一定期間を置いた後に同様の発熱発作を繰り返します。

発熱発作は、ワクチンや感染症、心理的なストレスなどを誘因として引き起こされることがあります。発熱発作には倦怠感や悪寒、腹痛、リンパ節の腫脹、発疹、関節の腫れや痛みなどを伴うことがあります。さらに頭痛や嘔吐、下痢、口内炎なども随伴しうる症状です。

高IgD症候群は慢性的に炎症を繰り返す疾患であることから、アミロイドーシスや腹腔内の癒着を来すことも稀ながらあります。アミロイドーシスでは心不全不整脈などを引き起こすことがありますし、腹腔内の癒着と関連して慢性的な腹痛に悩まされることもあります。 

検査・診断

高IgD症候群では、発熱発作が生じている時に血液検査にてCRPと呼ばれる炎症反応を確認することになります。発熱発作は一度で終了するのではなく、何度も繰り返すことを確認することも重要です。

臨床症状・経過から高IgD症候群が疑われる時には、MVK遺伝子異常の有無を確認するための遺伝子検査が行われることになります。2つあるMVK遺伝子のうち、療法の遺伝子に異常がある場合には病気の確定になります。

しかし1つのMVK遺伝子で異常を見る場合であっても、発熱発作時に尿中のメバロン酸が高くなっていることが確認できる場合にも診断することが可能です(メバロン酸キナーゼの活性が低下することで、体内に蓄積したメバロン酸が尿中に排泄されるためです)。

さらに遺伝子検査で原因となりうる遺伝子変異が指摘できない状況でも、発作時の尿中メバロン酸が高い、メバロン酸キナーゼの活性が低下している場合にも高IgD症候群と診断することになります。

治療

高IgD症候群の治療では、発熱発作が生じる毎に解熱鎮痛剤やステロイドを使用することになります。原因となるMVK遺伝子がコレステロール代謝に深く関わる疾患であることから、高脂血症で使用される「スタチン」と呼ばれる内服薬が硬化を示すこともあります。その他、抗IL-1製剤や抗TNF-α製剤といった生物学的製剤が治療に使用される場合もあります。

高IgD症候群の患者さんとご家族の方へ

高IgD症候群でよりよい治療を行うためには、普段のご自身の症状や状態、治療の希望を医師にしっかりと伝えることがとても大切です。

「治療ノート」では、毎日の体温や痛み、皮疹などの症状、気になることや困りごとをスマートフォンやパソコンで簡単に記録することができます。

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