治療
鼻骨骨折を放置すると、1~2週間ほどで折れた形のまま自然にくっついてきます。そのため、2週間以内をめどに“徒手整復”という、折れた骨を正しい位置に戻す治療を行う必要があります。徒手整復は皮膚や粘膜を切り開く必要がなく、短い時間で行うことができます。一方で、長期間放置された変形を治療する場合は骨切り術や骨の移植など、より大がかりな手術が必要となることもあります。
なお、骨の変形の程度が小さい場合や患者さん自身が変形を気にしない場合では、治療を行わないことがあります。
徒手整復
骨折直後の場合は、局所麻酔あるいは全身麻酔をかけ、折れた骨を外側から触れながら、鉗子という器具を鼻の中にいれて、陥没した鼻骨を元の位置に戻す処置(整復)を行います。医療機関によっては、より正しい位置へ骨を移動させるために超音波検査で観察しながら処置を行うこともあります。
治療そのものにかかる時間は10~20分程度とされています。一般的に速やかに行うべき治療ですが、腫れが強い場合はある程度落ち着いてから治療を行います。整復後は、鼻の穴の中にガーゼを入れ、外側にギプスを当てることで、鼻の内側・外側の両方から固定します。
徒手整復時の麻酔の種類
麻酔は局所麻酔、全身麻酔それぞれに特徴があるため、医師とよく相談して決定することが大切です。どちらの方法でも治療の結果や患者さんの満足度に大きな差はないとされています。
局所麻酔では、一般的に麻酔薬を浸したガーゼを鼻の穴の中に入れて30分~1時間ほど放置することで麻酔を効かせます。日帰りで治療を行うことができる一方で、麻酔の処置や治療中に痛みを感じることがあります。
全身麻酔の場合は、2泊3日程度の入院が必要となりますが、治療中の痛みがなく、骨折の状態によってはより正確に整復できる可能性が高まります。特に子どもでじっとしていることが難しい場合や、治療に対する不安が大きい方の場合には全身麻酔を検討することが一般的です。
治療後の注意点
治療後1か月程度は、再変形を防ぐためにもぶつけないよう配慮する必要があります。
鼻の中のガーゼは3~7日程度入れたまま固定しておきましょう。
ギプスは、一般的に1週間程度で外すことが可能となります。それ以前であってもテープによって取り外しができるため、シャワーを浴びる際や洗顔の際は一時的に外すことができます。ギプスが完全に取れるまで運動は控えるようにしましょう。
そのほか、入浴や飲酒は血流がよくなり出血や痛みの原因となるため、治療後1週間程度は控える必要があります。
また、骨折の状態によっては鼻をかむと鼻血をきたすこともあるので鼻をかまないように注意する必要があります。
手術
骨折から1か月以上経過している場合は、鼻骨が変形した状態で癒合し、徒手整復が困難となることがあります。その場合は、皮膚を切開して変形した骨を切ったり、ほかの部位から骨を持ってきて移植したりする手術も検討されます。
また、骨折から2週間以内でも鼻の変形が大きい場合や徒手整復後に鼻の変形が残った場合には手術が検討されることがあります。
これらの治療を行う場合は、基本的に入院や全身麻酔が必要となり、体にかかる負担も大きくなります。
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