びこつこっせつ

鼻骨骨折

概要

鼻骨骨折(びこつこっせつ)とは、鼻の上半分に位置する“鼻骨”が何らかの衝撃で折れることです。鼻骨は、上顎骨から立ち上がるようにして盛り上がった形をした骨で、肘が当たるなどの軽い衝撃でも骨折することがあります。

鼻骨骨折は、“顔面骨骨折*”の中でも最も発生頻度が高いといわれています。骨の折れ方によって、鼻が左右いずれかに曲がる“斜鼻型(しゃびがた)”と、陥没してしまう“鞍鼻型(あんびがた)”に分けられ、一般的に斜鼻型の発生頻度のほうが高いと考えられています。

折れた状態のまま放置していると、1~2週間程度で骨が曲がった状態のまま固定され(癒合(ゆごう))、歪んだ見た目になることがあります。また、鼻のとおりが悪くなることもあるため、速やかに医療機関を受診し治療を受けることが大切です。

*顔面骨骨折:顔の骨が折れること。骨折した部位に応じて、鼻骨骨折、頬骨(きょうこつ)骨折、頬骨弓(きょうこつきゅう)骨折、下顎骨(かがくこつ)骨折、眼窩底(がんかてい)骨折などに分けられる。

原因

鼻骨骨折の主な原因は、外部からの衝撃です。殴られたり、ぶつかったり、転んだりして鼻を打ったときに生じます。また、鼻骨は非常に薄いため、軽い衝撃でも折れてしまうことがあります。

症状

鼻骨骨折が起こると、多くの患者さんでは鼻血が出ます。また、折れた場所を押さえると強い痛みを感じ(圧痛)、当たった部位が腫れることが多いです。骨折直後は顕著な鼻の変形が確認できることが一般的です。鼻の変形は斜鼻型であれば“くの字”に見え、鞍鼻型であればへこんで見えます。骨折から1週間ほど経つと鼻の腫れがとれ変形が分かりやすくなることもあります。

さらに、鼻のとおりが悪くなって鼻づまり(鼻閉)や、嗅覚障害が現れる場合もあります。骨折の原因となった衝撃が強い場合、すぐ横にある眼窩の骨が骨折し複視や眼球の運動障害が出ることもあります。

検査・診断

鼻骨骨折が疑われる場合は、視診や触診に加えて、画像検査を行い確定診断とすることが一般的です。X線検査やCT検査が有効で、特にCT検査は骨の折れ方を詳しく把握でき、治療に役立てられるほか、頭蓋内にダメージがないかを確認できます。ただし、ときにCT検査でも骨折の詳細が分かりにくいという例もあります。

治療

鼻骨骨折を放置すると、1~2週間ほどで折れた形のまま自然にくっついてきます。そのため、2週間以内をめどに“徒手整復(としゅせいふく)”という、折れた骨を正しい位置に戻す治療を行う必要があります。徒手整復は皮膚や粘膜を切り開く必要がなく、短い時間で行うことができます。一方で、長期間放置された変形を治療する場合は骨切り術や骨の移植など、より大がかりな手術が必要となることもあります。

なお、骨の変形の程度が小さい場合や患者さん自身が変形を気にしない場合では、治療を行わないことがあります。

徒手整復

骨折直後の場合は、局所麻酔あるいは全身麻酔をかけ、折れた骨を外側から触れながら、鉗子(かんし)という器具を鼻の中にいれて、陥没した鼻骨を元の位置に戻す処置(整復)を行います。医療機関によっては、より正しい位置へ骨を移動させるために超音波検査で観察しながら処置を行うこともあります。

治療そのものにかかる時間は10~20分程度とされています。一般的に速やかに行うべき治療ですが、腫れが強い場合はある程度落ち着いてから治療を行います。整復後は、鼻の穴の中にガーゼを入れ、外側にギプスを当てることで、鼻の内側・外側の両方から固定します。

徒手整復時の麻酔の種類

麻酔は局所麻酔、全身麻酔それぞれに特徴があるため、医師とよく相談して決定することが大切です。どちらの方法でも治療の結果や患者さんの満足度に大きな差はないとされています。

局所麻酔では、一般的に麻酔薬を浸したガーゼを鼻の穴の中に入れて30分~1時間ほど放置することで麻酔を効かせます。日帰りで治療を行うことができる一方で、麻酔の処置や治療中に痛みを感じることがあります。

全身麻酔の場合は、2泊3日程度の入院が必要となりますが、治療中の痛みがなく、骨折の状態によってはより正確に整復できる可能性が高まります。特に子どもでじっとしていることが難しい場合や、治療に対する不安が大きい方の場合には全身麻酔を検討することが一般的です。

治療後の注意点

治療後1か月程度は、再変形を防ぐためにもぶつけないよう配慮する必要があります。

鼻の中のガーゼは3~7日程度入れたまま固定しておきましょう。

ギプスは、一般的に1週間程度で外すことが可能となります。それ以前であってもテープによって取り外しができるため、シャワーを浴びる際や洗顔の際は一時的に外すことができます。ギプスが完全に取れるまで運動は控えるようにしましょう。

そのほか、入浴や飲酒は血流がよくなり出血や痛みの原因となるため、治療後1週間程度は控える必要があります。

また、骨折の状態によっては鼻をかむと鼻血をきたすこともあるので鼻をかまないように注意する必要があります。

手術

骨折から1か月以上経過している場合は、鼻骨が変形した状態で癒合し、徒手整復が困難となることがあります。その場合は、皮膚を切開して変形した骨を切ったり、ほかの部位から骨を持ってきて移植したりする手術も検討されます。

また、骨折から2週間以内でも鼻の変形が大きい場合や徒手整復後に鼻の変形が残った場合には手術が検討されることがあります。

これらの治療を行う場合は、基本的に入院や全身麻酔が必要となり、体にかかる負担も大きくなります。

最終更新日:
2025年10月07日
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2025/10/07
更新しました
2017/04/25
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