概要
場面緘黙症とは、言葉を話す能力は備わっているにもかかわらず、学校や職場など特定の場所・状況において話すことができなくなる状態を指します。通常は5歳までに発症し、幼児期から小学校低学年で気づかれることが多く、「場面緘黙」と呼ばれることもあります。また、時点有病率は0.03%~1%とされます。
場面緘黙症は、情緒障害*のひとつに含まれていますが、障害として認識されにくい面もあります。そのため、人見知りや恥ずかしがり屋と間違われたり、周囲の方から心ない言葉をかけられたりして傷つくこともあります。
*情緒障害…情緒の現れ方が偏っていたり、激しかったりする状態を自分の意志でコントロールできないことが継続するため、学校生活や社会生活に支障をきたす状態
原因
場面緘黙症は、さまざまな因子が複合的に関与しあうことで発症すると考えられています。
具体的には、不安になりやすいなどの元来の気質に加えて、社会的・文化的・心理的な要因が発症に関与していると考えられています。また、不安に対処することに慣れていないことも症状を誘発する原因となります。
ただし、場面緘黙症は過保護、過干渉な養育と関連する可能性や、社会不安障害(いわゆる対人恐怖)と遺伝的に類似しているという点が指摘されています。
症状
場面緘黙症では、家庭で家族とは話ができるのに学校や仕事先など特定の場所・状況で話すことができなくなります。
言葉を発することができないだけでなく、表情や身振り手振りといった非言語コミュニケーションもうまく表出することができなくなり、通常、活動も乏しくなります。
社会生活を送るうえでコミュニケーションがうまくとれないため、学校・職場での生活が著しく障害されてしまい、他人との関係性に大きな支障が生じます。
検査・診断
場面緘黙症の診断は、症状の項目で記載したような内容を詳細に評価することでなされます。具体的には、他の状況では話すことができるにもかかわらず、特定の場面・状況では話すことができず、それによって学校・職場での生活や他人との関係性に大きな支障が生じていることを確認します。
また、診断の際には、特定の場所や状況で話ができない状態が1か月以上持続していること、また、自閉症性障害、統合失調症などのほかの精神疾患への罹患によって説明できないことを確認します。
治療
場面緘黙症の治療においては、社会的な環境において本人が感じる不安を軽減していけるような対策を講じることが重要となります。
具体的には、認知行動療法(小児に対しては遊戯療法)といった治療方法を取り入れ、社会的場面において自信を持って話ができるように促します。
この際、できる範囲で小さく目的を細分化し、少しずつでも目標を達成できたらそれを評価し支持するようにすることが大切です。
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