DOCTOR’S
STORIES
患者さんの思いを大切にした不妊治療を提供する小島 加代子先生のストーリー
私が中学生だった時、佐賀県に佐賀医科大学(現:佐賀大学医学部)が設立されました。幼い頃から“人の役に立ちたい”と将来を夢見ていたので、医学部へ入学し医師になって、世の中の人の役に立ちたいと強く思ったのです。両親も、「あなたが頑張るなら応援する」と言ってくれたので、夢に向かってまっすぐ突き進みました。
手術に携わる外科系の診療科で働きたいと思い、産婦人科を選択しました。当時の産婦人科は周産期医学(妊娠や分娩)、婦人科腫瘍学(婦人科がん)、生殖内分泌学(不妊症やホルモン)を3本柱*として成り立っていましたが、妊娠や婦人科がんは多くの病院で診ることができるものの、不妊症の治療を行う病院はほんのわずかでした。そのため、不妊症の患者さんには紹介状を書いて専門の病院へ紹介していたのです。
当時の私は大学病院で働く産婦人科医。市民の皆さんへ不妊治療をできないのは「申し訳ない、悔しい」と感じ、なんとかしたいと思うようになりました。
産婦人科:周産期医学(妊娠や分娩)、生殖内分泌学(不妊症やホルモン)、婦人科腫瘍学(婦人科がん)などを3本柱としていたが、近年、4つ目の柱として女性医学が注目されている
当時、不妊治療として体外受精に取り組んでいたのが、神奈川にある東海大学医学部付属病院でした。可能であればそこで学びたいと思っていたところ、ありがたいことに、私の恩師である
あのとき、杉森教授をはじめとする多くの先生方が「行ってこい」と背中を押してくださったおかげで、素晴らしいチャンスに恵まれたと思います。
その後、東海大学医学部付属病院での1年間の研修を経て、佐賀医科大学へ戻り、不妊外来を始めたのです。
いざ、大学病院で不妊外来を始めようとすると、あらゆる壁にぶつかりました。
1つ目は日程です。不妊治療を行う患者さんはいつ排卵があるか分からないため、月曜日から土曜日、ないしは日曜日まで外来を開けられることが望まれます。ところが、同院の産婦人科は月、水、金が外来日で、毎日外来診療を行うことができませんでした。これは不妊外来の運営において大きな問題でした。
そこで、杉森教授と高木病院の理事長、副理事長(現理事長)が相談され、佐賀医科大学の関連病院として、高木病院で不妊治療を始めようという話になったのです。
恩師である杉森教授と元理事長の
普段の診療で心がけていることは“患者さんの思いを大切にすること”です。不妊治療を行う患者さんは、ストレスや悩みを抱えながら治療をされています。そのため、患者さんがどうしたいのかをきちんと傾聴しながら、治療方針を決めていかなければなりません。患者さんの中には体外受精はしたくない、という方もいらっしゃいますので、医師として、体外受精の妊娠の確率などをお伝えしつつ、最後にはご本人の思いを尊重するようにしています。
私自身、医師として長く仕事に没頭してきましたが、37歳で出産を経験し、そこから人生が大きく変わりました。子どもからたくさんの幸せをもらったと思います。そんな自分の経験も踏まえて、子どもが欲しいと思っている患者さんみんなの願いをかなえるお手伝いをしたい。そう心から思っています。
当院で不妊治療を始めたばかりの頃、なかなか赤ちゃんができない患者さんがいらっしゃいました。おつらい気持ちもあったはずですが、その方はくじけることなく、私たちを信じてついてきてくださいました。何度も顕微授精を重ねた結果、めでたく赤ちゃんを授かられたときは、本当に嬉しかったです。お産で入院された際に、「よかったね」と繰り返し声をかけましたね。その方は、当院において顕微授精で妊娠した患者さん第一号でした。
また、過去に当院で不妊治療に取り組まれるものの、残念ながら赤ちゃんを授かることのなかった患者さんが、その後も笑顔で人間ドックを受診してくださったり、20年ぶりに会った患者さんがお声をかけてくださったりすることがありました。
「その節は本当にお世話になりました。子どもはできませんでしたが、あの時できる限り頑張ったので、悔いはありません」と言われたときは、感動のあまり、思わずその方の手をぎゅっと握りしめてしまいましたね。
妊娠したときの患者さんの喜ぶ顔は、筆舌に尽くし難いほど嬉しいものです。できるならば赤ちゃんを望む全員のもとへいのちが宿ってほしい。そう思いながら日々働いています。
29歳の頃、不妊治療を学びたい一心で東海大学付属病院に研修へ向かい、1年後、得た知識とともに帰ってきました。その後は治療に適した環境を求めて、高木病院で不妊治療ができる環境を作り始めました。今思えば、全ての取り組みがゼロからのスタートだったのだと感じます。
ここまでくることができたのも、二人三脚で働いてきた
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高木病院
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