インタビュー

「足の慢性的な傷」の治療―治療法と再発の予防

「足の慢性的な傷」の治療―治療法と再発の予防
日吉 徹 先生

日本赤十字医療センター 糖尿病内分泌内科 部長

日吉 徹 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2015年05月03日です。

糖尿病などの基礎疾患がある患者さんは、傷が慢性化しやすくなります。足の慢性的な傷とは何かについては別記事「足を切断しないために」で、またその検査については「『足の慢性的な傷』の検査」で詳しく説明しました。では、こうした傷の治療では、どのようなことを行うのでしょうか。「足の慢性的な傷の治療」を専門とされる日本赤十字社医療センター・創傷ケアセンター長の日吉徹先生にお話をお伺いしました。

足の傷の治療法は、足の血流が良い場合と悪い場合の2つに分けられます。血流が悪い場合には、まず血流を改善する治療を行います。

足の血流が良い場合には、「デブリードマン」という施術を行い、汚い組織を取り除きます。デブリードマンは壊死組織を取り除き肉芽形成を促すほかに、あえて出血をさせて血液(血小板)に含まれる成長因子を引き出す効果があります。つまり、「慢性」の状態を「急性」に変え、早期治癒を促すのです。

例えば直径2cmほどの潰瘍が足にできている場合、周りの硬くなった角質と真ん中の汚い組織をハサミで取り除き、平らに綺麗にします。傷口部分が外部と当たらないように除圧する(体重がかからないようにする)と、おおよそ1か月程度で治ります。

外科的デブリードメント
外科的デブリードメント

技術的な問題などでデブリードマンができない場合には、汚い部分を溶かす軟膏を用いる方法や、虫に食べさせるような方法が取られることもあります。また、感染症を起こしている場合には抗生物質が投与されます。

血流が悪い場合は、外科的にバイパス術を行って血管をつないだり、カテーテルによる血管拡張術を行うことによって、まず血流を良くすることを目指す治療を行います。血流が良くなったら、前項で述べた「デブリードマン」を行い、早期の治癒を促します。この際、SPP(別記事参照)が40以上で血流が良くなったという目安になります。

慢性の足の傷は、正しく治療をすれば3か月で症例の7割程度が治るとされています。ただし、治療開始から1か月で半分以上治らない傷は完治しないとも言われています。例えば「4週間で傷の53%以上が縮小しない症例では、12週間で治るのは症例全体の9%にすぎない」というデータもあります。このように、足の創傷治療は、初めの1か月でおおよその目処がつくとされています。

慢性的な足の傷は、一度治っても基礎疾患(足の傷の原因となっている病気)の影響で再発しやすいです。足に治療が必要な患者さんは3年で55%再発してしまうと言われています。また、糖尿病の患者さんの中でも、透析の患者さんは動脈硬化がひどい場合が多く、深刻化しやすい上に再発もしやすくなります。1度足に傷ができたことのある患者さんは、治ったと思っても安心せず、普段からよく自分の足を見ておくことが大切です。

血流障害がもとで傷が慢性化してしまうので、予防として血流改善を行うために、抗血小板作用がある薬(シロスタゾールやリマプラストなど)を内服することがあります。ただ、血流が改善すれば足の潰瘍が起きないと捉えられがちですが、全ての足の潰瘍が血流障害から起きているわけではないので、その点には注意が必要です。さらに、傷を作らないために日頃からの下記のような注意が必要です。

  • 適切な靴やインソールの使用:(タコ・魚の目・靴ずれの予防。内履きが必要な場合もある)
  • 皮膚の乾燥やトラブル(タコ・魚の目・水虫)、熱傷(やけど)等への注意
  • 足爪のケア(爪切りの際、深爪をしない)

記事1:足を切断しないために―「慢性的な傷」って? 注意点は?
記事2:「足の慢性的な傷」の検査―どんな種類があるの?
記事3:「足の慢性的な傷」の治療―治療法と再発の予防

受診について相談する
  • 日本赤十字医療センター 糖尿病内分泌内科 部長

    日吉 徹 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    関連記事

  • もっと見る

    「糖尿病足病変」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。