糖尿病などの基礎疾患がある患者さんは、傷が慢性化しやすくなります。足の慢性的な傷の治療がどのようなものなのか、ということについては、「足を切断しないために」で詳しく説明しました。では、具体的な足の慢性的な傷の検査では、どのようなことを行うのでしょうか。「足の慢性的な傷の治療」を専門とされる日本赤十字社医療センター・創傷ケアセンター長の日吉徹先生にお話をお伺いしました。
足の慢性的な傷に対して行う検査には、以下のようなものがあります。
ABIは、最も一般的な検査です。ABI検査(足関節上腕血圧比)とは、足首と上腕の部分の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算したものです。動脈硬化(アテローム硬化)の進行程度や血管の狭窄(すぼまって狭くなること)や閉塞(閉じてふさがること)などの推定に、広く一般的に使われています。
通常、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると足首のほうがやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があるとその部分の血圧は低下します。こういった動脈の狭窄や閉塞は主に下肢(脚の部分)の動脈に起きることが多いため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度がわかります。ABIの値が1より大きい場合、足にきちんと血流が流れているという目安になり、0.9を切ると足の血流が悪いとされます。糖尿病の患者さんの約1割は、この値が0.9を切っていると言われています。
CTアンジオとは、造影剤(画像診断の効果を向上させるための薬剤)を用いながらCTスキャンで画像撮影をすることを言います。足全体の中で、どこの血流が悪いかをチェックします。しかし糖尿病になると、腎不全が進んでおり造影剤が使えない時があります。また、CTアンジオでは患部や足の爪先などの画像診断ができない場合があります。その場合には、下記のSPPが有効です。
SPP(skin perfusion pressure)とは皮膚灌流圧(ひふかんりゅうあつ)とも言い、皮膚直下の血流を検査する装置です。まず、マンシェット(血圧を測るときに用いる、空気を注入して腕などを締め付けるための袋帯)で強く圧をかけることで、血流を途絶えさせます。一旦途絶えたら、今度はマンシェットを緩めます。緩めていった地点から血液が流れ始めるので、その時点での血圧を測るという仕組みです。SPPの値は40mmHgが血流の良し悪しの目安とされています。SPPが40mmHg以上あると、傷が治る確率が高く、それより低いと傷が治りにくいというデータが出ています。
このような傷の治療法については、別記事で詳しく説明します。
記事1:足を切断しないために―「慢性的な傷」って? 注意点は?
記事2:「足の慢性的な傷」の検査―どんな種類があるの?
記事3:「足の慢性的な傷」の治療―治療法と再発の予防
日本赤十字医療センター 糖尿病内分泌内科 部長
日本赤十字医療センター 糖尿病内分泌内科 部長
日本内科学会 総合内科専門医日本糖尿病学会 糖尿病専門医日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・内分泌代謝科指導医
内分泌・糖尿病科を専門とする一方で、日本で数少ない創傷ケアセンターの一つでセンター長を務める。創傷ケアセンターでは傷が3カ月以上治らない慢性的な状態で、特に足に傷を負った患者さんを対象にしている。しかし、同様の医療機関はまだ広くは普及しておらず、形成外科、皮膚科、循環器科など各診療科で個別に診療しており、横断的に診療できる施設が少ないのも現状である。放っておくと深刻な状態になる足の傷に対して高い専門性を持ち、患者さんの足をなるべく切断しないような治療を行っている。
日吉 徹 先生の所属医療機関
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