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赤ちゃんや子どものてんかんの基礎知識-小児てんかんの原因と種類、治療法
赤ちゃんから高校生までの子ども時代にみられる「小児てんかん」。様々な病名や発作の現れ方、治療法があり、小児てんかんのお子さんを持つご家族も膨大な情報に戸惑ってしまうことがあるでしょう。本記事では...
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赤ちゃんや子どものてんかんの基礎知識-小児てんかんの原因と種類、治療法

公開日 2016 年 06 月 20 日 | 更新日 2017 年 12 月 20 日

赤ちゃんや子どものてんかんの基礎知識-小児てんかんの原因と種類、治療法
岡西 徹 先生

聖隷浜松病院てんかんセンター/小児神経科主任医長

岡西 徹 先生

赤ちゃんから高校生までの子ども時代にみられる「小児てんかん」。様々な病名や発作の現れ方、治療法があり、小児てんかんのお子さんを持つご家族も膨大な情報に戸惑ってしまうことがあるでしょう。

本記事では、聖隷浜松病院小児神経科主任医長で聖隷浜松病院てんかんセンターでの診察を担当されている岡西徹先生に、小児てんかんの基礎知識や4つの治療法についてご解説いただきました。

「てんかん」と「てんかん発作」-てんかんの基礎用語

てんかんは小児にも大人にも起こりうる病気です。そして大変ややこしい病気であり、我々専門医にとっては医師同士でもなかなか理解してもらえず苦労することも多い病気です。

第一にややこしいのは「てんかん発作」と「てんかん」という言葉です。

「てんかん発作」とは症状の名前です。突然起きる脳の異常な興奮状態により、意識がなくなったり、手足が勝手に動いたり、倒れてしまったりしまう症状を指します。一般的なてんかん発作のイメージとして語られやすいのは、倒れて全身がガクガクふるえるタイプの発作ですが、これはてんかん発作の中では一番大きなタイプのものです。

一方、「てんかん」は病気の名前です。てんかん発作をいつ何時起こしてしまうかわからない慢性の状態を指しています。多くは2回以上のてんかん発作を離れた時期に起さなければ、てんかんと診断されません。

てんかん発作の頻度は毎日何十回もあるひともいれば、年に1回のひともいます。しかし、頻度がたとえ少なくとも発作をいつ起こすか予測困難なため、生活の制限が大きくなされる病気です。今回は小児てんかんについてお話しします。

赤ちゃんから高校生の間に発症する-小児てんかんと大人のてんかんの違い

小児てんかんは、言い換えると赤ちゃんから高校生の間に発症するてんかんのことです。てんかんの発症時期はこの時期と老人期に二つのピークがありますので、小児てんかんはその前者のてんかんとなります。

老人期のてんかんは、加齢による血管障害などで脳に傷がついて発症することが多いのに対して、小児てんかんは遺伝子の異常、産まれるときの仮死、先天的な脳腫瘍や脳奇形や代謝疾患など発症原因がさまざまです。小児てんかんの診療の難しさはそこにあり、ひとくくりにしにくい病像があります。

特発性・症候性・潜因性によるてんかんの分類

特発性・症候性・潜因性とてんかんを分ける方法には歴史があり、専門医のなかでも好まれて使われる分類方法です。

【特発性てんかんの原因と特徴-成長に従い自然に治ることも多い】

「特発性てんかん」とは、原因が遺伝子によるものであり、比較的内服治療がよく効くものを指します。一部のてんかんは一定の年齢になると治ってしまいます。特発てんかんはすべて「○○てんかん」とか「△△症候群」というサブタイプの名前がついています。

この中に入るてんかんとしては、「中心側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん(ローランドてんかん)」「パナイオトポロス症候群」「小児欠神てんかん」「若年欠神てんかん」「若年ミオクロニーてんかん」「覚醒時大発作てんかん」と呼ばれるものが比較的頻度が高いものとして挙げられます。これらのサブタイプの病名は患者さんとご家族は把握しておいた方がよいでしょう。

【症候性てんかんの原因と特徴-手術の適応になりやすい】

「症候性てんかん」は何かの原因があり、二次的に起きたてんかんを指します。多くはMRIなどの画像検査で異常が認められるものを指します。脳奇形、脳腫瘍、脳出血や脳梗塞、赤ちゃんの時の仮死や低血糖などによるものはここに入ります。これらも内側側頭葉てんかん(海馬てんかん)、レノックス・ガストー症候群など特定のサブタイプの名前がつく事があります。

発作を薬では抑えきれないことも多く、発作が薬で抑えられているひとであっても、年齢に伴い自然に治ることは稀なので、薬を飲み続けなければならないことが多く、手術の適応になりやすいてんかんです。

【潜因性てんかんの原因と特徴-原因がわからない子どものてんかん】

「潜因性てんかん」は、特発性と症候性のどちらでもないてんかんということになります。特定のサブタイプの名前もつかず、画像などの検査でも異常が認められないものです。とはいえ、何らかの原因があるからこそてんかんになっているわけですので、原因がいつの日かわかるまでの“暫定措置の分類”ということになります。

子どもの中でも年齢が低ければ自然に治ることも多いのですが、中学生以降の子どもだと自然には治りにくく、薬を飲み続けなければならない傾向があります。

てんかん発作の分類-部分発作と全般発作

小児も成人も、てんかん発作の症状は基本的に同じです。てんかんの分類同様、てんかん発作の分類も非常にややこしく、何度も作っては見直されています。一般の方にもわかりやすいと思われるのは次の分類方法です。

【部分発作とは】

部分発作はけいれんの動きが伴わずに意識がなくなるだけか、もしくは意識がなくなる・なくならないに関わらず、けいれんの動きが顔や手足の一部のみに限定して出てくる発作です。意識がなくならないものを単純部分発作と呼び、意識がなくなってしまうものを複雑部分発作と呼びます。この発作の最中は脳の一部のみで異常興奮を起している状態になっています。

【全般発作とは】

動作が突然止まって意識がなくなるだけの欠神発作、四肢をすべて巻き込んで力が入ったり、ガクガクさせる大きな発作があります。この大きな発作が、一般的なてんかん発作としてイメージとされるものではないでしょうか。全般発作の最中は脳全体が興奮状態にありますので、発作が終わった後はとても脳が疲れた状態になり、数時間は眠ることも多いです。

部分発作から始まり全般発作になることもあり、これを二次性全般化といいます。この場合に治療に役立つ情報は、実は「部分発作の時の症状」です。大きな発作であっても、始まりの症状をより詳しく覚えていただいて外来で教えていただくと、我々は脳のどこから発作が起きたかわかりますので大変助かります。

子ども特有のてんかん発作、てんかん性スパスムとは?

この2つの分類のどちらにも分けにくい、小児に特有のてんかん発作に、てんかん性スパスムというものがあります。これは1~3秒程度の短時間、体をクッと前に曲げる発作です。サブタイプのてんかん病名としては「点頭てんかん」(West症候群)がスパスムを出す代表的なてんかんです。

お子さんの発作を動画で記録することが治療に役立つ

これだけの分類だけでもちょっと混乱してしまわれるかもしれませんが、てんかんの診療を知る上では避けることができません。

先ほどお話しした特発性・症候性・潜因性の分類も、部分発作と全般発作の分類も、治療に役立つため重要なのです。

最近は携帯電話やスマートフォンの動画撮影機能で発作を記録できるようになったおかげで、外来で患者さんのご家族と確認し合うことが容易になりました。動画は大変貴重な情報ですので、余裕があった場合には是非記録しておいて下さい。

小児てんかんの治療法-まずは抗てんかん薬を使用する

小児てんかんの治療法は以下の4つが基本です。

  1. 内服治療
  2. 手術療法(開頭手術)
  3. 迷走神経刺激療法
  4. ケトン食療法

てんかん治療は、何を置いてもまずは「内服治療」です。患者さんには、「抗てんかん薬」と分類されるお薬を内服していただきます。

多くのてんかんの患者さんは、この内服治療でてんかん発作が止まると考えてください。基本的には副作用が少なく、効果がありそうな薬から選びます。先ほどお話ししたてんかんの分類とてんかん発作の分類を組み合わせながら、患者さんに適した薬を導き出して処方します。

たとえば「中心側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん」では、カルバマゼピン、レベチラセタム、バルプロ酸などが比較的よく使用されていますし、発作タイプでは「部分発作」にはレベチラセタムやカルバマゼピンがよく使用されます。まだ年齢での保険適応の制限もありますが、近年、ペランパネルやラコサミドといった新しい薬が登場し、使用されつつあります。「全般発作」にはバルプロ酸やラモトリギン、レベチラセタムを我々の施設ではよく使用しています。部分発作、全般発作とも、発作が止まりにくいときにはトピラマートやゾニサミドはよい薬です。基本的には長く飲むことになる薬なので、どのお薬を使うときもそれぞれの薬に起きうる副作用に注意しながら使用します。

薬は原則有効な量の最低量から始めて、発作が残っていればそれぞれの薬で最大量まで試します。できるだけ同時に飲み続ける種類は少なくし、副作用を最低限に抑えます。

子どものてんかんで手術を考慮するときとは?

薬を3~4種類試しても効果がなく、かつ症候性か潜因性のてんかんであれば手術治療も考慮します。手術と聞くと患者さんが怖くなるのも当然なのですが、てんかん発作が繰り返し出ることで知能が下がったり、行動異常を起こしたりすることもあります。生活や学業、仕事に重大な制限がかかる場合もありますので、手術の経験が豊富な病院のてんかん専門医に相談することを強くお勧めします。

もし専門医から手術を勧められても最終的に決定するのは患者さんとご家族ですから、相談すること自体を迷う理由はありません。我々は患者さんの病像だけでなく、生活像全体と患者さんや家族の考え方、価値観も考慮して治療方針を一緒に考えるのが仕事であると考えています。

残念ながら日本はてんかん外科が先進国の中で非常に遅れてしまった国で、社会だけでなくてんかんを診る医師の間でも外科治療は十分には理解されていない治療法です。

(関連記事:「てんかんは手術で治る?」 聖隷浜松病院てんかんセンター副センター長 藤本礼尚先生)

開頭しないで治療できる「迷走神経刺激療法」とは

迷走神経刺激療法は、心臓のペースメーカーのような機械を左胸に埋め込み、頚部の迷走神経という神経につなげて刺激する方法です。開頭手術よりは効果は劣りますが、手術の負担は少ない治療法です。

ケトン食療法-長く続ける気持ちを持つことが必要

最後はケトン食療法です。最近はやりの低炭水化物ダイエットに似た食事の組み合わせから始めます。一番強い治療になると、脂肪を増やしてほとんど炭水化物を摂らないようなメニューになります。ずっと続ける必要があるため、あらかじめ十分に情報を知り、治療へ臨む気持ちを持ってから開始しましょう。

 

トロント小児病院のてんかんユニットを経て聖隷浜松病院にて小児の包括的てんかん診療を行っている。聖隷浜松病院てんかんセンターでは数あるセンターでも内科系治療と外科系治療を同時に考えながら診療する北米スタイルを実践する日本でも数少ない専門施設であり、とくに小児科系の医師としてこのスタンスで診療できるてんかん専門医は現在稀である。また結節性硬化症の包括診療とてんかん治療も総合外来を起ち上げて精力的に行ったり、医師教育としても長期キャリアパスを考えるための本を日本で初めて著し、ベストセラーとなっている。

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