尿糖とは、尿の中に含まれる糖分のことです。検査は、糖を検出する試験紙を用いて尿に糖分が含まれているか否かを判定する方法で行われます。
尿と試験紙のみで検査することができるため、非常に簡便な検査として、尿に糖が検出される病気のスクリーニングに広く用いられています。
通常、尿中には試験紙では検出できない程度のごく微量の糖分しか含まれていません。しかし、血糖値が上昇する糖尿病や甲状腺機能亢進症、下垂体疾患、腎障害などの病気がある場合には、尿中にも多くの糖分が排出されるようになります。
尿糖検査はその性質を活かして、主に糖尿病の有無を簡便にスクリーニングする目的で行われることが多い検査項目です。
ただし、尿糖は何らかの病気がない場合でも検出されることがある一方、糖尿病を発症していても陰性となることがあります。このため、尿糖検査の結果のみで病気の有無を判定せず、ほかの検査結果と合わせて判定することが大切です。
尿糖は上で述べたような病気が疑われる際に、簡易的なスクリーニングとして初診時に行われる検査です。
また、簡便に糖尿病の有無をスクリーニングすることができるため、一般的な健康診断や人間ドック、妊婦健診の際に行われる検査項目でもあります。
さらに、病気が確定して治療を開始したり、治療が終了した後にも経過観察を行う目的で定期的に検査が行われたりすることもあります。
尿糖検査は尿検査によって行われます。
尿糖の値は食事の影響を受けやすく、とくに食後2~3時間後に高くなるため、検査は早朝空腹時に行うとよいとされています。
また、ビタミンCやL-ドーパミンなどの薬剤を服用していると、実際には尿と共に糖分が排泄されているにもかかわらず正確に検出できないことがあるため、検査を受ける前に医師に服薬内容を申し出るようにしましょう。
尿糖検査は、排泄した尿を用いて行う検査です。このため、検査時には少量なりとも排尿する必要があるため、検査直前の排尿は控えましょう。
尿糖検査は、排尿後に試験紙を尿に浸すだけで簡便に行える検査です。
このため、検査自体は排尿したものを検査機関に提出するだけでよく、当然ながら検査に伴う痛みはありません。
ただし、尿を自力で排泄できない場合は尿道口から膀胱に管を通して採尿する処置が行われることがあり、若干の痛みや不快感を伴うケースもあります。
尿糖は通常では検出されないため、正常な場合の検査結果は(-)または陰性と表記されます。
検査で使用される一般的な試験紙は、尿中のブドウ糖が50mg/dL以上になれば検出されるようになり、50~99mg/dLは(±)、100~249mg/dLは(+)、250~499mg/dLは(2+)、500~1999mg/dLは(3+) 、2000mg/dL以上は(4+)と表記されます。
しかし、試験紙のメーカーによって感度が異なることもあるため、検査結果は自己判断ではなく必ず検査を実施した医療機関の判定に従い、必要に応じて精密検査を行うようにしましょう。
尿糖が検出された場合は、血糖値が高くなる病気や、腎臓の機能が低下する病気が背景にある可能性が示唆されます。
血液中の糖分は腎臓でいったんろ過されたあと、尿細管と呼ばれる部位で血中に再吸収されます。しかし、血糖値が160mg/dL以上になると尿細管での再吸収量よりもろ過される糖分が多くなるため、再吸収されなかった糖分が尿と共に排泄されるのです。
このため、尿糖が陽性になった場合には血糖値が高いことや、腎臓での再吸収能力が低下していることが考えられるのです。
しかし、尿糖の有無だけで病気を特定することはできず、検査で異常が見つかった場合には精密検査を行って病気を特定する必要があります。
精密検査の内容は、一般的にはヘモグロビンA1cなどの血液検査、ブドウ糖負荷試験、下垂体や甲状腺、腎臓などを観察するための超音波検査、CT検査・MRI検査などの画像検査、腎生検などが必要に応じて行われます。
病気が確定した場合は治療を行う必要があります。
しかし、腎臓での再吸収が上手く行われないことによって尿糖が検出される腎性尿糖では、腎機能障害による諸症状がない状態であれば特に治療の必要はないとされています。このため、定期的な経過観察をするにとどめることが一般的です。
また、経過観察を行う目的で検査するケースでは、急激に尿糖の検出量が増えた場合、治療法の変更や治療の開始・再開などを検討する必要が生じます。
尿糖は一時的に血糖値が上昇した場合でも陽性となる検査です。
このため、病気と確定されて治療を行っている場合以外にも、精密検査で糖尿病などの病気と判定されない場合や経過観察となった場合は食生活や運動習慣を整えて、血糖値が上がりにくい生活を心がけましょう。
また、経過観察となった場合には医師の指示通りに検査を続けていくことが大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。