「リウマチ性多発筋痛症」という病名、あまり耳にしたことがない方が多いと思います。これは、原因がよくわからないけれども「50歳以上の人である日をきっかけに急に起きて、両肩ともあげられず寝返りも打てなくなる」病気です。リウマチ性多発筋痛症について、沖縄県立中部病院の金城光代先生にお話をお聞きしました。
「○月○日に起きたらすごく痛かった」というように、発症した日を覚えているほどに突然の急激な発症をする方が多く、数日で片側の肩痛から始まり数日後に反対側の肩も痛くなるという経過をとる場合もあります。
肩の痛みはこの病気の患者さんの95%以上に起きます。両肩が上がらないという訴えもよくあります。年齢と両肩の痛みは、後ほど説明する診断基準においても必須条件となっています。
多くは体の左右の片側から発症し、2~3日が経過してから両側に広がる痛みとなります。
「近位筋」とは体の中心に近い筋肉(肩・腰などの筋肉)のことを言います。これらの筋肉に圧痛(押すと痛みを感じること)があります。
※「遠位筋」とは手足など体の中心から遠い末端の筋肉のことを言います
指などの関節に炎症が起きて、痛みとともに腫れが出ます。この症状が出ると、関節リウマチとの区別が非常に難しくなります。この場合、医療従事者は常に関節リウマチである可能性を考慮します(詳しくは後述)。
手背のむくみが1~2割程度の患者さんに起こります。押すとへこんであとができるくらいの「圧痕性の浮腫(むくみ)」と呼ばれるものです。
頸・肩・股関節が痛みで動かしづらくなります。腰痛や45分以上続く朝のこわばり(後述)が起こり、寝返りが打ちにくくなります。半数〜2/3程度の患者さんに起こります。
以下は少し専門的な話となります。
高齢発症(50歳以上の発症)の関節リウマチの患者さんは、頸から肩へのこわばりが強くて、肩が上がらないということがあります。このようなときには、専門家が診ても、症状だけではリウマチ性多発筋痛症なのか、関節リウマチなのか区別ができないことがあります。しかし、リウマチ性多発筋痛症と関節リウマチは全く違う病気です。(30歳代の方では関節リウマチはこのようには発症しませんが、高齢発症ですとこのような特徴があります。)
臨床症状からは区別するのが困難であるからこそ、医療従事者はリウマチ性多発筋痛症の症状をみたときには関節リウマチである可能性を考えます。これに注意しなければならない理由は、関節リウマチの場合は手の指の関節炎や骨の削れ・びらんなどが引き起こされ、関節リウマチ特有の治療が必要になるからです。リウマチ性多発筋痛症であればステロイドがメインになりますが、関節リウマチは関節の変形を来さないように治療の内容が大きく変わってくるのです。
さらに難しい話としては、リウマチ性多発筋痛症では関節周囲の炎症が起こり、関節リウマチでは関節内の炎症(滑膜炎といいます)が起こるという違いがあります。また、リウマチ性多発筋痛症では肩は自分では上げられなくても人に上げてもらえば少し上げられるが、関節リウマチでは他人に上げてもらおうとしても上げられないという特徴があります。しかしこの特徴も、100%当てはまるものではないのです。
円滑に治療を受けられるようにするためには、患者さんとしてもこのふたつの区別が難しいことを認識していただいたうえで、自分の症状の経過をきちんと医療従事者と相談しながら進めていくことが大切です。
関節リウマチにおける朝のこわばりは「指のこわばり」が主です。手がむくんだ感じがして、手が動かしづらくなります。それが徐々に1時間くらいかけて動かしやすくなるということを指します。
リウマチ性多発筋痛症における朝のこわばりは「体幹のこわばり」です。自身は「寝返りがうてますか?」という質問をよくします。夜中から朝にかけて症状が非常に厳しくなり、朝起きる前からきつくて痛みで寝返りが打てないとうのがリウマチ性多発筋痛症における朝のこわばりです。さらに、朝起きたときには肩が上げられない、頸も肩も全体的に筋肉が痛いという状態が目安になってきます。
沖縄県立中部病院 総合内科 リウマチ・膠原病・内分泌科 チーフ
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