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ひきこもりを脱出したい人へ
「ひきこもり」という言葉は今では広く普及し、認知されるに至りました。しかし、よくなされている誤解として、ひきこもりの治療や支援を過度に難しいものととらえてしまうことがあります。しかしきちんと支援...
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ひきこもりを脱出したい人へ

公開日 2015 年 09 月 25 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

ひきこもりを脱出したい人へ
斎藤 環 先生

筑波大学医学医療系社会精神保健学教授

斎藤 環 先生

ひきこもり」という言葉は今では広く普及し、認知されるに至りました。しかし、よくなされている誤解として、ひきこもりの治療や支援を過度に難しいものととらえてしまうことがあります。しかしきちんと支援をしていけば、ひきこもりの治療的支援は―時間はかかりますが―難しいことではありません。ひきこもりを脱出するためには、どのようにしていけばよいのでしょうか。ひきこもり問題の世界的な第一人者である筑波大学社会精神保健学分野教授・斎藤環先生にお話をお聞きしました。

どのような人が治療の対象になるのか?

家族か本人が「ひきこもりを何とかしたい」を考えている事例です。繰り返しますが、ひきこもりそのものは価値判断から自由な一つの状態像でしかありません。本人がその状態に自足しており、家族もそれでいいと考えているのなら、医療の出る幕はないのです。

私たち医師に求められているのは「人はこう生きるべき」と道を指し示すパターナリズムではありません。医師が生き方や価値判断にも介入しすぎるのは過度の「医療化」であって、好ましいことではありません。さしあたりは「必要なら支援ができますよ」「問題解決を望むのならこういうやり方がありますよ」と提案するニュートラルな姿勢からはじめるべきでしょう。

また、ひきこもりの原因として何らかの精神疾患がある場合には、それを見落としてはいけません。統合失調症や発達障害がひきこもりの中に隠れている可能性があり、そこは注意してみていく必要があります。発達障害や精神疾患がある場合は原疾患、つまりひきこもりの根本にあるそれらの病気を診断し、それに対して治療をすることが望ましいのです。またこうした鑑別診断のために、ひきこもりに医療が関わるもう一つの意義があるのです。

家族は何をする? どこへ行く?

本人が最初から治療や支援を望む場合はいいのですが、そういうことはほとんどありません。その場合、まずは最初の支援者である家族が、相談場所をみつけて、相談に通う必要があります。多くの自治体にひきこもり地域支援センターがありますので、そこからはじめるのもいいでしょう。

また、一般的にお勧めできる家族の相談場所は駅前などにある精神科クリニックです。精神科病院でも良いのですが、いざ本人が通う場合に抵抗が大きいかもしれません。

精神科クリニックや病院を探していく際には、本人抜きの家族相談(自費になりますが)を受けてくれないところは対象外にせざるを得ません。ひきこもりを脱出するためには、一定期間、家族相談を続ける必要があるからです。可能なら家族相談を受けてくれるクリニックを複数見つけて、実際に相談してみて相性がいいところを選ぶことをお勧めします。ひんぱんに医師を変えるのはドクターショッピングといって好ましいことではありませんが、「ウインドウショッピング」ならOKです。

家族と本人との対話

家族相談の一つの目標は、家族と本人との間に「対話する関係」と取りもどすことです。どうすれば両者が心を開いた対話ができるのかを、あの手この手で検討します。「生きてはいるようだが、ここ数年、一度も姿を見たことがない」―そんな家族もいるのです。こういう断絶状況を避ける意味でも、親子間の対話の再開が最初の目標となります。難しい目標ではありますが、対話できなければ先へは進めません。逆に、対話が実現するだけで、一気に改善が進む場合もあります。最初の頑張りどころです。

本人へのアプローチ

家族関係が改善し、根気よく誘いかけを続けていけば、いずれ本人が治療場面に現れます。ここから先は個人療法ですが、私はあまり特別なことはしません。本人との信頼関係を築きながら、家族との関係調整を続けるのがこの時期の仕事です。次のステップは、社会参加に向けた準備です。家族以外の他者、それも同世代の仲間との親密な関係を経験してもらう段階です。安全に参加できる集団として、クリニックのデイケアや居場所、たまり場などを紹介します。親密な人間関係を経験すると、多くの人が自信を回復し、社会参加の意欲を取りもどします。

繰り返しますが、ひきこもりにとって最初の、そして最重要の支援者は家族です。本人が通わなければ意味がないとおっしゃる方もいますが、そんなことはありません。むしろひきこもり事例の中には、家族の対応を改善しただけで、一度も治療に通わないまま社会参加した例などもあります。
もちろん最初から本人が相談に来られるパターンもあります。このような場合はずっと話が早いので私たちは歓迎します。

ひきこもり地域支援センターのほかにも、自治体によっては精神保健福祉センターが充実したひきこもり支援活動をしているところもあります。ひきこもりをとりまく社会資源は、ゆっくりとではありますが、かなり充実してきたように思います。残念ながらそうした情報はほぼネット上にしかありません。ご家族にはぜひとも情報収集に励んでいただきたいと思います。

ここまで到達すれば、多くの人は就職したいという希望を持つようになります。次の記事「ひきこもりの方が仕事を始めるために」では、就労支援について紹介していきます。

 

「ひきこもり」診療の世界的な第一人者。筑波大学を卒業後、稲村博先生に師事。民間の精神病院で豊富な臨床経験を積んだ後、現在では筑波大学社会精神保健学で教授を務める。医学的な側面だけでなく社会学的な側面も含めた多くの著書で知られ、その卓抜な視座は様々な読者・様々な領域の研究者たちに影響を与えている。

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