インタビュー

外反母趾とはどんな病気か―どのような問題が起こるのか

外反母趾とはどんな病気か―どのような問題が起こるのか
田中 康仁 先生

奈良県立医科大学附属病院 整形外科 教授

田中 康仁 先生

この記事の最終更新は2015年10月01日です。

外反母趾はよくある病気であり、誰しもがその名を聞いたことがあるでしょう。しかし、実際にどのような病気なのかということはあまり知られていません。

外反母趾はどのような病気なのでしょうか。そして何が問題となるのでしょうか。日本の外反母趾診療の第一人者である、奈良県立医科大学教授の田中康仁先生にお話をお聞きしました。

外反母趾とは、足の母趾(足の親指)の先が足の第2趾(足の人差し指)に向かって「くの字」に曲がることをいいます。そのため、母趾の付け根の関節が突き出てしまい、その部分に炎症や痛みが起こるようになります。もともとは靴を履く機会が多い欧米人に多い病気でしたが、今では文化の変化に伴い日本でも増えています。

外反母趾

外反母趾は先述したように靴が原因になります。通常、母趾外転筋(ぼしがいてんきん・かかとから親趾に向かって伸びている筋肉)は内側に開いているのが普通の状態(生理的な状態)です。しかし、靴を履く機会が増えたことで、内側に開いている母趾を靴で圧迫してしまうようになりました。これにより、非生理的な形へ変形してしまうことが多くなりました。

外反母趾になるとどのような問題が起こるのでしょうか。体重をかけるときには、足を踏みしめます。外反母趾になると、この足を踏みしめる機能が4割程度弱くなってしまうことが問題になります。つまり、残りの機能は6割程度になってしまうのです。

親指に効かなくなった4割の体重は、足のどこか別の部分にかかることになり、過重負荷を起こします。その結果、外反母趾になると足の裏にタコができてしまうのです。

足の裏にできたタコ

足のタコをみると、動的なストレスが足に何度も何度もかかっている(動くことにより足の裏がなんどもこすれている)ことが分かります。動的なストレスがかかってしまう原因が外反母趾です。

母趾で体重を支えられなくなると、他の足趾に負担がかかります。特に蹴り出す(歩く/走るときの一歩目)ときには負担がかかるため、他の足指まで一緒に曲がってしまいます。親指の力が弱まると他の足指まで弱くなり、次第に曲がったまま伸びなくなることを屈趾症(くっししょう)といいます。蹴り出すときに足趾に力が入らず、これも足の裏のタコの原因になります。

母趾、第二、三趾の屈趾

外反母趾は基本的に痛みがなければ問題ありません。外反母趾の何よりの問題は痛みです。しかし、ここで注意しなければならないのは変形の重症度と疼痛は相関しないということです。例えば、ひどく変形している高齢者でも全く痛みがない方もいます。この場合の外反母趾は、全く問題になりません。

ここで、痛みの原因について考えます。痛みの原因のひとつは「足背(そくはい・足の甲)の神経」が刺激されることです。母趾が本来とは違う位置に曲がってしまうことにより、足背の神経が内側に寄り、圧迫されます。それが痛みの原因になります。

また、滑液包炎(かつえきほうえん)という腫れ、炎症も痛みの原因になります。

滑液包炎による腫れ

足指の変形が連動し、広がっていくことが何よりの合併症です。つまり、母趾(足の親指)が曲がると第2趾(足の人差し指)も連動して曲がってしまいます。外反母趾に加え、「内反小趾(ないはんしょうし)」(第5足指・小指が内側に曲がること)も合併することがあります。

足をみれば変形を確認できます。そのため直接目で見ることが重要で、変形の程度はレントゲンを撮り評価します。

外反母趾では足の親指が外に向いているのと同時に場合によっては親指が外側に回旋してしまっている様子が分かります。また、足に荷重をかけるとより外反母趾が著しくなります。体重をかけたときに母趾が内側に開くほうが正常の足です。外反母趾の場合は足に荷重をかけると母趾が外側に閉じる方向に向かいます。

※内側とは、母趾が開く方向、外側とは母趾が閉じる方向のことをいいます。

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