外反母趾は足の親指である「母趾」が外側に曲がってしまって痛みを引き起こす病気であり、歴史的には靴の普及とともに日本でも増えてきました。外反母趾の原因はどこにあるのでしょうか。日本の外反母趾診療における第一人者である、奈良県立医科大学教授の田中康仁先生にお話をお聞きしました。
外的要因とは、主に靴のことを指します。この項では、靴についてお話しします。
第二次世界大戦の後、靴の普及に伴い日本でも外反母趾が増えてきました。この理由を考えると、結局のところは足の親指が開くことが大切なのです。元々は広がるべきであった足の親指を閉じたままにしないことです。生理的な動きを止めることが何よりもよくないことです。
また、ハイヒールも外反母趾のリスクになります。ハイヒールを履くと母趾の側副靭帯がゆるんで外に曲がりやすくなります。側副靭帯は本来、ぴんと強く張っているものです。それが張らなくなることにより、指が曲がりやすくなってしまうのです。
このような観点から、「外反母趾にならないための靴」について説明します。
もっともよいとされているのは、ヒールがきちんとロックされ、甲はきちんと固まり、指が遊ぶ(足の指を動かせる)靴です。
つまり、動く部分はきちんと動き、固まる部分はきちんと固まっていなければならないのです。どの部分でも折り曲げられるようなやわらかな靴ではなく、ある程度の固さがなければなりません。たとえば、学校で用いる上履きのような硬さの靴はよくありません。一方、地下足袋などは、実は外反母趾予防には理想的なのです。
外反母趾には解剖学的な要因があります。つまり、外反母趾になりやすい足があるということです。
足の形については、以下のような場合に外反母趾になりやすいといえます。
まず、母趾が長い方に関しては靴に当たりやすいのでそれにより曲がりやすくなってしまいます。また、扁平足の方に関しても外反母趾になりやすくなります。
足には上の図のようにアーチがあります。アーチが崩れてくると、足の指が曲がりやすくなるのです。基本的にアーチが崩れやすくなるのは加齢変化によるものです。ただし扁平足の方は、若くてもアーチが崩れやすくなります。
外反母趾になりやすい病気としては、以下が挙げられます。
(関節リウマチのほうが重症度は高くなります)
ただし、圧倒的に多いのは背景にこれらの病気のない「特発性」の外反母趾です。加齢変化とともに、60歳を過ぎると3分の1の方には外反母趾が起きます。しかし、症状がある場合は病的ですが、症状がない場合には基本的に問題になりません。
外反母趾は遺伝との関連はあると言われています。外反母趾になりやすい足が遺伝する、つまり「足の形が遺伝する」という考え方です。
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