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インタビュー

外反母趾の手術と、自分でできる足の体操と痛みの緩和法

外反母趾の手術と、自分でできる足の体操と痛みの緩和法
須田 康文 先生

国際医療福祉大学塩谷病院 病院長

須田 康文 先生

「自分は軽度の外反母趾である」と自覚している方の中には、進行を抑える方法がわからず、放置しているという方も少なくはありません。しかし、外反母趾は悪化すると関節の脱臼などを引き起こし、重症例では手術が必要となることも多々あります。本記事では、外反母趾の手術の中でも患者さんへの負担が少ない「DLMO(デルモ)法」のメリット・デメリットと、ご自宅で今日からできる痛みのケア方法について、国際医療福祉大学三田病院整形外科部長の須田康文先生にお伺いしました。

外反母趾とは、足の親指(母趾)が人差し指(第2指)を圧迫するように「くの字状」に曲がり、痛みや関節の脱臼などを引き起こす足の病気です。女性に多くみられる病気で、男女比はおよそ1:9から1:10にものぼります。

外反母趾の原因には、遺伝や性別といった内因的な要素と、ハイヒールなどの外因的な要素があり、多くはこの2つが重なり合うことで発症します。

まずは内因的な要素である「遺伝」についてお話ししましょう。海外の論文では、外反母趾の患者のうち6~8割の方に、家族内発生が認められたという報告がなされています。ここでいう家族内とはご家族のうち女性のみ(自分を含め、母、祖母の3世代)を指しています。日本でも、神戸のある女子大学でアンケート調査が実施されており、外反母趾の方のうち約50%には家族内発生がみられたと報告されています。

外反母趾が女性に多い理由としては、女性のほうが関節が柔らかいため、足に体重をかけることで土踏まずが潰れ、幅が横方向に広がりやすいことが挙げられます。また、女性ホルモンの乱れなども外反母趾を助長するリスク因子のひとつとされています。

親指が人差し指より長い「エジプト型」の足も、外反母趾のリスク因子のひとつです。親指が長い足をエジプト型、人差し指が長い足をギリシャ型と呼ぶのは、ルーブル美術館でエジプト彫刻とギリシャ・ローマ彫刻の足の形を調査した際にわかったそれぞれの造形の特徴に由来しています。尚、一般的には親指が人差し指よりも少しだけ長いスクエア型の方が多いとされます。

エジプト型の足の場合、靴を履くとどうしても親指が圧迫されやすく、下図のように第1中足骨が突出し、親指がくの字に曲がりやすくなります。

 

多くのハイヒールは人差し指部分が最も長くなる構造になっていますが(ポインテッドトゥ)、エジプト型の足の方にはスクエアトゥやラウンドトゥといわれる先端部分がなだらかな形状の靴を選ぶことをおすすめします。

ハイヒールが外反母趾を引き起こすことは一般の方にも広く知られています。これは、足が前のめりになり滑ることで、足指が靴先で押さえつけられてしまい指が丸まるためです。足の指が丸まった状態を続けると、足裏でクッションのような役割を果たしている3本のアーチが崩れ、外反母趾となります。

また、外反母趾は更なるアーチの崩れを引き起こすため、重症化への負のループに陥ってしまうこともあります。

また、ゆとりがありすぎる「ガバガバ」「パカパカ」状態の靴も外反母趾の原因となるので注意が必要です。本来、土踏まずは地面に接着せず浮いた状態にありますが、歩行時など体重がかかる際には潰れ気味になり、これに伴い親指の第1中足骨は横方向へと広がろうとします。大きすぎる靴を履いていると足幅の広がりを抑えることができないため、中足骨部分が開いてしまい、結果として親指は人差し指側へと傾いてしまうというわけです。

足の甲部分にストラップがついた靴を選ぶ、もしくはシューズベルトを装着して、靴と足をフィットさせることが大切です。

外反母趾の典型症状は、靴を履いたときの「痛み」です。また、親指がくの字に曲がることで人差し指と中指にも負担がかかり、関節の裏を支える靭帯が伸びて脱臼(亜脱臼)を起こすこともあります。脱臼を起こすと、靴を履かずとも裸足の状態で痛みを感じるようになります。

また、脱臼により外れた中足骨の頭が、地面を突き刺すような動きをするようになるため、タコが生じて痛みを起こし、フローリングを裸足で歩くことなどができなくなります。そのため、外反母趾が重症化すると歩行困難を来すことも大いにあります。

また、歩行時には痛みを回避するための動作や姿勢をとってしまうため、他の部位に負担がかかり、腰痛や膝痛など、離れた部分に症状が現れることもあります。痛み症状がない外反母趾であっても、親指に力が入らず地面を踏み込むことができなくなるため、同様に過剰な負荷がかかる部位が生じて腰や膝に痛み症状が現れることがあります。

ただし、外反母趾は年齢に従い増える病気であり、高齢の患者さんの場合は外反母趾による腰痛・膝痛なのか、はたまた元々膝や腰を痛めていたのか、手術を行うまで判断できないことがあります。そのため、現在三田病院では、外反母趾の手術前に腰痛や膝痛の原因を見極めるための試みとして、術前・術後の動作解析を行う研究を進めています。

外反母趾の重症度は、第1中足骨軸と母趾基節骨軸のなす角度により以下のように分類されます。

  • 軽症: 20~30度
  • 中等度:30~40度
  • 重症度:40度以上

軽症の方であれば、後段で述べる「外反母趾の保存療法」で症状を緩和させることができます。しかし、保存療法では進行を抑えることしかできず、骨の変形を治すことはできないため、症状が酷い場合には手術が必要になることもあります。

(外反母趾のDLMO法手術、術前と術直後、術後10か月の症例写真 提供:須田康文先生)
外反母趾のDLMO法手術、術前と術直後、術後10か月の症例写真 提供:須田康文先生

DLMO法は、一般には軽症から中等度の外反母趾に対して行う、シンプルで侵襲性の低い手術です。手術後数日で立っていただくことができるなど、患者さんにかかる生活制限が比較的少ないため、当院ではDLMO法を重症例にも適応しています。

外反母趾の一般的な手術では、硬くなった母趾MTP関節(第1中足骨と母趾基節骨を繋ぐ関節)の外側の軟部組織を切って伸ばし、ゆるんでいる内側の軟部組織を縫い縮めます。そこに第1中足骨の骨切りを加えます。

しかし、DLMO法では内側の縫縮を行わず、小さな切開部から第1中足骨を切ってずらすことで、広がってしまった幅を許容範囲まで寄せるという方法をとります。切開部が小さい低侵襲手術であるため、ずらした骨同士の癒合(くっつくこと)が起こりやすく、手術後早期に立つ、歩くといった動作ができるようになります。

骨と骨が自らの力で癒合する力は、傷口が小さければ患者さんの年齢に関わらずどなたにでも残っていますので、DLMO法は高齢の方に対しても用いることができる方法です。

【関節運動の確保に有利】

母趾MTP関節の内側を縫い縮める一般的な手術の場合、症例によっては手術後MTP関節が固くならざるを得ず、足のしなやかさが失われて歩行しづらくなるというデメリットがあります。

DLMO法は母趾MTP関節内側の縫い縮めは行わず、第1中足骨にのみ骨切りを加える手術ですので、上記のような問題は起こりにくいというメリットがあります。

【術後数日で歩けるようになる】

(DLMO法手術後に装着する装具 画像提供:須田康文先生)
DLMO法手術後に装着する装具 画像提供:須田康文先生

術後2~3日で歩きだし、痛みが引く約1週間ごろには外出も可能になります。特に高齢の方など、安静期間が長引くことによる体力低下が懸念される患者さんには大きな利点となります。ただし、この段階では足にずらした第1中足骨を固定するためのピンが入っていますので、満員電車や人込みなどは避けていただく必要があります。

ピンを抜くのは術後3~4週間後であり、その後はすり足で歩くことが可能になります。(皮膚下に挿入しているため、ピンを抜く際にも痛みは生じません。)

かかと・小指・親指を順に地面に接地させる通常の歩行が可能になるのは、術後6週間~2か月後で、この期間を過ぎると普通の生活を送ることができます。

あらゆる外反母趾手術に共通していえることですが、骨がかたまるまでには約1か月~2か月かかります。また、術後には患部が腫れますので、外回りや立ち仕事に復帰できるようになるまでには3か月ほどの期間がかかります。これが外反母趾手術の最大のデメリットといえるでしょう。

このほか、DLMO法は第1中足骨をずらす方法ですので、レントゲンを撮ったときに手術の形跡がはっきり写ることも難点といえるかもしれません。ただし、第1中足骨のずれは皮膚表面からはわからず、また切開の跡も2㎝程度と他の手術に比べ小さいものですので、通常レントゲン撮影以外の場面では見た目に問題はありません。

【スカーフ法】

第1中足骨をアルファベットのZの文字のようにジグザグに切る手術法です。切った骨と骨との接地面が多いため骨同士が癒合しやすいというメリットがあります。ただし、高難易度の骨切り術ですので術者の技術が必要であり、合併症などのリスクも大きいというデメリットがあります。スカーフ法もDLMO法と同様に、施設を選んで受けることが大切です。

【マン法】

マン法は最もスタンダードな外反母趾の手術法です。第1中足骨を体の中枢に近いところ(足首により近いほう)で切る手術で、重症例の外反母趾に対しても用いられます。しかし、マン法にも「限界」があると私は感じます。というのも、マン法は母趾MTP関節の向きが変わってしまい、手術後MTP関節の嚙合わせがうまく合わなくなるリスクがあり、再発の可能性も高まります。

私が重症例に対してもDLMO法を行っている理由のひとつには、こういった関節の問題が生じにくいということもあります。

ここまでは外反母趾の手術療法についてお話ししてきましたが、外反母趾の治療は、早い段階でしたら基本的には保存療法を選択します。というのも、どの手術であっても元通りに外回りや立ち仕事ができるようになるまでには3か月程度の期間を要するからです。

しかし、先述の通り保存療法はあくまで「進行を抑える対症療法」であり、変形を治すことはできません。たとえば、足裏に第1中足骨のずれによってタコができていれば、凹凸に合わせた中敷き(インソール)を作り、負荷を他の部分に逃して痛みを和らげます。

靴の中敷きには市販のものもありますし、個々人の足の大きさなどにあわせて誂えてくれる専門店もあります。しかし、足裏の凹凸が合わなければ痛み症状はかえって悪化してしまうため、外反母趾を専門的にみることができる医師のいる病院で作ったほうがよいでしょう。同じ整形外科であっても、足を専門にみられる医師と別の部位を専門にしている医師がいるため、『日本足の外科学会』のWEBサイトなどを参考に、お住まいの地域の施設を探してみることをおすすめします。

(外部サイト『日本足の外科学会』 :https://www.jssf.jp/ )

軽症の患者さんの中には、ご自身が外反母趾であることを自覚されていても放置してしまっている方が多々いらっしゃいます。しかし、外反母趾を放置すると症状は進行し、やがては手術が必要になることもあり得ます。本項では、軽度の外反母趾の方や外反母趾を予防したい方、更には手術後の患者さんに対して私が指導している「母趾外転筋訓練」をご紹介します。

母趾外転筋とは、足の指を開こうとする際に使用する筋肉です。しかし、外反母趾が悪化すると、母趾外転筋は足裏へと移動してしまい横方向に足を開くことができなくなります。ですから、足を開くことができるうちに母趾外転筋を鍛えておくことが肝要なのです。筋肉は使わないとどんどん痩せていくので、なるべく早い段階から自主的にトレーニングを行いましょう。

  1. 足の指を「パー」の形に開き、5秒間静止します。ゆっくりと数をカウントしましょう。
  2. 「グー」の形を作るように足指を数秒丸めます。
  3. 再び「パー」の形を作り、5秒間静止します。この動きを20回行いましょう。

この体操を朝晩1日合計2回行うことをおすすめします。母趾外転筋を鍛えることで、くの字に曲がっていた足をご自身である程度真っ直ぐに戻すことも可能です。また、母趾外転筋がしっかりしている方のほうが、痛みや機能障害も少ないという傾向があります。実際にこの体操を実践された患者さんから「痛みが和らいだ」「足に力が入りやすくなった」という言葉を頂戴することも多いので、ぜひ日々の習慣に取り入れてみてください。

5本指ソックスを着用することは、「親指と人差し指の間に布を挟む」ことと捉えられます。これにより、親指が人差し指をダイレクトに圧迫することにより起こる痛みの緩和や脱臼の予防に繋がります。ただしきつめの靴下は外反母趾を助長するとの意見もありますので注意が必要です。

また、同様の理由で親指と人差し指の間に丸めたガーゼを挟むこともおすすめしています。市販のシリコン製のスペーサーは大きさが決まってるため、症例によっては「足指を無理やり開く」ことにもなりかねず、痛みを助長してしまうことがあります。また、素材が硬く肌が荒れてしまう方もおられます。

ご自身の足にとって無理のない大きさにカットしたガーゼを丸めて指の間に挟み、医療用テープで皮膚に固定する方法は、上述のようなトラブルを防ぐことにも繋がります。ただし、足に違和感を覚えたり、指を使いづらいと感じられる患者さんもいらっしゃいます。

繰り返しになりますが、外反母趾の放置は禁物ですので、本記事でご紹介したケア方法のうち、「母趾外転筋訓練」など、できるものから積極的に行っていただくのがよいかと考えます。

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