外反母趾は、一定の段階に達するまでは手術を行わなくとも治療することができます(参照:「外反母趾の治療(手術以外の治療)」)。しかし、手術が必要になってしまうケースもあります。それはどのような場合なのでしょうか。また、具体的にはどのような手術を行うのでしょうか。日本の外反母趾診療における第一人者である、奈良県立医科大学教授の田中康仁先生にお話を起きしました。
外反母趾の変形が進むと、母趾(足の親指)にくっついている筋肉も変形を助長するように働くようになり、体操や装具ではもとに戻りにくくなります。このような場合に、痛みが強く、靴を履いての歩行がつらくなってしまうと手術行うことになります。
手術を行うときとは「痛いとき」ですが、それ以上に「手術をしてでも痛みを取り治したいと思う」ときです。外反母趾の患者さんは全体的に、全身は元気であることが多いです。全体的には元気であるけれども、活発にいろいろと活動をしたい、動きたいけれど足の痛みが邪魔になる、という方が手術を受けるケースが多くなります。
つまり、あまりアクティブに活動する気がない方は、そもそも手術を希望されないことが多くなります。実際、痛みをとってきちんとアクティブに活動するレベルまで治療をするためには、レベルの高い手術が必要になります。
最も一般的な方法は、中足骨(親指の付け根から関節までの骨)の骨切り術と言われるものです。この場合、文字どおり中足骨の骨を切ることにより形を矯正していきます。変形がどれくらい進行しているか、つまり足の形態によって切り方が異なります。
現在のスタンダードな方法の骨切り術には、150種類以上の切りかたがあります。変形が少ない方の場合は一部だけ骨を切れば形態の異常を修正していくことができます。しかし重症の場合、つまり変形がひどい場合やほかの足趾の合併症を伴っている場合には、かなり精密に骨の形を修正しないと元通りにはなりません。骨はどういう形にも切れますし、さまざまな選択肢がある一方で、正確な選択をしなければ良好な結果は得られないのです。
手術の翌日からかかとで体重をかけての歩行は可能です。しかし、骨がくっつくまでにはおおよそ6週間かかります。そのため、足の指先で十分体重をかけるには2ヶ月程度かかり、立ち仕事ができるようになるまでにはおおむね3か月程度を必要といたします。一般的な日常生活は、早い段階で送れるようになります。術後早期から関節をしっかり動かしていく必要があります。
手術が成功すれば、痛みはよくなります。一番の原因であった変形も改善され、痛みが除去されて、なによりも靴が履きやすくなります。
合併症としては内反母趾が挙げられます。つまり、親指が内向きになりすぎてしまうことです。
そして、何より外反母趾の手術が問題になる理由は、その手術自体が難しいことです。重症の外反母趾に対する手術は、かなり熟練した医師でなければ行えません。外反母趾においては骨を切ると同時に長さの調整をする必要があります。さらに、関節の機能を落とさないための工夫が必要になります。
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