耳硬化症の治療の第一選択肢は手術です。三井記念病院では低侵襲(手術によるダメージが少ないこと)な手術体制が確立されており、安全に手術を受けることが可能となっています。耳硬化症の現在の手術方法について、三井記念病院耳鼻咽喉科部長の奥野妙子先生にお話し頂きました。
耳硬化症の治療は基本的に手術が適応されます。耳硬化症はアブミ骨がうまく働かなくなっているために起こっている病気であるため、固くなってしまったアブミ骨を取り出し、人工的なアブミ骨と置換する処置が施されます。三井記念病院ではテフロン製の素材をもちいているため、安全性も問題ありませんし、磁気類を装着していると受けられないMRI検査も通常通り受けることができます。
通常のアブミ骨手術は、耳の後ろを切開して行われることもありますが、三井記念病院では耳の孔のなかだけで直接手術をしており(経外耳道法といいます)、非常に低侵襲な手術が確立されています。なお、耳硬化症の手術は全身麻酔下で行われます。
三井記念病院が行っている術式(経外耳道法)では、およそ1週間程度の入院を要します。これは、手術時に内耳に開創をするため、術後の外リンパ婁(手術したことによって内耳に術創が残り、内耳から液が漏れ出てくること)を予防するためです。ただし、創(手術の傷)は体表(体と外気が触れる部分)には全く存在しませんから、安静が保障されるのであれば退院も可能ではあります。術後の痛みはありません。
ただし、傷跡が安定するまでは重いものを持ったり、ジムに行ったり、いきんだりすることは控えましょう。
各病院や患者さんの年齢によって異なりますが、およそ70~80万円です。通常の方であれば3割負担なので、20~25万円、高額医療制度を用いれば10万円前後で手術を受けることができます。後期高齢者の方であれば7~8万円となります。
耳硬化症は手術治療によって劇的に聴力回復が見込める疾患であり、早期に治療をすることが望ましいとされます。
聴力が回復することで、耳鳴りはほとんど自覚しないレベルまで改善されます。しかしながら、術前よりふわふわする感じ(浮動性めまい)がある場合は残念ながら、再手術をしてもこれが改善されることはなく、慣れていただくしかありません。ただし、術後の聴力改善は長期にわたって維持されます。20~30年経っても元気な患者さんを見ると、私も嬉しく思います。
三井記念病院 耳鼻咽喉科特任顧問
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