インタビュー

悪阻のときは何を食べればよいのか? アンモニアを中和する食事の工夫

悪阻のときは何を食べればよいのか? アンモニアを中和する食事の工夫
恩田 威一 先生

東京慈恵医科大学元教授 / 東京慈恵会医科大学客員教授 / 茅ケ崎市立病院産婦人科元部長 慈誠...

恩田 威一 先生

目次
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記事2『悪阻とマグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、塩素の関係』では、マグネシウム不足やナトリウム不足が悪阻を発生させることをご説明しました。本記事では、悪阻とアンモニアの関係についてご説明していきます。アンモニアはほとんどの食品に微量に含まれており、妊娠する前はそれを快適に感じますが、妊娠初期は特にその臭いに対して過敏になって不快に感じてしまいます。これを中和するために、酸性の食品を合わせると効果があると考えられます。引き続き、東京慈恵医科大学元教授客員教授/茅ケ崎市立病院産婦人科元部長の恩田威一先生にお話を伺いました。

悪阻とアンモニアの関係

臭いへの感受性の変化

記事1『悪阻(つわり)とは? 悪阻の原因と症状、受診のタイミングについて』で述べたように、悪阻が重い方はエストロゲンの増加によって脳内セロトニン分泌が促進され、その刺激により嗅覚が敏感になってアンモニアに対する感受性が高まっている状態です。アンモニアの嗅覚感度が増すことにより、妊娠する前には心地よく感じた物が、不快に感じるようになります。重症の場合は普段食べられていたものも食べられなくなることがあります。

普段意識したことはないと思いますが、ほとんどの食品にはアンモニアが微量に含まれています。

稲を栽培するとき、肥料には必ずアンモニア塩を使用します。そのため、稲にはアンモニアが含まれることが推測できます。実際に調べてみたところ、精白米100g当たり140mgのアンモニアが含まれていることがわかりました。アンモニアの気化温度は‐33.34℃と非常に低く、すぐに蒸発してしまいます。ご飯を炊くにおいで気持ち悪いと感じてしまう方が多くいらっしゃるのはこのためです。

日本食品標準成分表準拠アミノ酸成分表(2010)改変 単位:㎎

果物なら食べられる妊婦さんが多いのは、表のように100gあたりのアンモニア含有量が少ないからだといえるでしょう。ジャガイモもアンモニア含有量が少ないので、塩がかかったフライドポテトが悪阻の妊婦さんに人気のある理由と考えられます。

また、表のとおり、アンモニアが多い食品はアミノ酸含有量も多い傾向にあります。

パンにはアミノ酸が多く含まれており、精白米よりアンモニアが多いようにみえますが、ご飯のようにパンを高熱で炊くことはありません。パンは高温ではない状態で食べるため、アンモニアが気化しにくいので臭いを感じにくくなるのです。(トーストするとパンも食べられなくなることがあります)。

ですから、食品から出るアンモニアの臭いを軽減すれば症状が緩和されることになります。

悪阻のとき「すっぱいもの」が食べたくなる理由は?

妊娠中はすっぱいもの(梅干し、レモンなど)が好きになるとよくいわれます。これには、アンモニアがクエン酸などすっぱいものによって中和されるという点が関与していると考えられます。

人が食事をするときは、舌でアミノ酸(うまみ)を味わいます。それと同時に、私たちは鼻でにおいを感じながら食事をしているのです。クエン酸などすっぱいものは酸性であり、アルカリ性のアンモニアを中和するはたらきがあります。ですからご飯とすっぱいものを一緒に食べると、空気中にあるアンモニアが中和されるため、ご飯が食べやすくなるのです。

なお、悪阻の妊婦さんでも鼻がつまると、ご飯を食べられるようになることがあります。

果物は消化しやすく悪阻のときでも食べやすい

悪阻のひどい妊婦さんが「果物しか食べていません」とおっしゃることがあります。

果物には果糖・ブドウ糖・ショ糖の3つが含まれています。これらのうち、果糖とブドウ糖は単糖類であり、消化する必要がありませんから、塩素が不足しがちな妊娠中でも食べやすいのです。(妊娠時のでんぷんの消化に関しては記事2『悪阻とマグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、塩素の関係』を参照)

コーラは腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促進する

コーラを好んで飲む妊婦さんは多いようです。

コーラはブドウ糖を含む飲み物であり、果物と同様、容易に吸収できます。また、コーラは基本的に冷えた状態で飲むものであり、炭酸が含まれています。少量の(150ml以下)冷たい炭酸飲料を飲むと腸が刺激され、蠕動運動が活発になります。これにより腸のガスが移動して、悪阻が軽減すると考えられます。このため、悪阻の強い妊婦さんは自然にコーラを好むようになるのでしょう。

悪阻時の水分摂取の注意点は?

真水を避けて電解質を摂取する

真水を飲むと悪阻を悪化させる可能性があるため、電解質を含んだものを摂取しましょう。塩分を含むスポーツドリンクや経口補水液、フルーツジュースを飲むと症状が改善することがあります。