院長インタビュー

放射線治療の可能性を最大限に引き出す神戸低侵襲がん医療センターのとりくみ

放射線治療の可能性を最大限に引き出す神戸低侵襲がん医療センターのとりくみ
藤井 正彦 先生

神戸低侵襲がん医療センター 理事長・病院長 、神戸大学 大学院医学研究科客員教授

藤井 正彦 先生

この記事の最終更新は2017年09月26日です。

神戸医療産業都市であるポートアイランド内に2013年に開院した神戸低侵襲がん治療センターは最先端の放射線治療を中心に、患者さんにやさしいがんの治療を行っている病院です。当院には3つの最新放射線治療装置があり、患者さんそれぞれの疾患や体の状態に応じて熟練の放射線科医が治療にあたっています。

今回は神戸低侵襲がん治療センターの特徴やとりくみについて病院長の藤井正彦先生にお話を伺いました。

神戸医療センター

神戸低侵襲がん医療センターは、神戸大学医学部附属病院の医師たちが高精度の放射線治療を行うことを理念として、2013年に開院しました。「小さく見つけてやさしく治す」をコンセプトに「低侵襲」を掲げ、患者さんにやさしいがん治療に努めています。

当院は神戸医療産業都市に制定された神戸市のポートアイランド内に位置しています。神戸医療産業都市とは、「市民福祉の工場」「神戸経済の活性化」「国際社会への貢献」を目的とし、先端医療の研究や、メディカルクラスター(高度専門病院群)の形成を行う地域のことです。当院はこの地で高度専門病院の1つとして、地域の方だけでなく全国から受診される患者さんへより適切ながんの診断・治療を目指しています。

神戸医療センター 屋上

神戸医療センター

当院は2017年で開院より5年目となります。開院当初は「低侵襲とは?」「具体的にどんな治療を行うの?」という疑問を持たれる医療従事者や一般の方が多く、私たちのやりたいと思うがん治療を周囲に理解していただくために説明しなければならないことも多々ありました。

そこで実際に大学病院や市民病院、がんセンターなどへ赴き、当院のPRや放射線治療の有用性についてお話する講演会なども積極的に開催しました。すると、外科医の先生などからも「放射線治療はこんな利点があるのか」「放射線治療の副作用はこんなに抑えられるようになったのか」とご納得いただけることも増え、徐々に当院にご紹介くださる件数が増加してきました。

現在では受診される患者さんのおよそ90%は他の病院からの紹介で、北は北海道、南は沖縄と全国から当院にいらっしゃいます。また、そのうちの75%は国や都道府県から指定を受けたがん診療拠点病院からのご紹介です。

その一方で残りの10%ほどの患者さんはご自身で当院をみつけて受診されます。がんの患者さんのなかには病状が進行し、受診していた病院から「治療が難しい」と断られてしまって、藁をもつかむ思いで当院を受診される方もいらっしゃいます。そうして当院を見つけていらっしゃった患者さんにも適切な治療を模索していきます。あるいは患者さんの症状に応じて、より適切な医療施設のご紹介を行っています。

当院は「小さく見つけてやさしく治す」をコンセプトにがんを治療しています。しかし、当院を受診された患者さんのなかにも数ある治療方法のなかで、手術治療が最善であると判断されるケースがもちろんあります。

このような場合にはすみやかに適切な医療機関への逆紹介を行います。幸い当院は神戸大学医学部附属病院との強い連携もあり、神戸周辺地域の方であれば神戸大学医学部附属病院や隣の神戸医療センター中央市民病院などへご紹介することが多いです。

また当院で治療された患者さんのほとんどは治療後に在宅復帰されていますが、万一それができなかった場合には患者さんのご自宅に近い後方支援病院や緩和ケア病棟へご紹介することもあります。このように他の病院との連携をしっかり行うことで、患者さんに安心して治療を受けていただけるように努めています。

当院では「切らずに治す」ことを目標にさまざまな最先端の治療が行われています。代表的な治療方法は下記のとおりです。

<代表的な神戸低侵襲がん治療センターの治療>

  • 高精度放射線治療
  • 化学療法
  • IVR
  • 内視鏡治療
  • がんリハビリ など

ここでは当院の治療のなかで最も中心的となる放射線治療について詳しくご説明します。

神戸医療センター

当院の最も大きな特徴の1つが高精度の放射線治療設備と、それを使いこなす熟練の放射線治療専門医5名の駐在です。当院にはタイプが異なる3つの放射線治療装置があります。

<神戸低侵襲がん治療センターの放射線治療装置>

  • サイバーナイフ
  • トゥルービーム
  • トモセラピー

これらの装置はがんの形状や病期、放射線を照射する目的(根治のためなのか、予防・緩和のためなのか)などによって最適な治療方法を選択し、治療装置が使い分けられます。これらの装置が3種類そろっている施設は、開院時には当院だけであり、今でも日本全国で数施設しかありません。

また医師や看護師、医療従事者にとっても、このような高精度の治療をより効果的に行うためには、症例数を重ねることが非常に大切です。その点、当院ではこのような高精度の放射線治療を必要とする患者さんが多く集まることで、医療従事者が経験を積みさまざまなスキルを身につけることができ、患者さんにも安心して効果的な治療を受けていただくことができます。

当院には5名の放射線治療専門医のほか、院長である私を含めて4名の放射線診断専門医が所属し、よりよい診断・治療を進めていくために強い連携体制を構築しています。

当院の放射線診断専門医は患者さんの診断はもちろん、患者さんの経過観察に参加し治療効果の評価も行っています。たとえば、他の病院から患者さんをご紹介いただいた場合、まずはご紹介いただいた疾患以外にも問題や異変がないかどうか、全身を診るジェネラルな目が放射線診断専門医の大きな強みです。そのうえで適切と判断された治療を行った後の経過を確認していくのも放射線診断専門医の役目です。

従来の大きな病院では、複数あるすべての診療科の画像診断を放射線診断専門医が行うことが多く、1つ1つの症例にかけられる時間が非常に限られてしまいます。しかし当院では放射線診断専門医が1つ1つの症例を丁寧に診ることができ、そのうえ治療の進行にも携わることで、その都度患者さんに最適な治療を提案する主体的な診療ができる環境となっています。

藤井正彦先生

がん全体の5年後生存率は50%を超え、今やがんは克服できる疾患になりつつあります。現在でも、がん治療の第一選択は手術治療といわれています。しかし、私はがん治療の進歩に放射線治療が果たしている役目も十分に大きいと自負しています。「放射線治療で治るがんが多くある」ということを、一般の方にも広くご理解いただきたいと考えています。

自分ががんと診断されたとき、どんな治療が適しているのかと不安になる方は多いのではないでしょうか。まずは一度、治療を行う上で何を大切にしたいのかをよく考える機会をぜひ作ってみてください。そしてより低侵襲な治療を検討してみたいと感じられたら、ぜひ当院にご相談ください。

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  • 神戸低侵襲がん医療センター 理事長・病院長 、神戸大学 大学院医学研究科客員教授

    藤井 正彦 先生

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