大分市医師会立アルメイダ病院では人間愛の精神に基づき、地域の会員との共同による診療や、研修医をはじめ若手医師や看護師、薬剤師の育成を行っています。
病院設立の経緯と特徴、地域における役割、環境などについて、病院長の杉村忠彦先生にお話を伺いました。
地域の医療を支えている一部の医療機関では、より高度な検査ができるような設備や患者さんの入院用ベッド、なにより診療する医師のマンパワー不足が深刻な時期がありました。こうした問題を受けとめた各地の医師会は、地域の医師を支えるための病院をそれぞれ立ち上げました。私たち大分市医師会立アルメイダ病院は1969年4月、全国で17番目に開院した医師会立病院です。
当院は、大分市医師会(地域医師会員)の共同利用施設として「人間愛の精神」に基づいた高度な医療を提供することにより地域社会へ貢献します。を理念としております。
16世紀後半に日本へやってきたポルトガル人宣教師ルイス・デ・アルメイダは、病人を救済するため私財を投じて府内に洋式病院を建てました。ここでは外科手術の実施や医学校・育児院の開設など、日本で初めての取り組みが実施されました。当院はアルメイダの偉業と彼の説いた人間愛の精神をたたえ、業績を受け継ぐべく名付けられました。
100床で開院した大分市医師会立アルメイダ病院は、病棟増築や新診療科開設などを経て2018年4月現在では406床、うち緩和ケア病床は21床を有しています。当院の病床はすべて、地域の医師と当院の医師が連携して患者さんの治療にあたる開放型病床です。
1978年に三次救命救急センター、1997年には大分県内の災害拠点病院(地域災害医療センター)に指定されたこともあり、2008年の建て替えでは免震機能を採用、大型地震が発生しても診療機能への影響を最小限に食い止められるようにしました。
当院は医師会員による共同利用施設のため、かかりつけ医からの紹介状をお持ちいただいたうえで受診していただき、当院で検査や診療が終了したら再びかかりつけ医を受診していただく、質の高い医療をなるべく多くの方に提供できるようなシステムを採用しています[注1]。そのため2018年4月現在、75名の医師[注2]が30の診療科で受け入れる外来患者数は1日あたり200名程度です。
[注1]救急搬送による診療は例外
[注2]これらの従業員の人数や配置状況は現在の実態とは異なる可能性があります。
医療サービスの質を維持するため、国際標準規格ISO9001を取得しました。これは製品やサービスの品質の継続的な向上を目的とした、品質マネジメントシステムの規格のひとつです。時代や地域のニーズにあった医療を、より多くの患者さんにご満足いただけるようなかたちで提供できるよう、職員一同取り組んでいます。
大分県内で三次救急[注3]対応可能な救命救急センターの必要性が叫ばれていたことを受け、大分市医師会立アルメイダ病院では1978年10月から救命救急センターとしての活動を開始しました。以来現在に至るまで、市内および県南部の救急医療を支え続けています。
当院では、より重篤で高度な診療が必要な患者さんを多く受け入れています。
[注3]三次救急:重症かつ緊急度の方を対象とした医療
2012年からは緩和ケア内科の診療を開始しました。緩和ケア内科では、がん患者さんが感じる痛みや苦しみを可能な限り取り除き、普通の生活を送れるようにするための診療が中心です。また自宅で過ごしたい方には、在宅医療や介護保険の導入など退院準備の支援も行っています。
当院では日本緩和医療学会が認定する緩和ケア専門医が勤務しており、患者さんやご家族のみなさまの心に寄り添ったケアを提供できるよう取り組んでいます。
私たちアルメイダ病院では、研修医はじめ次世代の医療を担う若手医療者の育成にも注力しています。
当院では75名の医師が勤務しており、2018年4月には麻酔科と緩和ケア科にそれぞれ30代の医師が就任しました。外科と消化器外科では、私も在籍経験がある東京女子医科大学病院の医師を多数受け入れています。
当院では難易度の高い症例数も手術実施件数も非常に多いため、医師一人ひとりにかかる負担は大きいです。しかし各診療科には閉塞感がなく、些細なことでも他科に相談しやすい空気があります。治療方針などで悩んだときには診療科の垣根を越えて相談したり、珍しい症例を受け入れた際には他科の先生にも積極的に声をかけたりする姿をよく見かけます。
そのため、短期間でより多くの経験を積もうと当院での研修を志望する学生や若手医師は非常に多いです。また最近では、Uターン転職で大分県に戻ってきた医師も増えつつあります。
医療現場では想像以上のマンパワーが求められます。当院では393名の看護師が勤務しています。
県内の看護学校の学生に向けたアンケートにより教育体制の充実が就職先決定時に重視されていたことを受け、当院では教育に専従する看護師を任命、それぞれの成長段階に応じたサポートや研修を提供できるような体制をつくりました。
県内の一部の大学院では看護学をより深く学ぶための実践者コースが開設されており、当院ではこれまでに10名が働きながら大学院へ進学しました。ワークライフバランスを形成しやすいだけでなく学びやすい環境を整えることも、看護力の底上げと患者さんへの医療サービスの充実につながっていると感じています。
また看護部長(副院長)が国際看護学講師として県内の看護学校に講義に出向いたり、インターンシップを希望する学生を県内外から受けいれたりするなど、未来の看護師育成にも尽力しています。
31名の薬剤師が在籍しており、病棟、救急、手術室、緩和ケアなどそれぞれの現場に専従薬剤師として専従配置しています。災害医療拠点病院として指定されていることもあり、DMAT隊員としても予備配置されています。
分業化・業務効率化は医療現場でも叫ばれていることもあり、昨今では薬剤師の仕事は調剤のみと誤認されがちです。しかし当院では、医師と一緒に患者を診る共同診療や日当直など、本来の薬剤師のはたらき方をしていただいています。
多くの薬剤を扱えるだけでなく、現場で患者さんと向き合い薬剤師の仕事の本質にも触れられることなどが注目を集め、2019年度の募集に対しすでに問い合わせも頂いている状態です。
2018年度の採用もフルマッチを達成しました。これは、アルメイダ病院ではたらく大勢の職員の献身を評価していただけた結果として、非常にありがたく受け止めています。
よい医師を育てることは、当院の使命であり地域貢献でもあります。よい医師は腕が立つだけでなく、素晴らしい人間性と温かい心も兼ね備えています。どんなに頭がよく技量に優れていても、挨拶ができなかったり相手のことを思いやれなかったりするようでは、よい医師とはいえません。
私自身、「人間は誰もがよい心を持っている。人間性に問題があるのは途中で何かあったから」と考えています。こうした方と接する場合には、心のわだかまりをとかして、あるべき方向に少しずつ戻していけるようこころがけています。よい医師の育成とは、ある意味人間育てでもあるのです。
当院では副院長(医師4名、事務1名、看護師1名)を中心とした現場の意見を重視する体制をとっています。副院長の権限が大きく自由度が高いことは、会議での積極的な議論や職員同士の連携などに一役買っています。
副院長以下にさまざまなことをお願いしているぶん、私自身の仕事は職員を褒めることだと考えています。
職員一人ひとりに患者さんを大切にしてほしいからこそ、まずは私から相手を信頼して、頑張りやよいところを積極的に褒めています。相手を尊重して慈しみ思いやる心を育んでもらい、それぞれが心に抱く人間の精神を以て、より多くの患者さんに医療を提供してもらいたい。それが院長である私の務めと願いです。
大分市医師会立アルメイダ病院 院長、大分市医師会 会長
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。