遅発性内リンパ水腫とは、高度感音難聴*が起こった数年〜数十年後にめまいを繰り返すようになる病気です。めまいを生じる病気はたくさんありますが、この病気で起こっている高度感音難聴やめまいには、どのような特徴があるのでしょうか。
今回は、めまいの診療に長く携わっていらっしゃる聖マリアンナ医科大学病院の肥塚 泉先生に、遅発性内リンパ水腫の原因や症状についてお話しいただきました。
耳のなかにある蝸牛(かぎゅう)や、聴神経(蝸牛神経)の障害によって生じる難聴。70dB以上90dB未満の聴力レベルになるため聞き取りに限界がある状態を指す。
遅発性内リンパ水腫とは、片耳あるいは両耳に高度感音難聴が起こった数年〜数十年後に、発作性のめまいが繰り返し生じる病気です。日本では、4,000〜5,000人程度の患者さんがいるといわれています。
めまいに先行して起こる高度感音難聴は、原因不明のものがもっとも多いといわれています。次いで突発性難聴、ムンプス難聴(おたふく風邪と呼ばれることもあるウイルス感染症による難聴)が多いことがわかっています。
遅発性内リンパ水腫は、あらゆる年代で起こる可能性があります。たとえば、子どもの頃におたふく風邪によるムンプス難聴にかかった方が、成人してからめまいを繰り返し起こすことがあります。あるいは、30歳くらいで突発性難聴を起こした方が50〜60歳でめまいを生じるようになることもあるでしょう。
2018年5月現在、この病気の発症に男女差は認められていません。
遅発性内リンパ水腫以外にもめまいが起こる病気はありますが、それらの病気と遅発性内リンパ水腫の違いは、めまいを発症する数年〜数十年前に高度感音難聴が起こったかどうかです。遅発性内リンパ水腫で認められるめまいは、メニエール病で認められるめまいとよく似ています。
記事2『遅発性内リンパ水腫の診断と治療-ストレス解消の効果とは?』で詳しくお話ししますが、めまいに加えて高度感音難聴が先行している場合に、遅発性内リンパ水腫と診断されます。
遅発性内リンパ水腫は、めまいが生じる耳が、過去に生じた高度感音難聴と同側の耳なのかどうかによって、同側型と対側型に分類されます。
同側型とは、過去に高度感音難聴を発症した耳からめまいが生じるものを指します。
一方、対側型とは、高度感音難聴を発症した耳とは反対側の耳からめまいが生じるものを指します。ただし、対側型は反対側の耳に新たに発症したメニエール病と鑑別できないことが多く、独立した病気であるかについてはいまだ議論の最中です。
2018年5月現在、遅発性内リンパ水腫の原因は解明されていません。
遅発性内リンパ水腫は、先行する高度感音難聴がめまいの発症に関連していることが考えられます。しかし、めまいが高度感音難聴の結果として起こるのかどうかはわかっておらず、研究が続けられています。
めまいに先行する高度感音難聴は、片方の耳に起こることが多いですが、両方の耳に起こる場合もあります。
遅発性内リンパ水腫を引き起こす難聴は、高度感音難聴と呼ばれるものです。高度感音難聴は、主におたふく風邪や突発性難聴、原因不明の難聴によって起こるといわれています。
難聴は、その程度によって軽度、中等度、高度、重度の4つのレベルに分けられます。このうち、高度難聴とは、70dB以上90dB未満の聴力レベルを指します。これは、非常に大きな声でなければ会話が聞こえない状態を指し、聞き取りに限界がある状態です。聴力が実用的なレベルでなく、日常生活に支障をきたす状態を意味します。
難聴には、伝音難聴と感音難聴があります。このうち、遅発性内リンパ水腫に先行する難聴は、感音難聴です。
伝音難聴とは、耳の外側にある外耳が耳垢などでふさがったり、中耳の病気によって音が伝わらなくなる難聴です。一方、感音難聴とは、音を電気信号に変換するマイクロホンのような役割を果たす蝸牛や、その情報を脳に伝える電線のような役割を果たす聴神経(蝸牛神経)、または音の処理を行っている脳の障害によって生じる難聴です。
遅発性内リンパ水腫で起こる主なめまいは、自分自身や周囲の景色がぐるぐると回っているように感じる回転性めまいです。また、体がふわふわと浮いているように感じる浮遊性めまいを繰り返すこともあります。
これらのめまいには、吐き気や嘔吐を伴うこともあるでしょう。
遅発性内リンパ水腫のめまいは突然起こります。めまいの持続時間は人によって異なり、10分程度でおわることもあれば、数時間続くこともあります。めまい発作の頻度にも個人差があり、週に数回起こることもあれば、年に数回程度のことあります。
ただし、1日に複数回起こる場合には、遅発性内リンパ水腫とは診断されず、他の病気である可能性が高いでしょう。
遅発性内リンパ水腫の進行のスピードには、個人差があるといわれています。しかし、たとえば、めまいの症状が重い場合であっても、記事2でお話しする治療や生活の改善によって症状が和らぐこともあるでしょう。
遅発性内リンパ水腫の診断と治療に関しては、記事2『遅発性内リンパ水腫の診断と治療-ストレス解消の効果とは?』をご覧ください。
聖マリアンナ医科大学 耳鼻咽喉科学 教授
肥塚 泉 先生の所属医療機関
「遅発性内リンパ水腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。