概要
メニエール病とは、体の平衡感覚をつかさどる耳の奥の“内耳”にリンパ液がたまることによって生じる病気のことです。30~50歳代で発症することが多く、発症すると耳が詰まったような違和感や軽度の聴力低下が引き起こされます。そして、体の平衡感覚に異常が起きて回るようなめまいが生じ、耳鳴りやさらなる聴力の低下が起こるようになるとされています。このような症状は通常片方の耳にのみ生じますが、もう片方の耳に発症することも多く、一度症状が治まっても再発を繰り返していく過程で聴力が徐々に低下することが特徴です。
基本的な治療は薬物療法ですが、メニエール病は治療が難しいことも少なくありません。また、メニエール病はストレスや疲れがたまったときに再発しやすいため、生活習慣を改善し再発を予防していく必要があります。
原因
メニエール病は、体の平衡感覚をつかさどる内耳と呼ばれる部位にリンパ液が過剰にたまる“内リンパ水腫”によって引き起こされます。
しかし、どのようなメカニズムで内リンパ水腫が生じるのか明確には解明されていません。現在のところ、内耳構造の生まれつきの異常やアレルギー、免疫の異常、内耳への血流不足などが要因として挙げられており、単独ではなくいくつかの要因が重なって発症するとも考えられています(2020年4月時点)。
また、メニエール病はストレスや疲れがたまったときに再発を繰り返しやすいため、自律神経のバランスの乱れも何らかの関係があるとの説もあります。
症状
メニエール病の特徴的な症状は、ぐるぐる目が回るような“回転性めまい”、“耳鳴り・難聴”、“吐き気”などです。
発症の仕方は個人差がありますが、一般的には耳が詰まったような違和感や耳鳴り、聴力の低下などが突然現れ、その後めまいの発作が生じます。めまいの発作は30分から数時間続くことが多く、吐き気や嘔吐を伴うことも少なくありません。
そして、メニエール病はいったんこれらの症状が治まったとしても再発しやすいことが特徴のひとつです。再発を繰り返していくうちに症状は悪化していき、特に聴力の低下は発症当初は低い音のみが聞こえにくくなるものの、進行すると高い音も聞き取りにくくなります。
検査・診断
メニエール病のように吐き気や聴力低下などを伴うめまいを引き起こす病気は多々あります。そのため、メニエール病の診断を下すにはメニエール病に特徴的な検査のほかにもそれらの病気を除外するための検査が必要になります。
具体的には次のような検査が行われます。
聴力検査
音の聞こえを調べる検査です。メニエール病は低い音が聞こえにくくなることが特徴であり、聴力低下の仕方を調べることで診断の手がかりとすることができます。
また、再発を繰り返す場合には聴力の状態を調べるため定期的な検査が必要になることも少なくありません。
眼振検査
特殊な検査用眼鏡を装着して眼振(目の揺れ)の有無を調べる検査です。メニエール病のめまい発作が生じているときは、眼振が見られます。
グリセロールテスト
リンパ液の排出を促すとされるグリセロールと呼ばれる利尿剤を服用し、服用前と服用後の聴力の違いを調べる検査です。メニエール病では、利尿剤によって発症原因とされる内リンパ水腫が改善されると聴力改善が見られます。
画像検査
メニエール病のような症状は聴神経腫瘍など頭蓋内の病気によって引き起こされることもあるため、それらの病気との鑑別を行うためにも頭部CTや頭部MRIなどの画像検査を行うのが一般的です。また最近は、高解像度のMRIを使用することで、内耳の内リンパ水腫を直接検出することも可能となっています。
治療
メニエール病は大きく分けて次の三つの治療が重症度や患者の希望などによって行われます。
薬物療法
メニエール病に対する薬物療法では、めまい発作を抑える薬と内リンパ水腫自体を改善する薬が使用されます。
めまいを抑える薬として炭酸水素ナトリウムなどをはじめとした抗めまい薬が代表的ですが、そのほかにも吐き気止め、自律神経調節薬などめまいに伴う症状を改善するための薬が用いられます。
一方、内リンパ水腫を改善するためには利尿剤やステロイド薬が有効とされています。
鼓室内注入術
鼓膜に穴をあけ、鼓膜の内部に薬剤を直接注入する治療法です。メニエール病ではゲンタマイシンなどの抗菌薬の一種が用いられています。
手術
薬物療法や鼓室内注入術を行っても症状が改善せず進行していく場合には、手術を行うことも少なくありません。
さまざまな手術方法がありますが、聴力がある場合は内耳のリンパがたまる部位を切開する“内リンパ嚢開放術”などが行われます。一方、すでに聴力が著しく低下し今後も回復が望めない場合には、症状の原因となる内耳の構造を破壊する“内耳破壊術”が行われることがあります。
メニエール病はストレスや疲れが発症や再発の引き金になることがあります。そのため、メニエール病を予防するには、ストレスを解消する方法を見つけて十分な休養を取るなど、日頃からストレスや疲れがたまりにくい生活を送ることが大切です。
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難聴について
仕事を続けるべきか。メニエール病を緩和する治療、生活方法がないか。
たすけてください。
メニエール病を発症して 約、3ヶ月が経過してます。 薬を飲んでも、症状が治らず 仕事に集中できません。 耳鼻科の先生から 症状が治らなかったら 心療内科の方へかかってくださいと 言われました。 心療内科に行ったら治りますか?
4月からめまい
4月頃から夕方によくグラグラするめまいがありました。いつか治ると思っていましたが、5月に悪化し歩くのもやっとな状態になりました。検査も異常はなく、造影剤無しのCT、MRIも異常は無くメニエールの疑いということで現在治療をしています。 2018年の夏頃に、グルグル回る、回転性のめまいが一週間ほど続き、食事もとれず、水分補給とトイレに行くのみで、ほとんどを寝て過ごすめまいがありました。このときは受診をしませんでした。そこからめまいがよくあり、ビクビクしながら過ごしていました。 年明け頃からめまいの頻度も減っていたと思っていた矢先に今回のめまいがありました。 一向に良くなる気配がなく、お医者さんにもゆっくりと、と言われました。 5月に起きた初期症状としては、ふわふわめまい、足下が沈み歩いているのに地面に足が付いてないような感覚でした。そこから内科などを受診していくうちに耳の痛み、新幹線などに乗った時に起こる詰まった感じがあります。頭痛や頭重感もあります。 耳鼻科ではフレンツェル眼鏡で眼振はなく、中耳炎ではないと言われました。聞こえの検査も続けていますが、正常値内で、良くなったり悪くなったりだから、メニエールの可能性ということでした。 脳神経で写真をとった際にはくも膜のう胞の診断でした。指を追いかける検査では少し片方の目が追いかけづらそうで右耳に異変があると言われました。 気になっているのは平熱が35度後半なのに、36や37度台の熱が毎日あります。昨年あたりからよく熱があり、緑色の痰が出るようになりました。耳鼻科では微熱に関しては分からないといわれました。昨年の1回目のめまいの前にも風邪をひいていたため、内耳に菌が入っていないか心配です。最近も熱と痰が続いていたため、耳鼻科に行ったところ、喉鼻風邪と診断。 現在のめまいは急に引っ張られるかんじ、急に横にクルッと回されるかんじ、船で大きな波の上に乗っている感じ、ふわふわ、地震のような感じ、傾いていく感じです。 調べていると、前庭神経炎というものが出てきました。グルグルと回り続けるめまいではありませんが、メニエールと疑った治療も意味が無いのではと思いました。菌が入っていたとしたら自然に治るのでしょうか?また、どういった治療になるのか教えて頂きたいです。他に首からもめまいが起きると書いてありました、何科を受診すれば良いでしょうか。
頭痛がするよ
10年前くらいにメニエルをしました。耳の検査は少し年代より低いと言われました。
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