概要
遅発性内リンパ水腫とは、高度感音難聴*を発症した数年〜数十年後に、発作性のめまいを繰り返す指定難病のひとつです。高度感音難聴は、片耳あるいは両耳に起こります。日本には、4,000〜5,000人程度の患者さんがいるといわれています(2018年5月時点)。
この病気は、あらゆる年代で起こる可能性があります。また、男女ともに発症する可能性があります。
*耳のなかにある蝸牛や、聴神経(蝸牛神経)の障害によって生じる難聴。70dB以上90dB未満の聴力レベルになるため聞き取りに限界がある状態を指す。
原因
遅発性内リンパ水腫の原因はわかっていません。現時点では、先行する高度感音難聴がめまいの発生に関連している可能性が考えられています。めまいに先行する高度感音難聴は、片方の耳に起こることが多いですが、両方の耳に起こる場合もあります。
しかし、めまいが高度感音難聴の結果として起こるのかどうかまではわかっておらず、研究が続けられています。(2018年5月時点)
症状
遅発性内リンパ水腫の主な症状は、高度感音難聴とめまいです。まず高度感音難聴が起こり、数年〜数十年の期間を経てめまいが現れます。
高度感音難聴
遅発性内リンパ水腫では、高度感音難聴と呼ばれる難聴が起こります。高度感音難聴を発症すると、非常に大きな音でなければ聞きとることができなくなり、日常生活に支障をきたします。
遅発性内リンパ水腫に先行する高度感音難聴は、原因不明のものが多いといわれています。しかし、なかには突発性難聴やウイルス感染症のムンプス難聴(おたふく風邪と呼ばれることもあるウイルス感染症による難聴)による場合もあります。
めまい
めまいは、難聴が生じた数年〜数十年後に起こります。めまいの種類は、自分自身や周囲の景色がぐるぐるとまわっているように感じる回転性めまいです。あるいは、体が浮いているように感じる浮遊性めまいが起こることもあります。
めまいには、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
検査・診断
高度感音難聴とめまいの症状を確認
遅発性内リンパ水腫を診断するための診察では、高度感音難聴とめまいの二症状が現れていることを確認します。特に、めまいが起こる数年〜数十年前に高度感音難聴を発症していたかを確認することが、この病気を診断するうえで大切です。
MRIによる画像検査
MRIによる画像検査を行うこともあります。画像検査によって耳の内部に内リンパ水腫(耳の内部の内リンパ腔と呼ばれる場所に水がたまること)を確認することができれば、診断の参考になるといわれています。
治療
遅発性内リンパ水腫の治療は、めまい発作が生じている際中の急性期と、めまいがおさまっている発作間欠期の治療に分けられます。
急性期の治療
急性期の治療では、安静にすることに加え、めまいを抑える抗めまい薬、吐き気や嘔吐を抑える制吐薬、脱水に対する補液などが行われます。
発作間欠期の治療
めまい発作がおさまったら、再発予防が大切です。再発予防には、生活習慣の改善が有効といわれています。たとえば、ストレス解消が症状の改善につながるでしょう。
また、薬物療法、水分摂取、有酸素運動なども効果があると考えられます。まれではありますが、専門家によって手術の効果があると判断された場合には、めまいの症状を制御するために耳の手術を行うこともあります。
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