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関節リウマチ薬の治療法 抗リウマチ薬の重要性について

関節リウマチ薬の治療法 抗リウマチ薬の重要性について
島田 浩太 先生

東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病内科 部長

島田 浩太 先生

目次
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関節リウマチでは、抗リウマチ薬による薬物治療が非常に重要です。抗リウマチ薬には、関節の炎症や、骨や軟骨の破壊を抑制する効果があり、抗リウマチ薬の登場によって関節リウマチの治療は大きく発展しています。

今回は東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病内科 部長の島田 浩太(しまだ こうた)先生に、関節リウマチの治療法についてお話を伺います。

 

※関節リウマチの発症メカニズムや症状については記事1『関節に炎症が起こる「関節リウマチ」の症状とは?』をご覧ください。

関節リウマチでみられる関節の痛みや腫れの症状は、ほかの病気とよく似ていることがあるため、診断が難しいことがあります。たとえば、関節の症状が、実は感染症や悪性腫瘍が原因だったということも少なくありません。そのため、「全身の診察・血液検査・尿検査・レントゲンを含む画像検査」を行うことで、関節リウマチ以外の病気を除外していくことが重要です。

また、関節リウマチを疑う検査所見としては、血液検査によるリウマトイド因子や抗CCP抗体の異常値が挙げられます。

関節リウマチの確定診断がついたあとは、治療方針を決定していくために関節リウマチの重症度を評価する必要があります。重症度を評価するためには、以下の4つについて総合的に評価します。

  • 疾患活動性
  • 進行度
  • 合併症の有無
  • 日常生活の不自由度

疾患活動性

重症度を評価するためにまず重要なことは、疾患活動性を確認することです。疾患活動性とは、病気の勢い(関節がどのくらい炎症しているか)を表します。

進行度

関節リウマチにおける進行度とは、骨や軟骨の破壊がどれくらい進んでいるかを表したものです。患者さんのなかには、骨の破壊が進んでいるにもかかわらず、血液検査で炎症はほとんどみられないこともあるため、疾患活動性とは区別して評価していく必要があります。

合併症の有無

患者さんがもともと持っている病気によっては、使用できない治療薬があります。また、関節リウマチに合併して起こる病気(間質性肺炎など)がないかどうかも確認しておく必要があります。

日常生活の不自由度

関節リウマチによって感じる日常生活の不自由度は、患者さんによってそれぞれです。たとえば、平屋建ての家に住んでいる患者さんと、エレベーターのないマンションの5階に住んでいる患者さんでは、不自由度は大きく異なります。

そのため、診察時には、患者さんが日頃感じている不自由度についてよく聞き、少しでも快適な生活が送れるようにするために、治療方針を決定していく必要があります。

関節リウマチの発症原因は、2018年6月時点でわかっていないため、根本的な治療はありません。しかし、体のなかで何が起こっているのかというメカニズムや、治療におけるターゲットがわかってきたため、寛解を目指すための治療ができるようになってきました。また、寛解状態を維持することで、骨や軟骨の破壊を食い止めることができることもわかってきています。

寛解‥治癒したわけではないものの、症状が落ち着いて安定した状態

関節リウマチでは、以下の4つが治療における柱です。

  • 薬物治療
  • 手術治療
  • リハビリテーション
  • 基礎療法(日常生活をどのように送ればいいかなど)

これらのなかから何か1つを選択して行うのではなく、患者さんの状況に合わせて適切に治療法を組み合わせながら治療を行います。

このなかでも、特に重要な治療は薬物療法です。なぜなら、薬物療法だけが関節リウマチの進行を抑えたり、予後を改善させたりするという医学的な根拠があるためです(2018年6月現在)。

関節リウマチの薬物治療で使用する主な薬剤は以下の3つです。

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • ステロイド薬
  • 抗リウマチ薬

このなかで、特に重要な役割を果たす薬剤が、リウマチの進行を抑制する効果が期待される抗リウマチ薬です。

非ステロイド性抗炎症薬やステロイド薬は、関節の痛みを和らげたり、炎症を抑えたりすることはできますが、骨や軟骨の破壊を止めることはできません。

そのため、抗リウマチ薬を使用しても痛みの症状が緩和されない場合に、補助的に非ステロイド性抗炎症薬やステロイド薬を使用します。

関節リウマチと診断された場合には、できるだけ早く抗リウマチ薬を使用することが大切です。

抗リウマチ薬のなかでも特に重要な役割を果たすものが「メトトレキサート(MTX)」です。メトトレキサートは、関節の炎症を抑制するだけでなく、骨や軟骨の破壊の進行を抑える効果が期待できる薬剤です。また、メトトレキサートの使用によって生命予後が改善できることもわかっています。

これらの理由から、関節リウマチの確定診断がついたら、まずはメトトレキサートの投与を検討します。その後は、約3か月でメトトレキサートの有効性を評価し、寛解が得られない場合には他の抗リウマチ薬を併用します。

メトトレキサート以外の主な抗リウマチ薬として、生物学的製剤や分子標的型合成抗リウマチ薬が挙げられます。

生物学的製剤

関節リウマチでは、関節内の炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)が活発にはたらいています。生物学的製剤は、炎症性サイトカインを抑え込む作用をもつ薬剤です。この薬剤を投与することで、関節内の炎症を抑制することができます。

抗体は病原体が体内に入ってきたときに、その病原体に特異的に結合することで体を守る物質で、通常は自分の体にある物質に対してはつくられないようになっています。ですから、自身の炎症性サイトカインに対して抗体が発現することもありません。

生物学的製剤は、自分の体のなかにある炎症性サイトカインなど、関節リウマチを悪化させる物質に特異的に結合する薬剤です。生物学的製剤が炎症性サイトカインの抗体となることで、関節内の炎症を抑制することができます。

分子標的型合成抗リウマチ薬

分子標的型合成抗リウマチ薬

そのほか、分子標的型合成抗リウマチ薬という抗リウマチ薬も登場しています。

分子標的型合成抗リウマチ薬とは、炎症性サイトカインの刺激を細胞内の核に伝えるジャック(JAK)という物質のはたらきを抑制する薬剤です。

ジャックの働きを抑制することで、細胞は炎症性サイトカインの異常な発生を抑えることができるため、結果的に炎症を抑制する効果が期待できます。

関節リウマチでは、手術を行うことがあります。それでは、手術はどのような場合に行うのでしょうか。

炎症を起こしている滑膜(関節を包んでいる薄い膜)を取り除くことで炎症を抑える滑膜切除手術を行うことがあります。

滑膜切除術は昔から広く行われてきた手術ですが、滑膜を切除したとしてもまた別の場所で炎症が起きてしまうことがあったため、一時は手術件数が減少傾向にありました(海外データ)。

しかし近年、先述した抗リウマチ薬の登場によって炎症を抑えこむことができるようになってきたため、炎症を起こしている滑膜を切除すれば、炎症が再発することは少ないのではないかといわれています。そのため、近年は滑膜切術の必要性について再び見直されはじめています。

すでに骨や軟骨が破壊されてしまっている場合、薬物治療でそれを修復することはできません。そのため、骨や軟骨の破壊によって強い痛みがあり、日常生活を送ることが困難な場合には、壊れた部分を取り除き、代わりに人工関節を入れる手術を行います。

また、最低限の日常生活動作を行うためだけでなく、日常生活をより豊かなものにするための手術が多く行われています。たとえば、「足の指の変形を治して長距離を歩くハイキングをしたい」「手指の変形を治して楽器の演奏がしたい」というように、非常に積極的な手術へと変わってきています。

関節リウマチは患者さんによって現れる症状や治療効果がさまざまなため、日々の診療において治療効果を測定することが非常に重要です。

診療では、関節リウマチの治療効果や疾患活動性を評価するための「DAS28」「CDAI」「SDAI」「RAPID3」という指標や、日常生活における不自由度について評価する「MDHAQ」という指標などを使用して、治療方針を決定していきます。

多摩総合医療センターの電子カルテ上のMDHAQの質問項目

また、診療時にできるだけ患者さんからお話を伺うことも大切です。そこで、当院では受診前にタッチパネル式の問診票に入力していただくようにしています。

事前に問診を行うことでRAPID3が算出された状態で診察を行うことができますし、問診時間が省略されるため患者さんの訴えに耳を傾ける時間を増やすこともできます。

ここまでお話ししてきたように、抗リウマチ薬などの登場によって関節リウマチの治療は大きな進歩を遂げています。しかしながら、リウマチ専門医の数は全国的に少なく、どの病院でも同じ治療を受けることができるとは限りません。

一方で、インターネットの普及により世の中にはありとあらゆる情報が溢れています。しかし、これらのなかには誤った情報も紛れているため、情報を得る際にはその信憑性について判別・整理しなくてはいけません。

ですから、自分で調べた情報だけを鵜呑みにするのではなく、気になることがある場合には、リウマチ専門医に相談していただきたいと思います。

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  • 東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病内科 部長

    島田 浩太 先生

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