独立行政法人 地域医療機能推進機構 (略称:JCHO)神戸中央病院は兵庫県神戸市北区にある急性期病院です。健康管理センターや介護老人保険施設など複数の附属機関を有し、予防から緩和ケア、介護に至るまで幅広い医療ケアサービスを地域に提供してきました。2014年4月には厚生労働省が管轄するJCHOグループに参画し、今後ますます地域のための医療提供にむけた体制の強化をめざしています。そんな同院の取り組みや、めざす医療について、院長である大友敏行先生にお話を伺いました。
兵庫県神戸市北区にある当院は、25診療科・424病床数を有する地域の急性期病院です(2018年12月時点)。健康管理センターや訪問看護ステーション、介護老人保険施設など複数の附属機関を有し、予防から介護に至るまで幅広い医療ケアサービスを提供してきました。また、二次救急指定病院として、神戸市北区で発生する救急搬送を受け入れており、救命救急の分野においても患者さん一人ひとりに適した、迅速な対応に尽力しています。
当院の前身である健康保険神戸中央病院が開院したのは1948年(昭和23年)のことです。当時、第二次世界大戦の傷跡が残る神戸の街に医療機関はなく、地域の方々が診療を受けられる施設としてつくられたのがこちらの病院でした。もともとは現在の神戸大学がある近辺に建てられたといいます。神戸市の都市開発が進められるなか、現在の場所へと移転してきました。移転以降、神戸市北区の南部地域を医療圏として日々の診療にあたっています。
2014年4月には、全国57の病院が集まり発足したJCHOグループに参画しました。厚生労働省が管轄するJCHOグループは、地域への医療提供を第一の目的とした独立行政法人です。当院も全国のグループ病院と共によりよい医療を地域の方々へと提供するため、今日もさまざまな取り組みを行っています。
当院は総合病院としての機能に加え、予防や在宅ケア、介護などにも力を入れています。2箇所にわたる健康管理センターや訪問看護ステーション、介護老人保険施設、居宅介護支援センター、包括支援センターなど、地域に貢献する複数の附属機関・施設を多く有しているのが当院の大きな特徴です。病を治すという総合病院としての機能はもちろんのこと、病気の予防から介護に至るまで幅広い医療ケアで地域のみなさまをサポートしています。
当院は、JCHOグループのなかでも附属機関・施設の数が充実している病院のひとつです。この充実した医療体制で、現在病を患われている方だけではなく、健康な方から介護が必要になられた方まで、地域に暮らすあらゆる方の健康な生活をこれからもサポートしてまいります。
救命救急を含む急性期医療の提供にも力を入れています。急性期医療が頼りなければ、地域の方々に安心して利用していただくことはできません。
より多くの救急患者さんを受け入れ、さらに早急な処置を実現するために当院の救急外来では診療科ごとの連携を密にし、専門的な治療が必要と判断される患者さんに対し、より迅速に処置が施せる体制を作り、可能な限り急患をスムーズに受け入れています。
さらに充実した急性期医療の提供を実現させるために、循環器内科と脳神経外科に力を入れていきたいと考えています。2018年度からはそれぞれの診療科で同時にカテーテルを用いた緊急治療ができるようにアンギオ室を増設しており、時間との戦いとなる重篤な疾患を万全な医療体制で処置していくことが可能となりました。脳卒中の治療では血栓溶解療法に留まらず、適応があれば機械的血栓回収も可能な体制を整えており、より新しい急性期医療が提供できるよう医療水準の向上に努めています。
当院では、各診療科が個別に行う症例検討会とは別に、週に一度、全診療科が合同で行う症例の検討会を実施しています。全診療科が集まるなかでそれぞれの医師が自身の専門分野にまつわる症例を発表し、専門の異なる医師たちと意見を交換し合う場を設けているのです。
この全診療科が集まる症例検討会は、当院に在籍する医師同士がお互いの専門分野を理解し合うよい機会となり、また院内で気軽に意見や協力を求めることのできる風土を養生する場にもなっています。
今後も、さらに診療科間の垣根を取り払い医師同士が交流を深めていくような取り組みを続けていきたいと考えています。
また、この症例検討会には研修医も参加しています。研修医たちにも各症例についての意見を求めており、それがよい勉強の機会にもなっているのです。
当院のある神戸市北区南部エリアの地域医療にとって、総合的な見地に立った診療の提供が必要不可欠であると感じています。特にご高齢の患者さんのなかには、具体的な症状を伝えることが困難な患者さんもいらっしゃいます。そのような方に対しても、総合診療ならば幅広い視点で患者さんの体をみることができ、早急な原因究明につながるのです。
当院は現在、総合診療が提供できる医療体制の早急な構築を実現するために、総合内科の充実を図っているところです。そのための取り組みとして、医師の教育を進めてきました。他院から総合診療医を病院に招いて指導を仰いでいるほか、研修医の離島研修も行っています。
大きな総合病院のない離島は、総合診療の必要性が非常に高い場所です。そこで日々診療にあたられている先生のもとへ研修医を派遣することで、総合的な診療を行う感覚を身につけてもらうことが、研修医を離島へ派遣する最大の目的です。離島派遣を終えた研修医たちに話を聞くと、多くの者が派遣期間中に医師として自信をつけていることがわかります。また、派遣先からも好評価をいただいており、この離島派遣という取り組みは非常に良好な成果をあげています。
地域の医療ニーズがあるにもかかわらず、当院では心臓血管外科や産科が閉鎖した状態です。これらの不足している診療科を開設あるいは復活させることが、今後当院が取り組むべき大きな課題のひとつとなっています。現在、地域の妊婦さんの多くは単科の開業医の先生のもとで出産をされています。地域の産科の先生方の高齢化もあり、さらに総合病院での出産を希望される方も多く、当院での産科病棟の再開を期待する声が高まっています。
この課題に関して、大きな障害となっているのが医師不足です。産科病棟維持には、最低3~4名の専任の医師が必要です。そのため、現在は診療科開設のチャンスになかなか巡りあえないというのが現状です。
当院では、医師の採用の多くを大学からの紹介に任せていました。しかし今後は、さらに多くの医師に当院での勤務を希望していただけるよう、子育てや介護など医師が働きやすい勤務体系の提案を行ってまいります。
当院の求人にご応募いただいている医師のなかには、家庭の事情などでフルタイム勤務できないがために求職をされている方もいらっしゃいます。採用活動を通して、そのような方々でも十分に力を発揮できるような職場環境の整備が必要であると感じました。医師不足の問題が解決できるよう、これからも理想の職場環境づくりを進めてまいります。
職場環境を良好なものに整備し、理想的な職場環境をつくっていくことは、医師不足の解決のためだけの取り組みではありません。私はこれまで当院で働くスタッフたちに対して「一日の仕事が熱中の内に終わる様であって欲しい」とメッセージを伝えてきました。そして、それと同時に仕事に熱中できるような職場環境をつくりあげていくことを約束してきたのです。
勤務体系には筋の通った公平感が必要です。またそれ以上にスタッフ同士の良好な信頼関係が必要であると考えています。これらに基づいた人間関係が職場の善し悪しを決めると言っても良いでしょう。考えの異なるスタッフの意見も素直に受け入れられるような信頼関係の構築を、当院ではさまざまな取り組みで手助けしてきました。これからも、すべてのスタッフが夢中で仕事に向き合えるような職場環境を実現していくつもりです。
職場環境を良好なものにする取り組みのひとつとして、当院ではすべての医師を対象とした院長面談を実施してきました。私と医師のほかに医局長を交え、定期的に行っています。普段はなかなか私の耳に届かない意見やスタッフ同士の人間関係、職場環境についての意見などを面と向かって話し合える機会を設けたいと考え、2014年から続けてきた取り組みです。
特に、直属の上司にはなかか自身の意見をいえない若手医師にとって、とてもよい機会となっているようです。やる気の向上や退職防止につながっているという嬉しい知らせも届いており、今後も続けていきたい取り組みのひとつとなっています。
私は以前より、当院のスタッフたちに地域医療の大切さを伝えてきました。地域のための医療提供は、当院が属するJCHOグループがめざすものでもあります。すべての方が安心して暮らすことのできる地域づくりを、医療の面から実現していくことが当院の使命でもあるのです。
地域のための医療提供を実現するために、当院は地域の方々がかかえている思いやニーズの理解に努めてきました。当院が開催するセミナーや年に2回開催される地域医療協議会は、地域の方々と直接意見交換ができる貴重な機会となっています。特に、自治会の代表者や行政担当者を交えた意見交換会である地域医療協議会では、地域のみなさまが普段かかえている思いをはばかることなく伝えていただいております。
また、地域医療協議会でお聞かせいただいたご意見やご要望はできる限り実現・改善していく所存です。たとえば、交通の便が悪いというお話をお聞かせいただいた際には、送迎バスを運行する改善策をとらせていただきました。
当院がよりよい医療サービスを提供するために、みなさまのご意見は必要不可欠です。まだまだご不便をおかけする部分もあるかとは思いますが、お気付きの点があれば何でもお伝えください。みなさまのご要望に応えていくことで、安心して暮らすことのできる地域づくりに貢献してまいります。
独立行政法人地域医療機能推進機構 神戸中央病院 院長、京都府立医科大学 循環器内科・腎臓内科教室
独立行政法人地域医療機能推進機構 神戸中央病院 院長、京都府立医科大学 循環器内科・腎臓内科教室
日本循環器学会 循環器専門医日本高血圧学会 会員
1975年に関西医科大学を卒業後、同大学の生理学教室に入局しコンピュータを使った電気生理学分野の研究に携わる。
1978年には、松下記念病院の内科に所属。RI診断を用いた心臓核医学が臨床に用いられるようになり、海外メーカーの診断装置が日本にも導入され始めた当時は、英語で書かれた仕様書と格闘する日々を送っていた。
当時の技術では、心筋シンチグラムの画像が不鮮明なうえ、冠動脈支配域への対応に熟練していないと診断が困難であったため、局所診断に役立てるために画像の定量化に取り組む。その分野でシンポジストとして学会発表なども行った。
診療科の専門化が進んでいた時代にありながら、広く内科を診療できる医師になりたいと考えるようになり、1983年に社会保険神戸中央病院(現:独立行政法人地域医療機能推進機構 神戸中央病院)に赴任。
当初は、胃カメラや肝がん治療などに尽力した。その後、集中治療室長としての仕事をしながら、健診センター長として健康診断の結果表を作るデータベース作成ソフトについて勉強し、院内のコンピュータ化に着手した。
こうした経験を糧に、現在は病院全体を見つめる経営者としても活躍している。
大友 敏行 先生の所属医療機関
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