インフルエンザは、1週間程度で自然に症状が治まることがほとんどです。しかし、まれに脳症などの重い合併症が引き起こされることがあります。
インフルエンザ脳症は、何らかの原因によって脳内で異常が起こることで発症すると考えられており、発症すると意識や言葉、行動などに異常が生じます。
後遺症が残ったり生命にかかわったりすることもあるので、発症を防ぐための対策を取るとともに、典型的な症状が見られた場合にはすぐに医療機関を受診することが大切です。
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスの感染をきっかけとして生じる急性脳炎です。インフルエンザは毎年約1千万人がかかる身近な病気ですが、このうち50~200人ほどがインフルエンザ脳症を発症していると報告されています。
5歳頃までの子どもに見られることが多く、発症すると意識障害をはじめとした症状が現れ、症状が続くと後遺症が残ったり、生命にかかわる事態となったりすることもあります。後遺症が残る人の割合は約25%、死亡に至る割合は約10%とされています。
インフルエンザは基本的に1週間程度で治りますが、まれに脳症などの重い合併症が引き起こされることもあるので、合併症の可能性も念頭においておくようにしましょう。
インフルエンザ脳症の主な症状は、意識障害、けいれん、異常な言動の3つです。発熱後すぐに突然発症し、急激に症状が悪化するのが特徴です。
意識障害とは、周りからの呼びかけに対して反応が薄くなる、物事を正しく理解できないといった状態のことです。インフルエンザ脳症では以下のような症状が見られます。
重症になると刺激を与えても全く反応せず、目を覚まさないこともあります。
全身または体の一部がピクピク、ガクガクと動く症状をけいれんといいます。けいれんが15分以上続く場合や繰り返す場合には特に注意が必要です。
インフルエンザ脳症で現れることのある異常な言動は以下のようなものです。
このような症状が見られた場合には、すぐに医療機関を受診することがすすめられます。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスに感染した際に体が病原体に対して反応を起こし、脳がむくんだり頭蓋骨内の圧が高まったりすることによって、脳の血管内皮細胞に障害をきたすことで引き起こされると考えられています。
インフルエンザウイルスを原因とする脳症をインフルエンザ脳症と呼びますが、脳症を引き起こす原因はインフルエンザウイルスだけではありません。ヒトヘルペスウイルス6型(突発性発疹の原因ウイルス)、ロタウイルス(急性胃腸炎の原因ウイルス)、 RSウイルスといったウイルスで脳症が起こることもあります。
また、ウイルスだけでなく、百日咳菌やサルモネラ菌などの細菌が原因となる場合もあります。
インフルエンザの重症化を防ぐ方法として、インフルエンザの予防接種(ワクチン接種)があります。
予防接種はインフルエンザの発病を防ぐためのものとして知られていますが、予防接種をしていても確実に防げるわけではなく、インフルエンザにかかってしまうことはあります。
しかし、予防接種をしていると、インフルエンザにかかった場合でも重症化を防ぐことができるとされています。合併症も確実に防げるわけではありませんが、予防接種を行うことの意義は大いにあります。
インフルエンザは比較的身近な病気ですが、脳症などの重い合併症が起こる可能性もあります。合併症の中では脳症がもっとも重く、後遺症が残ったり命を落としたりすることもあるので、発病を防ぐためにも毎年インフルエンザの予防接種を受けることが大切です。
インフルエンザの流行時期は、例年1月上旬から3月中旬が中心です。予防接種による効果が出始めるのが約2週間後で、予防接種の効果が期待できるのが約5か月間であることから、予防接種は毎年12月中旬までに受けるのがよいでしょう。
国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター センター長、AMR臨床リファレンスセンター センター長
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