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編集部記事

腟がんのステージとは?〜ステージや患者の状態などによって治療方針が異なる〜

腟がんのステージとは?〜ステージや患者の状態などによって治療方針が異なる〜
金尾 祐之 先生

がん研有明病院 婦人科 部長

金尾 祐之 先生

目次
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腟がんとは、子宮と外陰をつなぐ“腟”という組織に生じるがんです。女性生殖器がんのおよそ1%と発生頻度の低いがんとして知られています。腟がんはある程度進行すると、腟内のしこり、不正出血、下腹部痛などの症状が出る場合があります。一方初期では症状がみられないことも多く、子宮頸(しきゅうけい)がん検診を受けたことをきっかけに発見されることもあります。

このページでは、腟がんの進行度合いを示すステージ分類や基本的な治療法についてご紹介します。

がんにおける“ステージ”とは病気の進行度合いを示す分類で、“病期分類”と呼ばれることもあります。ステージの分類方法はがんの種類によって異なりますが、がんの大きさや周囲への広がりの度合いに基づいて決定されることが一般的です。

腟がんの場合、国際産科婦人科連合(FIGO)が作成した病期分類が使用されることが一般的です。腟がんのステージはI~IVに分類され、数字が小さいほど早期のがん、大きいほど進行したがんと判断されます。

以下では、それぞれのステージの定義について簡単にご説明します。

ステージIの腟がんはもっとも早期で、がんが腟壁のみにとどまっている状態を指します。

腟壁は内側から粘膜・筋層の2層に分かれており、腟がんは通常粘膜(扁平上皮)から発生することが一般的です。そのため腟がんの多くが扁平上皮がんに分類されます。

ステージIIの腟がんは、がんが腟壁を超えて腟の周辺組織に広がっているものの、骨盤壁までは到達していないものを指します。

骨盤壁とは文字どおり骨盤の壁で、骨盤の内側を覆う血管、神経、筋肉、靱帯(じんたい)などを含みます。

ステージIIIの腟がんはステージIIよりさらに進行しており、がんが腟壁・腟の周辺組織を超え、骨盤壁まで広がっている状態です。

ステージIVの腟がんは、腟がんのなかでももっとも進行している状態を指し、がんの転移がみられます。ステージIVの腟がんは転移した部位によってAとBに分けられます。

腟がんのステージIVA

ステージIVAの腟がんは、膀胱や直腸などの骨盤内臓器に広がっている状態です。

腟がんのステージIVB

ステージIVBの腟がんは、腟から遠く離れた肺や骨などに転移しているもの(遠隔転移)を指します。

がんの治療は、ステージや患者の年齢・状態・希望などに応じて検討されます。腟がんの場合、放射線治療(または放射線化学同時療法)が一般的ですが、腫瘍(しゅよう)の広がり、患者の全身状態などにより手術や化学療法が選択されることもあります。

高エネルギーの放射線を照射することによってがん細胞を傷つける治療です。体の外から照射する方法と腟の内側から照射する方法があります。腟がん治療の第一選択肢です。化学療法と併用される場合(放射線化学同時療法)があります。

遠隔転移を伴う腟がんや再発した腟がんでは、抗がん剤による化学療法が検討されます。抗がん剤には飲み薬や点滴、注射などさまざまな形状があります。

先に述べたように腟がんの治療は放射線療法(放射線化学同時療法)が一般的ですが、I~II期で腟上部に腫瘍が局在している場合やIVA期のように膀胱、直腸に浸潤し、瘻孔(ろうこう)を形成している場合などでは手術が行われることがあります。

腟がんで検討される主な手術治療

  • レーザー蒸散術……病変部分をレーザー光線で切除する手術です。
  • 部分腟壁切除術……膣の一部を切除する手術です。

これら2つの手術は主に、前がん状態である腟上皮内腫瘍に対して行われます。

  • 広汎子宮全摘術・腟部分切除/腟全摘術……腟上部に局在するI~II期の腟がんに対して腟の上部を切除する(または腟全摘出)とともに、子宮を全摘出する手術です。併せて、周囲のリンパ節の摘出が行われることが一般的です。摘出されるリンパ節は腟がんの場所によって異なります。
  • 骨盤除臓術……腟だけでなく、下部結腸・直腸・膀胱・子宮などの骨盤内臓器を摘出する手術です。排泄に必要な臓器も合わせて取り除くため、人工肛門(じんこうこうもん)や人工尿路の増設が必要となります。患者にとって侵襲(しんしゅう)が大きな手術となります。IVA期で瘻孔を形成しているような進行がんに対して行われることがあります。

腟がんの治療はステージや患者の状況によっても異なります。そのため、治療を受ける際は自身のステージや治療方針について医師からの説明を詳しく聞くようにしましょう。

また、治療や病気のことについて分からないことや不安なことがあれば、医師とよく相談するようにしましょう。担当医以外からの意見を聞きたいときは、“セカンドオピニオン”を利用することも検討しましょう。

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