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眼内悪性リンパ腫ってどんな病気? 注意すべき症状から診断・治療法まで解説

眼内悪性リンパ腫ってどんな病気? 注意すべき症状から診断・治療法まで解説
蕪城 俊克 先生

自治医科大学附属さいたま医療センター眼科 教授

蕪城 俊克 先生

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眼内悪性リンパ腫は高齢者に多くみられ、近年、国内外で患者数が増加傾向にある病気です。自覚症状としては目のかすみ、充血、視力低下などが挙げられます。眼内悪性リンパ腫は希少がんであり患者数はそれほど多くはないものの、脳へ転移しやすく、眼科疾患の中でも特に生命予後が悪いものとされています。今回は、自治医科大学附属さいたま医療センター 眼科の蕪城 俊克(かぶらき としかつ)先生に、眼内悪性リンパ腫の概要とともに、診断や治療方法について伺いました。

リンパ腫は血液のがんの一種で、血液細胞であるリンパ球*ががん化したものを指します。

眼内悪性リンパ腫はこのリンパ腫が眼球内で増殖する病気で、高い確率で脳への播種(はしゅ)(がん細胞が種をばら撒いたように広がること)を起こすため、眼科疾患の中でも特に注意を要するものとされてきました。この脳播種の発生を予測することは難しく、定期的にMRI検査を行うといったフォローアップが欠かせません。

*リンパ球:白血球の一部で、リンパ液と血液の中を行き来しながらウイルスなどの病原体やがん細胞などの異物を攻撃、排除する役割を持つ。

眼内悪性リンパ腫は高齢者に多い病気です。なお、この病気の発症率には性別による大きな差は認められておらず、男女ともに発症する可能性のある病気といえます。

近年、患者数が増加傾向にあるという報告もありますが、これは高齢の方が増えていることに加えて、眼科医の間でこの病気の認知度が高まり、発見されやすくなったことの現れとも考えられます。

眼内悪性リンパ腫は、我々医師の間で“仮面症候群”と呼ばれることがあります。診察時の所見がぶどう膜炎*とよく似ているからです。つまり、目の中に炎症が起こっているようにしか見えないにもかかわらず、実は悪性腫瘍(あくせいしゅよう)ということがあるのです。このため、眼内悪性リンパ腫は古くから眼科疾患の中でも特に慎重に診断すべきものとされてきました。

*ぶどう膜炎:ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜など)とその周囲の眼内の組織(網膜、硝子体、前房など)に起こる炎症性疾患全般を指す。

眼内悪性リンパ腫の原因は明らかになっていませんが、MYD88、CD79B、PIM1といったいくつかの遺伝子に変異がみられることが多く、発症に関係している可能性が高いと考えられています。また、高齢の方に多く発症する傾向があるため、加齢との関連が深いと推察できます。

眼内悪性リンパ腫では、かすみ目、充血、視力低下といった症状が現れます。患者さんは、「見えにくい」、「かすんで見える」などと自覚することが多いと思います。

ただし、かすみ目や視力低下などの症状の程度には、個人差が大きくあります。さらに、経過も一人ひとり異なります。時間が経つにつれて症状が強くなったり、逆に自然に治まったりすることもあります。しかし、いったん改善しても、その後同じ症状が現れる、また脳など別の場所に再発するといった経過をたどりやすい点も特徴です。

医師から見たときの眼内悪性リンパ腫の所見として、硝子体混濁と網膜下浸潤病変があります。

硝子体混濁とは、硝子体(眼球内のゼリー状の組織)に炎症細胞が多数くっついてゼリーが濁った状態のことを指します。

PIXTA
イラスト:PIXTA

硝子体混濁は多くの眼内悪性リンパ腫で起こりますが、ぶどう膜炎でも高い確率で起こるため、この所見だけでは悪性リンパ腫と判断することはできません。

ご提供写真
硝子体混濁の様子

網膜下浸潤病変は、網膜に黄色い浸潤病巣が多数現れる特徴的な所見です。大型の黄色い浸潤病巣が多数みられたら眼内悪性リンパ腫の可能性が比較的高いといえます。

ご提供写真
網膜下浸潤の様子

特に高齢の方は、かすみ目、充血、視力低下といった症状に注意すべきだと思います。

ぶどう膜炎にも同様の症状が現れますが、高齢になってから通常のぶどう膜炎を発症する可能性は低いといえます。なぜなら、通常のぶどう膜炎は免疫異常によって起こることが多いのですが、免疫力は加齢とともに低下するため、高齢者では免疫異常によるぶどう膜炎は起こりにくくなります。このため、ぶどう膜炎を発症したことが一度もない高齢者にぶどう膜炎が起きたときには、眼内悪性リンパ腫の可能性も考える必要があります。

当院でも、ぶどう膜炎と判断してステロイド点眼薬を処方したもののなかなか改善しない、あるいは硝子体に強い濁りがみられるといった理由で、眼内悪性リンパ腫を疑って紹介を受けるケースが少なくありません。

眼内悪性リンパ腫が疑われる場合、眼の中の液体(眼内液)を採取し、それをもとにいくつかの検査を行います。当院では5日間程度入院していただき、局所麻酔下の硝子体手術により眼内液を採取します。手術の所要時間は30~60分程です。

細胞診

まずは、眼内液の中の悪性腫瘍の有無を顕微鏡で確認する細胞診を行います。細胞診だけでは明確に判断できないケースもあるため、必要に応じて以下の3つの検査結果を組み合わせて診断するようにしています。

IL-10、IL-6濃度測定

眼内液中のIL-10、IL-6*の濃度を測定します。IL-10は眼内悪性リンパ腫の細胞が産生するとされる物質であり、IL-10とIL-6の濃度を比較してIL-10の値のほうが高い場合、眼内悪性リンパ腫を疑います。

* IL-6:サイトカインと呼ばれる物質の1つで、免疫細胞の活性化、炎症反応の調整などの役割を担う。

IgHモノクローナリティー検査

眼内悪性リンパ腫の多くは、リンパ球の中のB細胞*ががん化したものであるとされています。そのため、1種類のB細胞(がん化したB細胞)が増殖しているかどうかを遺伝子から調べる検査を行い、単一細胞の増殖が認められれば眼内悪性リンパ腫を疑います。

* B細胞:細菌やウイルスなどの病原体に対して抗体をつくるはたらきをする細胞。

フローサイトメトリー(FACS)によるγ鎖・λ鎖の陽性率

眼内液中に浮遊する細胞の表面のタンパク質を構成するγ鎖およびλ鎖の陽性率を比較する検査です。陽性率がどちらか一方に偏っている場合には、眼内悪性リンパ腫の可能性が高いと判断します。

眼内悪性リンパ腫を疑ったものの、結果的にはぶどう膜炎だったというケースも少なくありません。この場合、ステロイド点眼薬などを用いてぶどう膜炎の治療を進めます。

一方、眼内悪性リンパ腫の可能性が高い所見であっても、上記4項目の検査で陽性を示さない症例もあります。そのような場合には、網膜下浸潤病変の細胞を採取するなど、さまざまな方法で診断をつけるよう努力しています。

眼内悪性リンパ腫の標準治療は、現在のところ国内および世界的にも定まっていません。新たな治療法については次ページで解説しておりますので、ここでは、従来から行われてきた局所治療について解説します。

眼局所放射線治療とは、眼球および視神経周辺への放射線照射を行う治療法であり、保険適用で受けることができます。

高い効果が得られる治療法で長年行われてきましたが、眼局所放射線治療だけでは再発率が高く、脳播種が起こるリスクも拭い切れません。そのため、全身化学療法を行うことができない患者さんや、何らかの理由で下記のメトトレキサート(MTX)硝子体注射が難しい患者さんを対象に行われるほか、全身化学療法と組み合わせて行うケースもあります。

メトトレキサート(MTX)硝子体注射とは、リンパ腫の治療に効果が認められているメトトレキサートという抗がん剤を硝子体に注射する治療法です。メトトレキサートの目への注射は保険適用がないため、病院の倫理委員会の許可のもと行っています。費用は1回の注射で約2,100円(税込)です。

当院では、週1回の注射を2か月間、月1回の注射を2か月間といったペースで10回程行っており、多くの場合、これで寛解(かんかい)に向かいます。使用する抗がん剤の量が少なく、吐き気や脱毛などの全身的な副作用が出にくいため、眼内悪性リンパ腫と診断された多くの患者さんに行われています。

眼内のリンパ腫には効果が高いものの、この治療単体では脳などへの転移は食い止められません。また、注射回数を重ねるにつれて徐々に目の表面が傷ついたり、雑菌の感染や出血が起こったりするリスクもあります。白内障の手術をしていない方の場合、薬の影響で白内障が進行してしまうケースもあります。

一定回数のメトトレキサート(MTX)硝子体注射による治療が終われば、経過観察に入ります。日常生活において特に注意点はありません。

当院では、最初の1年ほどは毎月1回定期検診に来ていただき、その間にMRI検査を行い、脳に転移がないかどうか確認します。1年経過後は受診間隔を徐々に延ばし、5年程度は継続して経過観察を受けるようおすすめしています。

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眼内悪性リンパ腫はまれな病気ですが、眼科疾患の中でも特に命に関わる注意すべき病気とされています。ぶどう膜炎と見分けがつきにくいのですが、近年は眼科医師の間でもこの病気の認知度が高まり、早期に診断がつき治療を開始できる症例が増えてきました。また、治療法の研究も進んでいます。眼内悪性リンパ腫が疑われる場合、なるべく早く専門とする医療機関を受診し、診断・治療を受けていただきたいと思います。

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  • 自治医科大学附属さいたま医療センター眼科 教授

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