疾患啓発(スポンサード)

糖尿病治療の「今」を知る――自分に合った治療方法を見つけるヒント

糖尿病治療の「今」を知る――自分に合った治療方法を見つけるヒント
大屋 純子 先生

田村クリニック 医師

大屋 純子 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

糖尿病は、不摂生な生活や自己管理が悪いためになってしまう病気といったイメージを持たれる方も少なくありません。しかし実際には、発症には遺伝や環境、他の病気や薬、心理的・社会的要因も関わり、全てご本人の責任だけで説明できるものではないのです。

最近では、「糖尿病」という病気の名前についても、字面のネガティブな印象を払拭するために「ダイアベティス(Diabetes)」という呼称に変えていこうという動きが出ています。今回は、自由が丘メディカルプラザ/田村クリニック 糖尿病内科/内分泌・代謝内科 大屋 純子(おおや じゅんこ)先生に、糖尿病治療の現在と今後の展望についてお話を伺いました。

糖尿病治療の目標は単に血糖値を下げることではなく、合併症を防ぎながら糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質(QOL)を守ることにあります。そのためには「我慢を強いる治療」ではなく、一人ひとりの仕事や生活スタイル、他の病気の有無などを考慮したオーダーメイドの治療が重視されます。

治療は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の三本柱で成り立っており、近年は薬物療法の進歩によって、血糖値のコントロールだけでなく合併症の抑制まで視野に入れた治療が可能になっています。それぞれの治療法について詳しくご紹介します。

食事療法

  • 食事療法は、糖尿病治療の第一歩です。間食や夜遅い食事を控え、三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)のバランスを意識しましょう。研究では、朝食を抜くと昼食後の血糖値が高くなること、夕食が遅いと体重増加や血糖コントロール不良につながることが示されています。食べる量を無理に制限するのではなく「食べる時間」に気を付けるなど、生活に取り入れやすい工夫を重ねることが大切です。

運動療法

  • 適度な運動もまた、糖尿病治療には大切です。理想は週3回以上の有酸素運動や筋力トレーニングですが、続けられる範囲で構いません。いつもより少し多く歩くだけでも健康リスクが減らせる、普段より少し息が上がるくらいの早歩きを続けると寿命が延びるといった研究報告もあります。ウォーキングやストレッチ、軽い筋トレなど、自分だけでできそうなことから日常に組み込むとよいでしょう。

薬物療法

  • 薬物療法は、この10年で飛躍的に進歩しているように感じます。血糖を下げるだけでなく、心臓や腎臓の保護作用がある薬も登場し始めました。また、従来使われてきた薬でも週1回の投与で済む製剤が開発されるなど、使いやすさの面で向上したものがあります。今後、遺伝子の解析が進めば、その方に最も合った薬剤を探せる時代が来るという考えもあるようです。

どんなに効果が高い薬でも、「長く続けられるかどうか」が治療の成果を左右します。たとえば、朝食を食べない習慣のある方や、夜勤などで生活リズムが不規則な方に「朝食後に服用する薬」を処方しても現実的な治療とはいえません。その場合は、服薬時間の融通が利く薬や週1回投与の薬を検討するなど、生活スタイルに合わせた調整が必要です。

また、高齢でご自身での服薬の管理が難しい方の場合は、ご家族や訪問看護のサポートを取り入れることも有効です。服薬カレンダーや服薬支援アプリを活用する方法もあり、医師・薬剤師と相談しながら工夫することで継続が可能になります。

「薬が飲みにくい」「つい忘れてしまう」といった悩みは、決してめずらしいことではありません。主治医に率直に相談することで、別の薬への切り替えや投与方法の見直しなど、解決策を一緒に考えることができます。治療は医師からの一方的な指示ではなく、患者さんと医師が二人三脚で作り上げていくものだと思っています。

近年はスマートフォンやウェアラブル機器を利用したセルフコントロールが広がっています。食事や運動量を記録できるアプリ、血糖値を継続的に測定できるセンサーを活用すれば、自分の生活習慣がどのように血糖値に影響するかを「見える化」できます。

リアルタイムで確認できることにより、たとえば「夕食後の血糖値が上がりやすい」「間食で血糖が乱れる」といった傾向が分かり、生活習慣の改善につなげやすくなります。さらに、これらのデータは家族とも共有でき、日常生活の中で自然に治療を意識できる環境づくりにも役立ちます。こうしたテクノロジーを活用することが、自分の状態を把握しやすくなり、治療を前向きに続けるための大きな助けとなるでしょう。

糖尿病治療は「とにかく血糖値を下げましょう」と言われても、どこまで下げればよいのか、どのくらいのペースで進めればよいのかが分からなければ続けにくいものです。目標とする数値は年齢や糖尿病のタイプ、合併症の有無などによって異なり、人によって適切なゴールは違います。特に高齢の方では血糖を下げすぎることで、かえって低血糖になることもあるため注意が必要です。

大切なのは、自分の生活や体の状態に合った“現実的な目標”を、主治医と一緒に話し合って決めることです。体重やHbA1c*などの具体的な数値を主治医から共有してもらい、「なぜこの治療が必要なのか」という理解が進めば、納得感を持って治療に取り組めると思います。自分に合った無理のない目標を持つことが、治療を長く続ける力につながります。

*HbA1c:ヘモグロビンA1c。過去1〜2か月程度の平均的な血糖値を反映する指標のこと。

糖尿病が見つかるきっかけの多くは、健康診断人間ドックの血液検査です。血糖値HbA1cの数値で異常を指摘され、そこで初めて糖尿病の可能性に気付く方も少なくありません。
糖尿病の初期は自覚症状が乏しいため、「症状が出てから病院に行けばよい」と考えてしまいがちです。しかし、血糖値が高い状態が続くと、知らないうちに合併症が進行し、ある日突然、視力障害や腎不全など深刻な症状が現れる可能性もあるのです。

早めの段階で受診し、治療や生活習慣の改善を始めることが合併症予防につながります。

世界的な大規模調査でも、発症早期から血糖・血圧・脂質をしっかりとコントロールすることで、心疾患や腎症のリスク、さらには死亡率を大きく下げられることが示されています。日本人を対象とした研究でも、同様の結果が得られています。

早めの受診と積極的な治療が健康寿命を守る第一歩となりますので、先延ばしにせず医療機関を受診しましょう。

糖尿病は誰にでも起こり得る病気です。決して「自己管理ができなかったから」と一方的に責められるものではありません。大切なのは、症状が軽いうちから一歩を踏み出し、医師や医療スタッフと一緒に治療を続けていくことです。そうすれば合併症を防げる可能性が高まります。
もし、すでに合併症が生じていたとしても、諦める必要はありません。治療を続けることで進行を抑え、生活の質を守ることは十分に可能です。糖尿病治療は日々進歩しており、患者さん一人ひとりに合わせた方法を選べる時代になっています。

「自分に合った方法で上手にコントロールして、うまく付き合っていく」――それが糖尿病治療の大切な考え方です。焦らず、無理をせず、前向きに続けていけるよう、私たち医師がサポートしていきます。

    「糖尿病」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

    なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

    実績のある医師をチェック

    糖尿病

    Icon unfold more