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知ってほしい、甲状腺眼症の私がみた世界――元プロバレーボール選手 鍋谷 友理枝さんの場合

知ってほしい、甲状腺眼症の私がみた世界――元プロバレーボール選手 鍋谷 友理枝さんの場合
メディカルノート編集部 【患者・家族取材】

メディカルノート編集部 【患者・家族取材】

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提供:アムジェン株式会社

甲状腺眼症とは免疫の異常によって目の周りの組織に炎症が起こる自己免疫疾患で、バセドウ病患者さんの25~50%で発症するといわれています1,2)

甲状腺眼症では、びっくりしたときのように目が見開いて見えたり、眼球が前に飛び出ているような見た目に変化したりする場合もあれば、モノが二重に見えてしまうなど視機能が低下する場合もあり、症状や日常生活へ及ぼす影響は人それぞれです。

日本代表としてもご活躍された元プロバレーボール選手の鍋谷 友理枝(なべや ゆりえ)さんは、甲状腺眼症とつきあいながら世界で挑戦を続けてきました。甲状腺眼症による困り事や病気とのつきあい方について伺います。

1)Mamoojee Y, et al. Graves’ Orbitopathy: A Multidisciplinary Approach - Questions and Answers. Basel, Karger, 2017; 93-104.

2)Lazarus JH. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2012; 26(3): 273-279.

※こちらでご紹介するのは1人の患者さんの体験談で、全ての患者さんが同様の経過をたどるわけではありません。

2012年3月に高校を卒業し、翌月Vリーグのチームに入団しました。同時期に日本代表候補に選んでいただき、JISS(国立スポーツ科学センター)でメディカルチェックを受けた際、血液検査で異常を認め、専門医を受診するように伝えられました。そして、甲状腺の専門医のもとでバセドウ病であると診断されました。

当時自覚症状はなかったのですが、今振り返ると、高校時代汗っかきだったことや、体づくりのためにご飯をたくさん食べてもなかなか体重が増えなかったのはバセドウ病が原因だったのかもしれません。

その後、ドライアイで涙が止まらなくなることや、上を見るときに引っかかるような感覚がして目を動かしにくいなどの症状が出るようになりました。ある日、母が「こんなに目が出ていたかな」とテレビに映る私の姿を見て思ったようで、2012年の年末ごろ当時の所属チームのトレーナーに連絡をしてくれていました。

そして、バセドウ病の主治医の先生から眼科を紹介いただき、甲状腺眼症の専門医を受診しました。治療を経て、現在は内科で2~3か月に1回、眼科で半年に1回視野検査などの経過観察を行っています。

まだ甲状腺眼症を発症していない頃、バセドウ病の主治医の先生から、体重減少、頻脈、眼球突出などがバセドウ病の徴候として生じる可能性がある3)と聞いていました。しかし、当時の私はバレーボールが生活の中心だったため、どうしても体重減少や頻脈といったパフォーマンスに直結する症状を重要視し、眼球突出についてはほとんど意識していませんでした。そして、眼球突出をはじめとしたさまざまな目の症状が実際に出てきて、初めてその影響の大きさに気付きました。

たとえば、バレーボールのプレー中は、集中するとまばたきの回数が少なくなり、気付いたら涙が出ていて止まらなくなることがありました。相手セッターのトスが自分の予測と異なる場所に上がったときには、素早く目を動かそうとしても引っかかりを感じ、反応が遅れているような不快感がありました。

先方提供
提供:鍋谷 友理枝さん

また、プレーへの直接的な影響だけでなく、精神的なストレスを感じることもありました。ファンの方たちがプレー中の真剣な姿を撮影してくださりうれしい気持ちはあるのですが、自分の目がとても見開いているように見え、時には見た目に関しての心ないコメントが投稿されているのを見て、落ち込むことがありました。

さらに、遠征中の移動時に外を歩くときも眩しさを感じ、目を守るためにサングラスをかけたかったのですが、当時はサングラスをかける方が少なく、珍しいものを見るような目で見られることがありました。目を守るために必要なケアをしたいという気持ちと、周囲の視線にさらされたくないという葛藤があり、結局は我慢しながら下を向いて歩くようにしていました。

先方提供
提供:鍋谷 友理枝さん

そして、日常生活においても些細なことにストレスを感じるようになりました。眼鏡をかけるとまつ毛がレンズに当たってしまうため、レンズが汚れて見えづらくなることがありました。

また、コンタクトレンズを装着しても乾燥によって、ぽろっと外れることもありました。

他にも、夜間の運転時の対向車のライトや映画館の画面がとても眩しく感じ、サングラスをかけるほどでしたが、周りの方からするとそれほどでもなく、この症状を理解してもらえないことがありました。

先方提供
提供:鍋谷 友理枝さん

目の症状が実際に出るまでは、「甲状腺眼症がここまで今後の人生に関わる」とは想像もしていませんでした。だからこそ、早めに気付いて治療したほうがよい病気だと思っています。

3)日本甲状腺学会. 『甲状腺疾患診断ガイドライン2024 (2024年11月21日 改定)』

https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html (2025年10月閲覧)

現在は経過観察という落ち着いた状況で過ごせていますが、これは多くの方々のサポートがあったからこそだと感じています。

特に母は、血液検査で異常が見つかったときには甲状腺を専門で診てくださる先生を探してくれて、また、離れて暮らす私がテレビに映る姿を見て、目の症状にも気付いてくれました。

バセドウ病の主治医の先生は、眼球突出度を計測し「軽度の突出あり」として、スムーズに甲状腺眼症の専門医に紹介してくださいました。

甲状腺眼症の治療には、アスリート特有の困難が伴いました。私は症状が進行している時期にステロイドパルス療法*を受けることにしましたが、ドーピングにならないよう気を付ける必要があり、治療には厳格な手続きが必要でした。このとき、チームトレーナーと甲状腺眼症の主治医の先生が緊密に連携してくださり、TUE**申請のために尽力してくれました。

さらに、当時の通院も大変な苦労でした。通院頻度は2か月に1回程度でしたが、片道1時間半ほどかかりました。午前10時までに血液検査を受けるためには朝7時前には出発する必要があったのですが、バセドウ病による疲れから朝早く起きられず、予定どおりに出発できないこともありました。このような状況で心身ともに負担を感じていましたが、朝早くからチームトレーナーは通院に同行し、献身的にサポートしてくださいました。

私1人ではこれらの困難を到底乗り越えられなかったと思います。周りの環境に恵まれ、病気に対する理解と献身的なサポートがあったからこそ、今の落ち着いた状況があるのだと心から感謝しています。

*ステロイドパルス療法:甲状腺眼症に対しては国内未承認。

**TUE:Therapeutic Use Exemptions。「禁止物質・方法」を治療目的で使用したいアスリートが申請し、認められれば、特例としてその「禁止物質・方法」を使用できる手続きのこと。公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構-医療従事者サイト-より

https://www.playtruejapan.org/medical-staff/request/ (2025年10月閲覧)

自分の顔は毎日見ているため、自身ではその変化に気付きにくいと思います。私は、ネットに掲載されている自分の写真を客観的に見ることや、離れて暮らす母や周囲の方からの言葉によって変化に気付くことができました。見た目について言われることは苦しいですし、私も実際に精神的なストレスを感じていました。

しかし、物が二重に見えるなどの症状が現れる前に客観的な目の変化に気付いたら、まずは病院へ足を運んでいただきたいです。そして、勇気をもってご自身の症状を伝えてみてください。

私もはじめは先生の言うことにただうなずくだけで、うまく症状を伝えられませんでした。ただ、「先生もあなたのこと全部分かっているわけではないのだから、思ったことは自分で伝えないと時間がもったいないよ」という母の言葉がきっかけで、症状や疑問に思っていることを先生に伝えられるようになりました。

甲状腺眼症の症状は決して恥ずかしいものではありません。包み隠さず先生にお伝えすることが早期発見、そして適切な治療を受けるための第一歩になると思います。

先方提供
提供:鍋谷 友理枝さん
 
TPZ264001MN1 2026年3月作成

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